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都心の空き家を住居兼ギャラリーにリノベーション!街と人とアートの繋がり。| PARK GALLERY 加藤淳也さん×R65不動産 山本遼さん

  • 2018年07月13日更新

秋葉原駅電気街口を出て駅前の喧騒を抜け、末広町方面に向かうと、少しなつかしさを感じるような街並みが広がります。その一角に一軒家をリノベーションしたギャラリーがオープンしました。そこは最近珍しくなっている、住居兼ギャラリー。暮らしながら「発信」する先の未来とは?PARK GALLERYを営みながらギャラリーの上に住む加藤淳也さんと、その一軒家を紹介したR65不動産の山本遼さんにお話を伺いました。

PARK GALLERY 加藤 淳也さん
フリーランスのディレクターとして、WEBや広告・紙媒体を中心に、プロデュース・ディレクション・コンサルティング・編集……など、幅広く手がける。2015年、東京都江戸川区にPARK INC.プロデュースによるPARK SHOP&GALLERYをオープン、2016年6月PARK GALLERYとして末広町にリニューアルオープン。
加藤 淳也さん
R65不動産 山本 遼さん
広島出身の26歳。愛媛の大学を卒業後、不動産会社に就職。入社2年目に東京に異動となり、社会人4年目の春に65歳からの不動産、R65不動産を立ち上げた。
R65不動産についてのインタビューはこちら
山本 遼さん

福祉がきっかけでスタート、「街や人にとって良いこと」を考える場所にしたい。

加藤さん

――ギャラリーを作ろうと思ったきっかけは何ですか?

加藤淳也さん

2015年1月に江戸川区の平井で、福祉関係のギャラリーをボランティアでオープンさせました。心の病によってコミュニケーションや社会復帰が困難になってしまった方たちの自立を支援をするNPO団体から、広告の制作などに携わるディレクターの目線で「福祉」の現場を作ってくれないかと相談を受け、一緒にギャラリーを始めました。

1階が車庫、2、3階がオーナーの居住スペースになっている一戸建てがあり、1階の車庫を好きに使って良いと紹介され、何か人が集まりやすい場所を作れないか、いろいろ話し合いました。「駄菓子屋やろう」「休憩所にしよう」……。

打ち合わせでNPOの施設に行った時、アートのプログラムで描かれたたくさんの絵に出会いました。それにすごく感動して、アートを接点にしてまずは街や人と繋がっていくことができたらと提案しました。ぼくの知り合いのイラストレーターや写真家など、すでにアートの現場で活躍している人を連れてきて、そこで施設に通う方たちと接点を生み出し、何かおもしろいものや綺麗だと思うもの、「話していて楽しいな」など、些細なことで良いから何か気づきがあるような現場になったら、と思いギャラリープロジェクトが始まりました。
アートギャラリーを始めたくてというよりは、みんなで「福祉について考えよう」というところから、アートを選択した流れです。

――実際にそのギャラリーではどのような活動をされていたんですか?

加藤淳也さん

有志で10人くらい集まり、壁を白く塗ったり天井を抜いたり、もともと車庫にあった棚はレジカウンターに、舞台美術をやっていた近所のおじさんに壁を作ってもらったり、自分たちの手でギャラリースペースを作成しました。そして1年限定でギャラリーをスタート。
施設に通う人たちも、ギャラリーでコミュニケーションをしているうちに引きこもりの症状が軽くなったり、趣味を見つけたり、そこに通う作家たちも「街の人たちとのコミュニケーションが楽しい」と、1年間大盛況のうちに終わって。立ち退きの際には、みんなから「復活するよね……?」「きっとまたやるよね!?」というムードが(笑)。

ちょうど自分の引越しのタイミングが重なったこともあり、“自分の仕事もギャラリーもできて、自分が住める物件”を探しました。
2月に平井のギャラリーが解散、末広町の今の家には5月に引っ越してきて6月にギャラリーをオープンしたので、なんと4ヶ月程のスピード復帰でした。

近隣の人々からも徐々に認知され始め、ありがたいことに展示にもお客さんが入ってくれています。いろいろな人が集まっておもしろいことが起こりそうな予感。ここからまた「街や人にとって良いこと」や、もちろんもともと福祉がきっかけで始まったので、この街でも障がい者支援・高齢者への声かけや、子どもに向けたアート活動などを念頭に入れて、みんなで考えながら発信していけたら、と考えています。

SNSでの縁が新しいギャラリーとの出会いに。

2階の押入れ跡

――この物件はどう知ったんですか?

