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親と祖父母の「子育てギャップ」を埋める救世主!?祖父母手帳が大人気!

  • 2023年06月27日更新

終身雇用制度が過去のものとなり、定期昇給やボーナス支給も必ずあるとはいえなくなった現代。厚生労働省の「厚生労働白書(2014年)」などによると、共働きの世帯数は専業主婦世帯と反比例するように年々増加を続けており、ここ数年は1000万世帯を割り込んだことはありません。働く女性が増えるなかで問題となるのが「家事や育児を誰がどう担うのか」という点です。この課題への解決策になるのではと、オウチーノが注目したのが2016年1月からさいたま市内各窓口で配布を開始した「さいたま市祖父母手帳」です。祖父母手帳とはどのようなもので、導入によって何が変わるのでしょうか。さいたま市 子ども未来局 子ども育成部 子育て支援政策課 高柳さんにお聞きしました。

祖父母手帳とはどのようなものですか?

子育ての方法や常識は、時代とともに大きく変化します。祖父母世代が育児をしていた時と現在では、育児を取り巻く環境も大きく変わりました。それを理解しないまま祖父母が育児に参加し、祖父母も親も自分たちの常識を相手に押しつけ合ってしまうと、世代間の軋轢が生まれてしまいます。「祖父母手帳」は今の子育てと昔の子育ての常識を比較し、互いに理解を深めることで世代間のギャップを埋め、コミュニケーションを円滑に進めるためのツールです。広島県や岐阜県、石川県、横浜市など、同じように手帳を発行している自治体は他にもあります。

孫の写真も貼れる

なぜ祖父母手帳を発行することになったのですか?

さいたま市は核家族の割合が33.5%と高く、「家事・育児の協力者がいない」という声が多く上がっています。その一方で祖父母世帯には時間的、経済的に余裕がある方もいらっしゃるので、そうした方々を「地域における子育ての担い手」として取り込もうと考えたことがきっかけで発行にいたりました。

さいたま市における祖父母手帳導入の目的は何ですか?

1つ目は世代間の育児に対するギャップを埋め、コミュニケーションを円滑化することです。2つ目は将来的に、祖父母世代に地域における子育ての担い手となっていただくための下地づくりです。

世代間の育児に対するギャップ

ここが変わった!子育ての昔と今

子育てを取り巻く情報は変化・進歩するため、祖父母世代と子育て世代の子育ての常識にギャップができてしまいがちです。でも、その違いがわかっていれば、子育てがよりスムーズにできますね。
【だっこ】
昔:”抱きぐせ”をつけると、赤ちゃんはだっこを求めてしょっちゅうなくようになる。
今:だっこは自己肯定感、人への信頼感などが育つなど、心の成長に大切。抱きぐせは気にしなくていい。
【授乳】
昔:3時間おきに授乳するのがいい。
今:母乳の場合は、赤ちゃんが欲しがったら授乳する。
【卒乳】
昔:母子健康手帳に「1歳までに断乳(ママがリードして授乳をやめること)の完了という記載があった。
今:自然とおっぱいから離れていくまで、授乳して問題ない。授乳の終わりも「卒乳」とやさしく表現される。
【うつぶせ寝】
昔:頭の形がよくなる、寝つきがよくなる。
今:乳幼児突然死症候群(SIDS)から赤ちゃんを守るため、厚生労働省は「医学上で必要なとき以外は、赤ちゃんの顔が見えるあおむけで寝かせるようにしましょう」と啓発している。
【離乳食の進め方】
昔:母子手帳の3、4か月の欄に「果汁やスープを飲ませていますか」という質問があり、離乳食の準備として果汁をスプーンで与える(味慣らし、スプーン慣らし)。
今:果汁の過剰摂取による乳汁の摂取量の減少から低栄養や発育障害との関連が報告されており、果汁を与えることはすすめられていない。また、咀しゃく機能の発達の観点からも、スプーン等の使用は離乳を開始する5、6か月ごろでよい。
【虫歯予防】
昔:離乳食は大人が噛み砕いた食べ物を子どもに与える、箸やスプーンを共有する。
今:生まれたばかりの赤ちゃんの口の中に虫歯菌はいない。虫歯菌は、大人の口からうつることがわかってきた。周囲の大人は虫歯を治療し、箸やスプーンを共有しない。また、毎日歯みがきをていねいに行い、定期的に歯科検診を受けて口の中をチェックしておく。
【おむつはずれ】
昔:早めにはずしたほうがいい。
今:大人の都合ではなく、子どもの体調や発達をみながらのんびりと進める。
【日光浴】
昔:日光浴をしないとくつ病(ビタミンD欠乏症)になる。
今:1998年から、母子健康手帳から「日光浴」の記述が消え、赤ちゃんを外気や温度差に慣らす「外気浴」を勧める記載になった。オゾン層の破壊で紫外線量が増加したことが原因。外気浴の際は、紫外線が強い時間帯(10時~14時)はなるべく避け、帽子などで直射日光を受けないように注意する。
【歩行器】
昔:歩行器は、赤ちゃんの歩行訓練になる。
今:「おもちゃ」であって、歩行開始を早めるための道具ではない。

