団地の建て替えが進まない理由

  • 2021年03月22日更新

日本の高度経済成長期における象徴的な存在のひとつ、住宅団地。首都圏を中心に日本全国各地で建設された住宅団地は、今、建て替えまたは改修の時期を迎えています。しかし、制度上の問題も絡んで、なかなか進んでいないのが現状です。国道交通省では、団地「再生」のための検討会などを開いて、老朽化した団地の建て替え・改修を促進するための施策を練り、街づくりにもつなげようとしています。

建て替え・改修を迫られる住宅団地、その現状

昭和30~40年代の高度経済成長期において、首都圏など都市部を中心に日本の全国各地で、住宅団地が建設されました。戦後から続く都市部の住宅不足の解消と、労働力として地方から都市部へ出る人のために良質な住居を大量に確保することを目的として、当時の「日本住宅公団(現・都市再生機構)主導で建設された「公団」こと住宅団地は、高度経済成長の象徴的存在でもあります。ダイニングキッチンやお風呂など、当時としては最新の設備を備えた住宅団地は、時代の先端を行く都市生活スタイルとして、憧れの的になりました。時を経て、その団地は、建て替え・改修の時期を迎えようとしています。国土交通省が2014年12月から2015年10月にかけて調査・公開した「住宅団地の実態調査」によれば、全国にある住宅団地4,970団地のうち、築35年超が1,551団地、築45年超は291団地で、10年後には築35年超が2,769団地、築45年超は1,551団地に増えるという推計も出しています。老朽化が進む住宅団地の建て替え・改修は急務ですが、2015年4月時点で、建て替えの実績がある住宅団地は、実施中・実施準備中も含め127団地。老朽化が進んでも建て替え・改修が進まない理由は、主に現行の法制度にあります。マンションなど集合住宅の、建物や敷地などの共同管理について定めた法律に「区分所有法(正式名称:建物の区分所有等に関する法律)」があります。この区分所有法には、大規模修繕や建て替えなどについての項目もあり、例えば建て替えには「団地内の区分所有者および議決権の各5分の4以上の賛成」に加え「建て替える棟の区分所有者および議決権の各3分の2以上の賛成」が必要とされています。この「各5分の4」「3分の2」の合意を得ることが、入居者ごとの事情や考え方、経済状況などで簡単にはいかず、建て替え・改修がスムーズに進まなくなっていることが多いのです。

団地建て替え・改修促進に向けての動き

団地の老朽化が進めば、建物の自然損壊や、大地震などで起こる倒壊などの被害が起こりやすくなるばかりでなく、空き家になる率も高くなるため、地域の防災・防犯にも影響が及ぶことが懸念されます。また、先に挙げた調査結果では、老朽化が進んで入居者が減った団地の周辺では、商店数が減少傾向にあり、団地の老朽化が地域経済にも影響を与えることが示唆されています。このため、国土交通省では、2014年から「住宅団地の再生のあり方に関する検討会」を設置し、老朽化した住宅団地の建て替え・改修を含めて団地の「再生」を進めるための施策について、有識者も交えて検討を重ねています。これまでに、住民合意をしやすくする仕組み作りや、入居者に対する建て替え・改修費用補助、敷地の分割などが具体的な施策案として出されており、実現することで、賛同が得られやすくなり、また、敷地の一部を他用途にして費用負担を減らすことで、建て替え・改修へスムーズに入れるようになるのではと考えられてます。現在でも、民間事業者の主導でリノベーションが進み、若い世代が多く入居するようになったことで地域の活性化にもつながることが期待されている団地の例もあります。日本の経済成長を支えた存在、住宅団地は、今、時代を経て、再び街を活性化させる存在になろうとしています。

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