加藤淳也さん

まずインターネット上で調べてみましたが、住居兼店舗となると都心から離れていたり家賃が予算オーバーだったり居抜き物件だったりなど、希望条件には程遠い物件ばかりでした。そこでSNS上で物件を探していることを発信するようにしました。
すると、それを見てくれた「ヒトカラメディア(※)」という会社の人からFacebookでメッセージを頂き、インターネット上には出ていないようなおもしろい物件をたくさん紹介してもらいました。一度、三ノ輪に条件がぴったりの気に入った物件があったのですが、いざ契約しようというタイミングで雨漏りが発覚、そんな物件は貸せないからと流れてしまいました。三ノ輪でも都心から少し外れているじゃないですか。それでこの条件か……もうないだろうな、と絶望的な気分になっちゃって。

ちょうどその会社の方と山本さんがもともとお知り合いだったようで、「住居兼ギャラリーを探している人がいる」という話になったらしく、オーナーさんを紹介してもらいました。

(※)株式会社ヒトカラメディア:「『都市』と『地方』の『働く』と『暮らす』をもっとオモシロくする」をミッションに掲げ、事業を展開する

山本遼さん

この一軒家はかつてオーナーの義理のお母様が住まわれていて、亡くなられてからは空き家となっていた物件で「どうにか良い人に貸してほしい」という話でした。立地は良いしアクセスも抜群、しかしいかんせん1フロア1フロアがそこまで大きくはないうえに、古い物件ゆえ階段がかなり急で、(本当に急で、20代半ばの私も少し恐いくらいでした!)ファミリーに貸すとしても子どもやママにこの階段はきついだろうと思っていました。そんなとき「1階をギャラリーにしたいらしい」という加藤さんの話が舞い込んできました。

1階はもともと美容室で、オーナーは「前の美容室も地域の人に使ってもらっていたから、そういう人に借りてもらえたら良いね」と言っていましたし、僕も活かした使い方ができればすごく素敵だと思っていました。加藤さんの障がい者支援の「機会を提供する」というスタンスにも惹かれました。

オーナーは賃貸に出すのが初めてだったので、不安も大きかったみたいです。やはり難しいのが良い借主をどう見つけるかということです。

根付く「物語」と現代の「暮らし」を生かしたリノベーション。

ギャラリー

――リノベーションする際、加藤さんも提案されたんですか?

加藤淳也さん

ぼくが求める条件を洗いざらい出してみてもらえないかと言われ、家賃をはじめ「ここは板張りが良い」「1階は釘を打ったりペンキ塗ったり好きにしても良い壁を立て込んでほしい」「1階は土足であがれるように」「階段下を収納にしたい」……などを挙げました。2階の居住スペースについては「収納に使いたいから神棚は残してほしい」「シンクは広めが良い」「収納は多い方が良い」などの話をしました。

最も特徴的なのは、1階の手洗い場です。オシャレな洗面台をデザイナーさんが提案してくれたのですが、その美容室で使っていた洗髪台をそのまま残してもらうことにしました。

鏡台だったという本棚

▲今は昔、鏡台だったという本棚。

加藤淳也さん

「ここ、もともと何だったんだろう?」という疑問が、来てくれた人や作家さんとのコミニュケーションのきっかけになります。歴史や物語を大事にしていきたいんです。
洗髪台に加え、髪を切りながらハサミや雑誌を置いていた鏡台も本棚として壁に取り付けてもらいました。ガラス戸もガラス棚を残したものだったり、棚も活版印刷所で使われていた古いものを友人づてに譲ってもらったり。

活版印刷所で職人さんが使っていたという棚

▲活版印刷所で職人さんが使っていたという棚。重厚な雰囲気。

加藤淳也さん

他にも「階段は木の風味を残してほしい」など、「新しくしたい」というより「残したい」と言っていることの方が多かった気がします。

――もとの形を活かしたところが多いんですね!

