人気YouTuber【香坂きの】さんインタビュー♪大人がどハマり「プラモデルの魅力」と「教育の可能性」

  • 2021年10月15日更新

長らく続くコロナ禍。巣ごもり需要により、現在プラモデルが注目を集めています。誰でも手軽に始められることや、場所を選ばずに楽しむことができて、ご時世的にもぴったりの在宅趣味。「売れすぎて生産が間に合わない」といったニュースもありました。

そんなプラモデルの魅力を、10年にわたり伝えてきたYouTuber香坂きのさんが、初の著書となる「誰でも驚くほど簡単に上達 プラモはじめます!」(KADOKAWA)を発売しました。発売後約1週間で重版が決まるなど、話題を呼んでいる一冊です。

時代の流れによってさまざまな趣味が増えている中で、なぜ今プラモデルが熱いのか。今や男性ばかりが楽しむ趣味ではありません。じつはお母さんや子どもにこそおすすめなのです。

そこで、10年という決して短くない時間をプラモデルに注いできた香坂きのさんに、その理由を聞きました。

プラモは年齢も性別も関係なく、みんなが楽しめる趣味になった。

――プラモデルを一体作るのに、すごく手間がかかるような印象を持っている人が多いと思いますが、香坂さんはどのように思っていますか?

 それこそ10年前くらいは、確かにそういう印象を持たれても仕方なかっただろうなと思います。揃える道具も結構多かったし、色を塗らないと味気ないようなプラモデルもありましたから。でも、最近はプラモメーカーさんが初心者向けに、ニッパーがいらない手でパーツを切り離せるようなキットも発売するようになりました。

 また、ロボットのような男の子や男性にウケる商品だけでなく、リラックマやキティちゃんとコラボしたかわいらしいキットが店頭に並ぶようになったのも昔とは違うところです。私は、昔発売されたプラモデルを組み立てることもあるんですが、今のキットに付いている説明書がすごく分かりやすくなっているのを感じます。昔、プラモデルを組み立てようとして、なかなか上手に進まなかったり途中で挫折してしまった人に、最近のプラモデル事情をぜひ知ってほしいですね。説明書を読めば誰でも完成できるのが、プラモデルの魅力なんだとわかってもらえるはずです。

――実際に組み立てにかかる時間や作業量はどのくらいでしょうか。

 プラモデルはパーツが多いし、小さくて失くしそうと思っている人もいるのかもしれませんが、最近は全部で20パーツくらいのプラモデルもあります。そういうものだと、かかる時間は大体20分くらい。初心者の方が始めやすい物もたくさんあるんです。私がよく作るキットは2~3時間くらいかかるものが多いですが、例えば仕事終わりに趣味の時間を持つには最適な作業時間じゃないですか?

 人によって趣味にかけられる時間はバラバラですが、自分のライフスタイルに合わせて自由に選べるのもプラモデルをおすすめしたい理由です。仕事が休みの日にはもう少しやりごたえのあるキットを組み立ててもいいし、1体のプラモデルを塗装するところまで進めてもいいと思います。私は年間150体以上のプラモデルを作っていますが、コンテストに出すために1年間でディテールにこだわった1体しか作らないという人もいます。そのくらい楽しみ方に幅がある趣味なんです。

大人になっても成長できるのがプラモデルの魅力

――プラモデルを作ることで、日常生活に生きる部分はなにかありますか?

 2Dから3Dへの変換が簡単にできるようになったのが、一番大きいかもしれません。アプリを使っても地図を読むのが苦手という人がいますが、プラモデルを作るようになると、紙の説明書を見て立体を作る訓練ができるので、地図を見て自分がどこにいるのかが分かるようになります。だから、地図を読むのが得意っていう人はもしかしたらプラモデルを組み立てるのが得意かもしれない(笑)。

 書籍を一緒に作った編集の方がプラモデルを作ったんですが、4時間もの間集中力を切らすことなく一気に作り上げたという話を聞いて、「これは、ハマったな…!」と思いました。完成するまで手先と頭をフル回転させたので、終わったあとは心地よい疲れがやってきたそうです。でも、この心地よい疲れって大人になるとなかなか経験できないんですよね。そこまで何かに集中する機会ってないですから。集中することも、1体作り上げたという達成感も、プラモデルに触れてみると経験できます。

――プラモデルは子どもが作るものというイメージが強いですが、大人になってからでも楽しめますか?

