くい打ちのデータはどうやって取得しているのか

  • 2021年03月22日更新

不動産業界を震撼とさせた、横浜市のマンションのくい打ち工事データ偽装・改ざん事件。大手不動産会社と大手企業子会社が関わったことで、一般の人にも衝撃が走っています。工事の重要工程であるくい打ちとは、そのように偽装・改ざんが容易な作業なのでしょうか?実際にはどのようにデータ取得などが行われているのか、知ってみるとこの事件についてまた違った一面が見えてくるかもしれません。

くい打ちデータとは

2015年10月に発覚した、大手不動産会社・建設業者による「くい打ちデータ偽装・改ざん事件」。横浜市にある大型分譲マンションの渡り廊下が傾いていることから明らかになった施工不良は、関わった企業の社長が謝罪会見を行い、全国のマンションや商業ビルなど建設業者が手がけた約3,000棟をすべて調査対象とするなど、世間を揺るがす大きな事件になりました。建設業界特有の問題に絡む事件である、建設工程で発生する仕方ない現象だ、などと、いろいろな説明・解釈が出ていますが、そもそも、くい打ちとはそんなに簡単に偽装・改ざんできてしまうものなのでしょうか?「くい(杭)」は基礎の部分にあたり、地面に差し込むことで建物を固定します。軟弱で、浅い基礎では構造物を支えることができない地盤でも、深い部分であれば堅固な地層(支持層)があります。その部分まで達するように、深くくいを打ち込んで、建物を支えられるようにすることを、建設用語で「くい打ち工事」と呼びます。支持層は、硬い地層が5m連続する層であり、そこに確実にくいを打ち込まなければなりません。支持層まで届いていることを測量したデータで紙に打ち出して証明し、管轄する自治体の庁舎へ行ってデータを提出することで、建築確認申請(建築物が建築基準法・条例等に適合しているか確認を受けるための申請)が通るのです。今回のデータ改ざんは、関係者の供述によれば、不動産会社から言われた期日に間に合わせるために、「くいが支持層に達していないことを現場担当者が知りながら、工事期間が延びないように、他で使用したデータを流用して申請した」ということのようです。

くい打ちデータの測量は機械式

支持層までくいを打ち込めたかどうかは、専用の測量機器で調べることが出来ます。大手建機会社などで機械を販売またはレンタルしています。この機械で、くいを打つ時に使うドリルの「電流値」を計測することで、支持層に届いていることを確認します。支持層は堅いため、くいを打ち込むためには大きな力が要ります。電気式であるドリルで打ち込めば、その分、使用する電流の値も大きくなり、支持層に杭が打ちこまれた長さに比例して電流の流れる時間も長くなります。この、電流値の量と時間をデータにして出力し、支持層に届いたことを証明します。電流値は、同じ長さのくいであっても、支持層までの地層の質(含まれる砂礫の量など)により変化します。そのため、同じ建物に使うくいでも、それぞれに違うデータが出てくるものですが、もしデータの流用により改ざんが行われたのだとしたら、くいによって違うはずのデータが横並びになり、通常のくい打ちとは異なります。そのことに気付かなかった、或いは気付いていながら無視した、としたら……。この事件、支持層より深い問題になるのかもしれません。

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