街のゲーテくん

【連載:北海道・富良野暮らし】第2回:先輩フラニストの”ナマの声”(7)「cafeゴリョウ」澤井雅樹さん・加菜子さんご夫婦

「cafeゴリョウ」澤井雅樹さん・加菜子さんご夫婦

今回オダジーがご紹介するのは、「cafeゴリョウ」の澤井雅樹さん、加菜子さんご夫婦。

傾いていた納屋を大工さんに教えてもらいながら自分達でコツコツ修理して作った「cafeゴリョウ」と、その隣の築80年の古民家を改装した宿、「ゴリョウゲストハウス」を運営しています。

夢だった世界一周旅行に出発

澤井さんご夫婦

――お2人の出会いから、富良野に移住するまでの道のりを教えてください。

澤井 雅樹さん

ぼくが大阪の専門学校に通っているときに、アルバイト先で知り合いました。当時、妻はまだ高校生でした。その後、大阪の洋服屋で、仕入れや販売の仕事をしていました。妻も別の店で洋服の販売をしていました。
26歳ぐらいのときに、妻の両親から「いつになったら結婚するんだ」と、少し圧力がかかってきて(笑)。
ぼくが働いていた洋服屋は10代後半~30代前半のお客様が多く、自分の年齢が上がるにつれて、お客さんの感性と合わなくなっていくのを感じました。「これはずっと続けられる仕事ではないな」と。同時期に結婚する方向で話が進んでいることもあり、その前にやりたいことを先にやろうと、仕事を辞めて世界一周旅行に行くことにしました。

――世界一周旅行はお2人で?

澤井 雅樹さん

結果的には2人で行ったのですが、10代の頃からぼくがしたいことだったので、はじめは1人で行くつもりでした。

澤井 加菜子さん

それまでも、2人で休みが三日取れれば外国へ行っていたんです。

澤井 雅樹さん

シンガポール、香港、バンコク、上海とか……。
期間が短いと、行先はどうしても都会になってしまうんです。海外とはいえ都会は都会、あまり変わり映えしないので、田舎に行きたいと思っていました。何回も行くのは大変なので、全部いっぺんに行けば良いじゃないかと思い、社長を説得し会社を辞めることにしました。
行こうとしていた国が、日本と比べて汚く不便なところだったので、一緒には来ないと思っていましたが、妻が「一緒に行く!」と言い出し、2人で行くことにしました。

――ご両親は反対されなかったですか?

澤井 雅樹さん

うちの親は反対していたみたいです。一方、妻の家族は登山や旅行好きで、むしろ後押ししてくれました。
ただ、まだ結婚前だったので、妻の両親をレストランに呼んで、「結婚の前ですが旅行に行きます。途中のどこかの国で結婚式を挙げたい」と報告しました。

澤井 加菜子さん

夫は、結婚したら真面目に生きなければと思い結婚前に旅行をしようとしたのに、私がついて行くことに。
父はレストランに呼び出された時、結婚の話だと思いドキドキしていたのに、世界一周の話だったので、「はぁ?」となったようでした。
旅行中、カナダで挙式したのですが、両親と祖母も来てくれました。

――どれくらいの期間、旅をしていたんですか?世界一周って、実際いくらくらいかかるんですか?

澤井 雅樹さん

3月に出発して10月にカナダで結婚式を挙げ、次の年の7月に富良野の野良窯(※)さんで働き始めるまで、約16カ月間です。

澤井 加菜子さん

費用はそんなにかかりませんよ。1人だいたい100万円ぐらいかな。結婚式は、神父さんと会場費で2万円、ブーケが1万円でした。
世界一周を決めてからの生活では超節約しましたが、こんなに貯まるんだって思いました。

澤井 雅樹さん

日本に戻ってからもお金は必要なので、その分は残して、使えるお金があるうちは旅行を続けたいと思っていましたが、なくなる前に野良窯さんで働くことになったんです。

もう社会には適合できないかも…… 富良野で感じた「ここならやっていける」!

風景

――富良野の野良窯さんとはどうして知り合ったのですか?

澤井 加菜子さん

野良窯さんのご主人が美瑛町の炎創窯にいた時に会いました。もう十数年前になりますが、OLを辞めて洋服屋さんに勤める間の夏の2ヶ月ぐらい、横のペンションでヘルパーのアルバイトをしていました。野良窯さんとは、その後もずっと連絡を取っていて、世界一周旅行に行く時も、メールで知らせていました。そうしたら、旅行中に野良窯さんが働かないかと声をかけてくれました。
夫もいますが良いですかと聞いたら、まあいいよ、と。旦那は初対面で、いきなり居候になりました。

――いよいよ富良野に移住ですね。

澤井 雅樹さん

旅行中、何処かに移住してのんびりした暮らしがしたいなと思っていました。長く旅行していると、まじめに働くのも大変だしもう社会には適合できないんじゃないかと思ったんです。都会に戻るとすごく忙しくなってしまうし……。

澤井 加菜子さん

インドでは、電車を12時間待ったことがありました。バスも遅れるのは当たり前。それが成田に着いたら1分遅れただけでお詫びのアナウンスがあったんです。次の電車が5分後にくるのに。すごく堅苦しく感じました。

澤井 雅樹さん

富良野に決めたのは、「ここならやっていけるな」と感じたからです。大阪に戻る気は全くありませんでした。

澤井 加菜子さん

当時、今と違って野良窯さんもあまり忙しくなくて、私に給料を払うのも厳しい状況だったと思います。でもすごく幸せそうな暮らしで、充実感が伝わってきました。

澤井 雅樹さん

自分の力で、自分のために働いている感じが良いなと。
例えば野良窯さんが稚内にいれば、ぼくらは稚内に行ったと思います。旅行中にぼくたちを富良野に呼んでくれなかったら、今頃どうなっていたかはまったく分かりません。

外観

富良野は移住者もめっちゃウェルカムな街

外観

――野良窯さんも移住してきた方ですが、富良野の地元の人の印象はどうでしたか?