市民からの反響はありましたか?

親世代からは「直接は言いづらいことを、この手帳を渡すことで伝えられてよかった」、祖父母世代からは「今の子育て方法が気になっていたので、こういう冊子ができて嬉しい」「ちょうどこんな冊子がほしかった」など、大変ご好評をいただいております。各種メディアに取り上げていただいたこともあり、市内に限らず全国各地から多数のお問い合わせをいただいています。「他市に住んでいるが自分の市でも発行してほしい」という声もありました。

遊び

孫と一緒に遊ぼう

子どもは、遊びをとおして体の動かし方を学び、創造性や想像力をぐんぐん伸ばしていきます。スキンシップやコミュニケーションの絶好の機会です。ときには本気になって遊び、孫といっしょに楽しい時間をすごしましょう!
【読み聞かせ】
寄り添って読み、共感する読み聞かせの時間は、子どもの幸せな記憶となり、成長の糧になります。図書館で孫といっしょに本を選ぶのも楽しいひとときですね。
【手遊び】
指や手を動かして、素朴なわらべ歌に合わせてさまざまな表現をする「手遊び」。何も道具がなくても、たちまち子どもを笑顔にする魔法の遊びです。
「あがりめさがりめ」
クルクル変わる表情に子どもは大喜び。
「ずいずいずっころばし」
指はどこで止まるのかな?ドキドキ感が楽しい!
【昔遊び】
幾世代にもわたり語りかけと手を使って伝えられてきた遊び。子どもと一緒にトライ!
「ぽっくり下駄」
昔は空き缶とひもを結んで手作りして遊んだものですね。
「こま」
小さい子は、両手のひらや指先でひねるこまからスタート。
「お手玉」
”あんたがたどこさ”などのわらべ歌に合わせて楽しく遊びましょう。
「けん玉」
手先だけでなく、ひざの屈伸を使うなどのバランス感覚が大事!

今後の子育て支援の取り組みなどについてお聞かせください。

さいたま市では、2015年度から「祖父母手帳」の作成および「孫育て講座」を実施していますが、今後もこれらの取り組みを続けていくことで、祖父母世代の「地域における子育ての担い手」としての意識が高まり、ゆくゆくはファミリー・サポート・センターの提供会員やシルバーバンクのボランティア(活動内容:児童福祉施設での読み聞かせ、小中学校での見守り、学習補助など)として登録、活躍していただけたら嬉しいです。

孫育て

祖父母世代の子育て参加における障壁となる「世代間ギャップ」。「祖父母手帳」は、その問題を解消する一手として期待されています。この手帳を含めた子育て支援の取り組みが広がれば、より安心して祖父母世代に子育てを分担してもらえる時代が訪れるかもしれませんね。「どうして同じ食器で食べさせたらいけないの?」「泣いたらすぐ抱っこしてあげたいのに、抱き癖がつくっていつも注意される……」。このような世代間ギャップでモヤモヤとしている方は、ご自分の住む自治体でも同じような手帳が発行されていないか確認してみてはいかがでしょうか。また、さいたま市の祖父母手帳は、ホームページからダウンロードすることもできるので、ぜひ一度ご覧になってみてください。おひとりさまで子どもがいない私も、勉強になることがたくさんありました。

この記事を書いた人
編集部 池田

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