• 2018/08/31
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住宅ローン「年収の5倍が目安」は都市伝説。年収から逆算する購入予算が的外れな理由

こんにちは、FP・住宅ローンアドバイザーの盛田です。
家を買うときに不可欠な「購入予算の設定」。他の人たちはどのようにこの購入予算を設定しているのでしょうか。不動産の現場を見渡すと、購入予算の設定は正確さよりも分かりやすさが重要視されているように思います。その最たるものが「年収の何倍」や「毎月返済額が年収の何%以下」といった年収から購入予算を逆算する方法です。分かりやすさがウリのこの方法。残念ながら的外れです。

住宅は一般的な商品とはワケが違う

住宅は一般的な生活消耗品や家電とは違い、その額が非常に高額になります。そのため多くの人が住宅ローンを借り入れ、長期間の返済を行うことになります。この「借り入れ」と「長期間の返済」が住宅購入の特徴であり、購入予算を設定する際の重要なファクターになります。

年収から購入予算を逆算する的外れ

では年収から購入予算を逆算する方法として一般的認知されている方法にどのようなものがあるか確認してみましょう。

まずは「年収の何倍」説です。「何倍」に入る数値は5倍というのが以前の定説で、最近は6倍・7倍という数値も目にします。この場合「年収が500万円なら2500万円~3500万円が購入予算の目安」という計算になります。

続いて「毎月返済額が年収の何%以下」説です。「何%」に入る数値は25%説が有力ですが、たとえばフラット35の融資条件をもとに35%を唱える説も少なくありません。一定条件のもと「年収が500万円なら3400万円~4700万円が借入可能額の目安」となるようです。

どちらも「目安」という言い訳を入れていますが、「目安」だったはずの数値が独り歩きし、家計の身の丈とかけ離れた予算の物件を探したり、実際に購入してしまったりするケースもあります。「目安だから」と油断してはいけません。

年収から逆算するこれらの説にある不備を指摘してみましょう。

  • 年収は何歳時点の年収でしょうか? 20代と40代では年収は異なります。
  • 「年収の何倍」説に頭金は含むのでしょうか、含まないのでしょうか。
  • 「返済額の何%以下」説では借入期間は何年でしょうか? 20年と30年では計算が変わります。
  • 「返済額の何%以下」説では借入時の金利は何%でしょうか。金利によって毎月返済額が決まります。

いじわるめいた指摘かもしれませんが、どちらの説も計算プロセスや前提条件がはっきりしていないという問題があります。それらを理解せず数値を式に当てはめるだけで得られる数値を「購入予算の目安」としてしまうのは大変乱暴です。

一般に不動産の現場で使われるこれらの説は、消費者が買いやすい(消費者に買わせやすい)ように設定されているのが常です。しかも、家を探し始めるとより良い条件の物件に目移りし、購入予算をアップしたくなるものです。そうしたことが重なると購入予算はどんどん実態を離れた、ほとんど夢物語の世界に突入してしまいます。夢から覚めるのは家を買った後、ではあまりに残酷です。近年は住宅ローンの借入可能額が拡大される傾向にあるため、こうした話は決して他人ごとではないのです。

年収だけで予算が決められない本当の理由

年収から購入予算を逆算する説に難癖(?)をつけてきましたが、実は年収だけで住宅の購入予算を決めることができない本当の理由は別にあります。以下のグラフを見てください。

60歳定年時点での家計状況

これはある家族の家計状況を円グラフでまとめたものです。世帯主が60歳を迎えた時点のものとしてシミュレーションしています。円全体が収入で、支出と貯蓄に項目が分かれています。支出項目に「住宅取得費」という項目があるのが分かると思います。

ではもうひとつ円グラフを見てください。

こちらもある家族の家計状況です。左の円は最初に示したものと同じです。仮にこちらをバランスの取れた家計状況だと考えてみてください。対して右の図を見ると「住宅取得費」が膨らんでいるのが分かるかと思います。そのしわ寄せは教育費にいき、教育ローンを別に借り入れることになった様子がうかがえます。

もしこの家族に子どもがなく、教育費の支出がゼロなのであれば「住宅取得費」が膨らんでいたとしても問題はなかったでしょう。また、節約志向の家族で「基本生活費」が抑制できる自信があるのであれば、「住宅取得費」の膨らみは吸収できるのかもしれません。