澤井 加菜子さん

最初に知り合ったのが、野良窯さんの大家さんの“かあさん”でした。ここのお店に引越してくるときも、かあさんに色々面倒見てもらいました。

澤井 雅樹さん

町内会の人たちに、「自分たちの娘みたいなものだから、よろしく頼む」と紹介してくれました。

澤井 加菜子さん

この店を始めてからも周りの人が来てくれますが、たくさんお世話になっています。お父さんやお母さんがいっぱいいるようで心強いです。富良野は私たちのような移住者もめっちゃウェルカムな街です。

澤井 雅樹さん

ぼくの実家も田舎ですが、もっと閉鎖的な感じがします。

世界中の”良いとこ取り”で理想の店を作ろう!

看板

――この場所はどうやって見つけましたか?

澤井 加菜子さん

先にもともと宿をやっていた方と野良窯さんが繋がっていて、紹介してもらいました。

店内

――カフェを開くことは決めていたのですか?

澤井 加菜子さん

そうですね。カフェのイメージしか浮かばなかったです。

澤井 雅樹さん

ぼくたちは旅行が好きだから、カフェのメニューも外国で食べて美味しかったものを出したい、畑も作って新鮮な野菜を提供したいなと思いました。宿も外国に600回ぐらい泊まったことになるので、2泊したとして300軒。その良いところを集めて、自分たちの理想の宿を作ろうと思いました。

店内

――カフェと宿で働くだけではなく、雅樹さんは他の仕事もしていたのですよね?

澤井 雅樹さん

そうですね。期間限定ですが、農協の玉ねぎ倉庫でフォークリフトに乗っていました。カフェを始めた頃、それだけでも暮らしてはいけたのですが、改装をする費用の余裕がなく、改装費を稼ぐために行っていました。結局、農協では10年ぐらい働きました。
ぼくのイメージですが、本州の人の方が定職に就かなくては、と思う気持ちが強いようです。こっちの人は、夏は農家、冬はスキー場で働くという人も多くいます。

澤井 加菜子さん

そんな生活があるなんて、都会では知らない人も多いのではないでしょうか。富良野に来て色々な働き方があることを知りました。お金より自分の時間が欲しい人には向いていると思います。

夫婦

本気で、真剣に。やり遂げることが大事

店内

――移住を望んでいる若い人にアドバイスをお願いします。

澤井 雅樹さん

移住はしたいが仕事がない、という若い人からの相談を受けますが、「仕事がないのではなく、仕事を選んでいるだけだよ」と話します。富良野に住むのが重要なのか、仕事が重要なのか、富良野に住むのが重要なら、来てしまえば仕事は色々な方から声をかけてもらえると思います。逆に来る前に仕事を見つける方が難しいと思います。

――「cafeゴリョウ」とお2人の生き方は、若い人の“憧れ”だと思います。

澤井 雅樹さん

ぼくたちにできるのだから、誰にでもできると思います。ただ、やはり始めたことをやり遂げることが大事。「夢ではなく目標にする」というか。カフェをやろうと思ったら、自分が満足いくまでやり遂げるような。

澤井 加菜子さん

何かをやり始めて完成してない人、けっこういるんです。今思えば、私たちは本気で真剣にやっていたからできたのだと思います。

澤井 雅樹さん

やろうと思ったことに、自分たちの生活を捧げるぐらいやらないとでき上がらないと思います。

ご夫婦

オダジーの取材後記

おそらく、大多数の人がやろうと思ってやれないのは、“既成概念”が邪魔するからではないでしょうか。2人は既成概念にとらわれず、いつもフレキシブルに対応しているように見えます。そして「やり遂げる」という信念がとても重要なことだと思いました。
お話を聞いているとすがすがしい気持ちになりました。色々な経験を積んだ2人が、富良野を気に入ってくれて、独自の価値観で自分たちの世界を富良野で表現しています。「cafeゴリョウ」は、富良野が誇るカフェだと思います。

今回、お2人にお話を聞いて思ったのは、若い人に是非伝えたいということ。その気になれば誰でもできるし、もし何かで行き詰っているならこういう可能性もあるよ、と知ってほしいと思います。

cafeゴリョウ
自分達で作った野菜を可能な限り使い、私たちが世界で見て食べて美味しかったものを再現&アレンジしてお出ししています。
営業時間◇11:00~20:00(19:30LO)
定休日◇火曜日
住所◇北海道富良野市上御料
電話◇0167-23-5139
Email◇mail@goryo.info
詳しくはこちら

ゴリョウゲストハウス
カフェのとなりに築80年の古民家を自分たちで改装してゲストハウスを作りました。季節ごとに変わる景色を見ながらゆったりとした時間をお過ごしください。
素敵な場所に遊びに行く、一日中好きな本を読む、カフェでお食事、キッチンで料理を作る、出会った仲間と語り合う。時間の使い方や楽しみ方は自由です。
詳しくはこちら


キーワード
気に入ったらシェアしよう!
  • リスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

おウチのことなら、オウチーノ

o-uccinoは不動産・住宅の総合情報サイトです。新築・中古住宅、賃貸住宅の情報はもちろん、リフォーム・リノベーション、建築家による注文住宅、物件の売却や不動産投資関連の情報まで幅広くサポート。住まい探しや、暮らしに役立つオリジナルの編集記事も満載です。全国の不動産・住宅情報を探す、知るなら日本最大級の不動産サイト「O-uccino」をご利用ください。

ページトップへ