その美しさに、虫も人もメロメロ!? 「冬の食虫植物展」で魅力に迫る!

  • 2021年03月22日更新

自らを「食虫植物の奴隷」と称するほど熱狂的な食虫植物愛好家・木谷美咲(きやみさき)さん。
図鑑・エッセイ・小説・絵本など、食虫植物に関するさまざまな書籍を執筆、イベントやテレビ番組などにも多数出演されている。
そんな彼女が代表を務める「食虫植物を楽しむ会」が、食虫植物の展示・即売会を行った。

木谷さんの著書の数々

▲木谷さんの著書の数々

12月18日、町田文化交流センター「プラザ町田」6Fギャラリーにて開催された「2016 冬の食虫植物展」。
2016年2月、好評のうちに終わった「美しい食虫植物 冬のドロセラ展」に続き第2回目である。

今回は木谷さんに、即売品として出された球根ドロセラの育て方や魅力について伺った。

冬に育つ珍しい食虫植物、球根ドロセラの魅力とは

▲「食虫植物を楽しむ会」、中村英二さん(左)と、木谷美咲さん(右)。
中村さんは今回の商品となる球根ドロセラの栽培や、その他の物販制作などを行った。本職は、主に革製品やナイフなどの制作を手掛ける職人である

――今回の即売会では、どれくらいの数の出品があるのでしょうか。

鉢の数が170点です。株の数はもっと多く、200~300株くらいでしょうか?
球根ドロセラは栽培・維持も難しく、業者が手に出しにくい種類で、市場には流通していません。

今回は、もともとオーストラリアから輸入された苗を、制作担当の中村さん独自の技術で販売できるくらいまで増やしました。増殖技術を確立されている方もなかなかいないので、とても貴重な展示です。

球根ドロセラ

▲1つの鉢に1、2株のものもあれば、5株くらい入っていそうなものもある。300株どころではないかも?

――球根ドロセラについて、その魅力を教えてください。

魅力は、形のバリエーションと、葉の腺毛から出る粘液の美しさです。
粘液が光に反射して輝くさまは「生きる宝石」とも呼ばれ、女性には特に人気です。この粘液で、ハエ取り紙のように虫を粘りつけ、消化・吸収します。よく捕まっているのは、小型の蝶やハエ、ガガンボ(カトンボ)の類です。

開花した球根ドロセラ

▲開花した球根ドロセラ(展示用)

――ほかの食虫植物と違っている点は?

日本では冬の時期に旬を迎える点です。ほとんどが夏から秋にかけて成長する食虫植物の中では、唯一、緑が少なくなるさびしい時期に育つ特殊な種類ですね。球根(とくにグラジオラスやサトイモなどと同じ球茎)性の植物で、夏は休眠します。

食虫植物食虫植物

肥料は不要!球根ドロセラの育て方

球根ドロセラの育て方

――冬は虫も減りますが、栄養は足りるのでしょうか?

基本は光合成で大丈夫です。食虫植物は「虫をあげないと枯れるの?」とよく聞かれますが、そんなことはありません。食虫植物とは、もともと貧しい栄養の土地でも育てるよう進化した植物で、虫は栄養補助的に摂っています。

ウツボカズラ

▲「ザ・食虫植物」と言えば、ウツボカズラ。じつはこの植物の虫を消化する壺状の器官も、一般的な植物の部位に当てはめれば、葉にあたるのだそう

――食料と言うより、サプリメントに近いのですね。

はい。葉から有機肥料のように吸収します。
実際の肥料は与えないのが一般的です。根があまり発達しておらず、与えると逆にダメージを受けてしまう可能性もあります。

ただ人によって、ごく少量の緩効性肥料や1,000倍ほど薄くした液体肥料を与える方もいれば、「まったくあげない方が、株が締まってよく育つ」と言う方もいます。個人の育て方に多少違いが出るところはあります。

中村さんが手がけたグッズ

▲中村さんが手がけた革製品や、盆栽の鉢を置く「卓(しょく)」と呼ばれる木彫りの台、ひょうたんなどの陶器も展示。食虫植物を彩るためのグッズだ

――どんな土に植えたら良いですか?球根ドロセラの管理方法を教えてください。

水はけの良い弱酸性の用土に植えます。
オススメは、鹿沼土(かぬまつち)とパーライトを合わせたものなどですね。受け皿に水を張り、そこに鉢をつけて管理します。腰水(こしみず)と呼ばれる方法で、鉢底から給水させます。

乾燥、横風に弱いので、水槽やビニールフレームで囲いを作ると良いです。日当たりの良い屋外で、最低気温が0度を下回らない場所に置きます。

食虫植物

▲多くの食虫植物が栄養の乏しい酸性土壌の湿地に生えている。ごく一部を除き、乾燥は大敵。「土がカリカリに乾くと一気に昇天してしまいます」と木谷さん

――屋内でも育てられますか。

LEDの光で育てている方もいらっしゃいますが、基本は太陽光に6時間以上当てることが望ましいです。

ペットのように愛でられる食虫植物の魅力

ムシトリスミレ

▲ムシトリスミレ。スミレに似た花を咲かせるが、スミレとは無関係。モウセンゴケのように葉の表面から粘液を出し、小さな虫を捕らえる

――球根ドロセラをふくめ、食虫植物って何種類ほどあるんですか。

原種だと600種類以上。なかでも球根ドロセラの仲間と言われるモウセンゴケが、だいたい200種ぐらいと言われ、食虫植物全体の1/3を占めています。

粘液の出方も健康状態に関わる

▲「食虫植物にとって『キレイ』とは具体的にどんな状態?」と伺うと、「まずは健康状態」とお答えいただいた。粘液の出方も健康状態に関わるそう

――食虫植物って、ハエ取り紙やゴキブリホイホイの代わりになったりもしますか。

実際、ウツボカズラやサラセニアは食虫植物のなかでも大型で、ゴキブリやカエルなどを捕まえていることもあります。ただ、それほど捕虫能力があるわけではないんです。実用性より形や生体のおもしろさを愛でられれば良いかな、と思います。

モウセンゴケサラセニア

▲モウセンゴケ                サラセニア

――確かに実用性で考えると、まず育てるのが手間ですもんね……。ちなみに初心者でも育てやすい食虫植物はありますか?