加藤淳也さん

柱などもそのまま使用したところが多く、デザイナーさんも「物語を残す」と「現代に住む」を融合したい気持ちを汲んでくれました。「まさかあの美容室がこうなるとは!」と、満足しています。

キッチン、加藤さんがDIYした棚コンロ

▲レトロでかわいい広々キッチン。棚は加藤さんがDIYしたそう。

住みながら働くことで、もっとコミュニケーションが広がる。

山本遼さん

不思議ですよね、家に人が出入りする感覚。

加藤淳也さん

そうですね。住んでいるところにアポなしでどんどん人が来る、小学生か中学生の時の感覚に近いかもしれないです。「かーとーくんあーそーぼー!」みたいな(笑)。

週末や制作の仕事が立て込んでいない時は2階も交流の場として開放しています。

――最上階の3階は、2畳ほどのお部屋とバルコニーがありますよね!

加藤淳也さん

3階はデスク兼寝室にしています。ここは完全にプライベートスペースです。日当たりが最高です。

住居兼ギャラリー、住みながら働くメリットは何ですか?

加藤淳也さん

メリットとしてはまず、家賃を抑えられます。店舗と家の家賃、そこに通う交通費をそれぞれ払っていたら絶対に回らないと思います。
あとは近所の人とのコミュニケーション量が違います。朝起きてから夜寝るまで、何をするにも店の近所なので、街の人たちに店の存在を早く覚えてもらえた気がします。通勤時間20秒、満員電車なしも快適です(笑)。

山本遼さん

住居兼事務所・店舗の物件は本当に少なくて、探してもなかなか見つからない状況ですが、今回のように一戸建ての空き家をリノベーションし、1階だけ下駄を履かせるという形態に再生したり、やり方はまだまだあると思います。

アーティストの難しいことのひとつに、地域にどうやって溶け込んでいくか、ということがあると不動産会社ながら思います。「ここで何するの?」「近隣の人からの目、大丈夫?」などオーナーにも理解されないまま、借りることすらできないことも多いのではないでしょうか。住居兼事務所・店舗を探されている人をはじめ、アーティストはもちろん何かを始めたいと思っている人たちをもっと応援したいと思っています。

街と人とアートと。繋がって広がっていく未来。

――今後の展望を教えてください!

加藤淳也さん

ギャラリー外観1階のギャラリーは色々なジャンルの作家さんが集まって、様々な展示や表現をしていく場にしていきたいと考えています。2階はそうやって展示を通じて集まった人たちが、ただ会期を終えて通り過ぎていくのではなく、滞在して繋がって帰れる場所にしたいと思い開放しています。

誰かが何かを仕掛けなければ何も起こらないのではなく、この場所から自然とアイディアが生まれて、それぞれがそれぞれの方向に自然と動いていく、何かをやりたい・作りたい・叶えたい時に、「作りやすい」「叶えやすい」コミュニティ形成を目指したい。これができる人、あれができる人、いろんなジャンルの人が集まっていけば、例えば1つの大きなプロジェクト(街の活性化や福祉事業)を実現したいと思った時に、すぐに行動できる気がしています。

ギャラリーの店主がギャラリーに住んでいて、会いに行けばすぐに会えるというスタイルはあまりないと思うので、この店をきっかけにもっと気軽にアートやギャラリーという存在を楽しんでもらって、街と人とアートがどんどん繋がって広がっていけば嬉しいです。

山本遼さん

「地方のアーティストが泊まれるところがあっても良いよね」という話が出ています。僕が愛媛から東京に出てきた時、何か新しいことをしようと思っても難しかったのを覚えています。単発的に新しいことができたとしても、それで誰かと繋がっていける、次に繋げるのは本当に難しくて。誰かと繋がってそこからまた活動が広がっていき、地方の作家にとって東京が2つ目の拠点になる、というのは素敵だと思いました。

加藤淳也さん

そうですね。東京の人たちと東京だけでアートやものづくりを考えていてもおもしろくないので、東京以外でがんばっている作家さんを応援したいです。そのために気軽に展示ができる料金設定にしていますし、ぼくの家でよければぜひ泊まっていってください(笑)。

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