しかし、仮にこの家族に子どもが4人、5人といて全員が大学までいくとしたら。あるいは家族の時間を大切にしたいから海外旅行を毎年欠かさず行くことにしていたら。その場合は「住宅取得費」を抑制するなど何かしらの対策が必要になるはずです。

年収だけで住宅の購入予算を決めることができないのは、家計状況全体にあって「収入」と「住宅取得費」はその構成要素の一部でしかないためです。「年収」を不変とするなら「住宅取得費」は「基本生活費」「教育費」「老後資金」との兼ね合い、バランスの上で決まることが分かると思います。仮に「年収」だけで「住宅取得費」を算出し決定してしまったら、そのしわ寄せは後々になって他の項目に及んでいきます。そのリスクをきちんと説明せずに年収だけで住宅の購入予算を決めるのは、やっぱり乱暴この上ない方法です。

購入予算の設定をする準備

では、住宅購入予算を設定するにはどうしたらよいのでしょうか。ここではマクロな視点とミクロな視点のふたつから住宅購入予算を設定するために必要な「準備」をお話ししましょう。


この先、自分で読んで学ぶのはしんどいなぁ、という人はファイナンシャルプランナーへの相談もおススメです。ファイナンシャルプランナーとは何者か?は次のページをご覧ください。

ファイナンシャルプランナーに家族に必要な資金計画を相談すべし


まずはマクロな視点です。上でお話ししたとおり家計に占める「住宅取得費」の割合が適正かどうかは家族ごとのライフスタイルによって異なります。ライフスタイルを元に、長期間にわたる家計状況を可視化する方法がライフプランニング(生涯生活設計)です。ライフプランニングを行う際の利用するツールには以下のものがあります。

  • ライフイベント表
    家族の将来のライフイベントと必要な資金を時系列にまとめた表
  • キャッシュフロー表
    ライフイベント表と現在の収支状況にもとづいて、将来の収支状況と貯蓄残高の予想をまとめた表
  • 個人バランスシート
    一定時点における資産と負債のバランスを見る表

ツールの詳細はご自分で調べることもできます。インターネットや関連する書籍を探してみましょう。ファイナンシャルプランナーに相談するのもひとつの方法です。

どちらの場合でもツールをすぐにつかいこなすのは難しいものです。細かいことは気にせず手探りでもまずは将来のことを考えてみるようにしましょう。最初の段階では住宅取得費は分かりませんので、虫食いの状態になってもかまいません。

続いてミクロな視点でたどってみましょう。ミクロ視点では最初に毎月支払える住居費を算出していきます。ここでは不動産を購入することによって継続的に必要となる費用をできる限り入れ込みます。住宅ローンの毎月返済額だけではなく、税金や管理費、修繕・リフォーム積立金なども計算には必要です。

具体的な項目や金額の目安などは以下のページにまとめてありますので、参考にしてください。

「借りられる額」じゃダメ!毎月「無理なく返せる額」を試算で知ろう

毎月支払える住居費が分かったら、次は住宅ローンシミュレーションによる借入可能額の算出です。住宅ローンシミュレーションを利用して借入可能額を算出するには「金利」「返済期間」「返済方法」を設定する必要があります。ご自身で設定できるならばその内容を、難しければ以下のページをご覧いただき、ガイドに沿って項目を埋めてみてください。

住宅ローンシミュレーションを使ってみよう

ミクロ視点で算出した数値はひとつの案です。この数値を今度はマクロ視点で空白になっていたライフイベント表やキャッシュフロー表における住宅関連の費用に当てはめてみます。そうすることでミクロ視点で算出した数値が、ご自身の家計状況において大きいのか小さいのか、がなんとなくイメージできるようになります。

また、ライフイベント表に当てはめることで、住宅ローンシミュレーションで設定した返済期間が定年後にも及んでいる場合は、そこに気づき、返済期間を短くして、再度借入可能額を計算できるようになります。

このような作業を何回か繰り返すことで、住宅の購入予算の設定はその精度が高まっていきます。

お金のことや将来のことを考える習慣がない人にとっては、面倒くさいな、難しいな、と思うかもしれませんが、この方法は収支状況を把握することはもちろん、家族の目標や夢が整理され可視化されるのが最大のメリットです。他人任せにせず、ぜひ家族みんなで考えてみてください。

FP・住宅ローンアドバイザー 盛田玲
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