比較的育てやすいのはサラセニア、タヌキモ、ハエトリソウでしょうか。
日本の気候と合わない種類は、育てるのが難しいですね。例えばウツボカズラ属は耐寒性がない種類が多く、温室が必要になります。ムシトリスミレのなかでも高山に生える種類(マクロセラス、グランディフロラなど)は、日本の夏では暑く、維持が難しいです。
ただ、難しい種類ほど形がユニークで魅力的だったりします。

プシタシナ

▲サラセニアのなかでも、プシタシナと呼ばれる独特な形の植物。袋状の葉には小さな穴があり、そこに入った虫は、逆毛の生えた内壁でどんどん奥へ追い込まれ、消化液で消化されてしまう

――見た目がおもしろいほうが、育て甲斐がありますよね。

パックンと閉じるハエトリソウは動きと形がおもしろいですし、サラセニアも種類によって葉脈が変わったり色や形が変わったり。形がどれも素敵で、心がときめいてしまいます。ロマンがありますね。

ハエトリソウ

▲ハエトリソウ

――虫を食べるから、植物と言うより少しペット感覚で接してしまうところもあったりして……?

そうですね。ウツボカズラの中に金魚のエサなどをあげる方もいますよ。

木谷さんの油絵木谷さんの油絵

▲イベントでは、木谷さんの油絵も展示

ウツボカズラの消化液は飲める!? 食虫植物の食用利用

――ちなみに木谷さんは、食虫植物を食べる活動をされているというお話も伺いました。

はい、よくやっています。
ウツボカズラの中にお米を入れたり、蒸して、ウツボカズラメシなんてつくったり。自生しているマレーシアの山岳民族の間でも作られている料理です。
笹ちまきの笹の代わりみたいに、山歩きのおやつがわりに携帯できるようになります。

木谷さん

――葉(消化器官)自体も食べられるのですか?

現地では食べていませんが、私が食べてみたところ、外側は酸味があります。
種類によっては肉厚なので、個人的には天ぷらにしたほうがおいしかったですね。山菜を揚げたような味でした。

それからマレーシアでは喉が渇いたときなど、中の消化液も飲まれています。

ウツボカズラ

▲お米もたっぷり入りそうなウツボカズラ

――飲めるんですか!

実際は弱酸性です。ウツボカズラの消化器官が未発達の閉じた状態で、虫を捕らえる前の状態のものは飲めます。無菌に近く殺菌作用もあり、生水より安心して飲めますよ。
甘くも酸っぱくもなく、硬水みたいなクセもありません。生臭くもない。樹液に近いような感じです。

ウツボカズラウツボカズラ

▲ウツボカズラ。まだフタが空いていない壺からは、消化液が飲める

――飲んだら、喉が焼けるのではないかと思っていました……。

それは、強酸ですね(笑)。
以前、昆虫料理愛好家のムシモアゼルギリコさんと一緒に虫・食虫植物料理のイベントをやった時、数に限りあったウツボカズラの消化液が奪い合いになりました(笑)。ジャンケンになり、勝った人がすごいガッツポーズ取ったりして。

木谷さん食虫植物

▲中村さん制作のハエトリソウ帽子をかぶった木谷さん

――それだけ好奇心旺盛な方々が参加されたイベントだったのですね!私もウツボカズラメシは食べてみたい気がします。

ただ、株の単価が結構高いんです。ご飯入れてちょうどいいサイズだと、1株1万円以上もします。
イベントで振る舞うなら、フルコースになってしまいます……。

ハエトリソウ

▲ハエトリソウも、間にひき肉をはさんで料理してしまう木谷さん。テレビ番組出演時は、サンドウィッチマンの富澤たけしさんにも振る舞われていた

――ウツボカズラで無理なら、サラセニアでできませんか?比較的、育てやすいんですよね?

あーーーーーー!!ぜんぜん考えたことなかったです!
捕虫方法は同じですし、それで提供するって、アリですね!ウツボカズラでしかできないと、固定概念で思い込んでしまっていました。

サラセニア

▲サラセニア

――なんと!ぜひやってみてください。楽しみにしています。

来場者

中村さんと木谷さん

編集後記

即売会当日は、関西や東北から来られている方も。品物も次々になくなり、開場から2時間後にはほぼ売り切れていた。若い方からお年寄りまで、男女問わず食虫植物愛好家は全国にいらっしゃるよう。あまりの来客の多さに、「食虫植物を楽しむ会」のお二方も驚いていた様子だ。次回は早くも、2017年2月の開催を予定しているそう。今回買い逃した方も手に入れるチャンス!詳細は木谷さんのブログ「革命的植物宣言~木谷美咲の食虫植物に癒されライフ~」をチェックしてみよう。
(取材/平原学 撮影協力/植木 裕貴)

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