 私自身、プラモデルを始めたのは大人になってからです。20歳の頃、友だちが作っているのを見ながら私も1体作ってみることにしました。それが、完成したときに私が思ったのは「こんなに簡単にできるんだ!」ということです。最初は、小さなパーツがたくさんあるし「こんなの組み立てられるのか…?」なんて思ってたけど、無事に完成することができました。

 その後、「塗装する人もいるんだよ」とか、「パーツを組みかえて遊んでもいいんだよ」と、いろんな楽しみ方を教えてもらってプラモデルの世界が広がりました。大人になった今だからこそ、自分の“好き”をすぐに形にできるようになります。子どものときに塗装までやりたいと思っても、ご両親に許可をいただかないといけなかったり、結構ハードルとしては高くなってしまいますが、大人になると結構自由に作れるなという印象です。

プラモデルはコロナ禍に最適なコミュニケーションになりうる

――コロナ禍で最近プラモ熱が上がっているということですがそれはなぜでしょうか。

 緊急事態宣言が発令されるなど、気軽に出かけることも難しくなりました。リモートワークなど働き方も大きく変わったこともあり、家で過ごす時間が増えた人がほとんどだと思います。お子さんのいるご家庭では、公園などで遊ぶのも人数が増えてくるとなかなか難しいし、真夏の暑い時期にマスクをして遊ぶことにもリスクがあります。

 家で一緒にプラモデルを作って楽しめたら、健康面の心配も少なくなるしコミュニケーションも取れると思いませんか? 私も子どもたちにプラモデルの作り方を教えるイベントを開催しているのですが、分からないところがあるとちゃんと「助けて~!」って言ってくるんですよ。そういうときに助けてあげると、子どもの目が尊敬のまなざしに変わることがあります(笑)。

 ものづくりの大切さについて子どもに教えたいって思っている人は結構いるんですが、どうしたら教えられるかって悩んでしまう人も多い。そういうときに、身近にあるプラモデルを使って一緒に組み立てれば、それだけでものづくりに興味を持つ子は多いはずです。

――子どもと一緒に作る楽しさについて教えてください。

 子どもは、直感的に作っていくことが多いです。例えば「絶対に頭は金色で塗る」とか、「剣の形を変える!」とかね。大人だと、戦艦だからこの色だなとか、お手本のロボットを検索して色味を合わせたりすると思いますが、子どもの発想力は自由です。先入観がないから当たり前という概念から簡単に抜け出せるんです。たまに、私でも思いつかないような突飛な発想を見ると、子どもって本当にすごいなって思います。手をベタベタにしながら色を塗っているのを見ると、一生懸命作っているなぁって感じがしてすごくかわいらしいんです。

 子どもと同じ時間を過ごさないと、どんな発想をする子なんだろうっていうのは気がつかないですよね。そして、それは公園でブランコに乗っているだけではなかなか分からない。ものづくりを通して子どもの考え方を見てみると、子どもの良いところをまたひとつ発見できるかもしれません。

上手に作る必要なんてない。作ることを自信に変えれば人間の魅力につながる。

――プラモデルが完成したあとには、どのような楽しみ方があるのでしょうか。

 作り終わった作品をSNSに投稿したり、プラモデルを作る人同士で交流したりしていますね。人によって、プラモデルをかっこいいって思うポイントって違うんです。例えば、「このスミ入れすごくきれい!」って細部を見る人もいるし、「キラキラした加工がされてる!」っていう珍しさに惹かれる人もいます。ほかにも、改造しているプラモデルを見て格好いいと思う人や、作っただけで格好いいという人もいます。そのどれもが正解だし、自分の中に“格好いい”と思える何かがあることが素敵なことだと思います。

 昔は、プラモデルを作っても自分の家に飾るだけで終わってしまうことがほとんどで、たまに自分の家に来た友だちに見せるくらいしかできなかったですが、今は手軽に自分の作品を発信することができます。撮影するときに塗装だけじゃなくて、ライティングやプラモデルのポーズにこだわりを詰め込む人もいます。今回の書籍では、その辺の撮影テクニックについても紹介しています。

 加工などもそうなのですが、自分から興味を持って学ぼうとしたりたくさんの失敗の中から自分に合った方法を見つける人は、やっぱり輝いて見えますよね。何かに熱中している姿を見ると、それだけで人間の魅力になるんだなぁと思います。

――香坂さんはSNSでどのようなことを発信しているのでしょうか。

 私がYouTubeで上げているのは主にプラモデルの情報です。プラモデルって1個あたりは安いんですが、学生だったりお小遣いをもらっているような子どもだと捻出するのが結構大変です。作りたいキットが増えてくればそのぶんかかる金額も増えてしまいますから。だから、限られたお金で物を見定めるために、YouTubeではレビューを出すことが多いです。

 私の心がけとして、あまりプラモデルが上手にならないように気をつけています(笑)。というのも、実際に触った感覚をリアルに伝えられるようになりたいんです。プラモデルは塗装までがセットだと思われるかもしれませんが、実際にプラモデルを作っている人の9割は塗装をしていない人。だからこそ、そういう人たちが「ちょっと塗ってみようかな」と思ったときに踏み出しやすい環境を作っておきたいという気持ちがあります。

 自分が塗ってみようと思ったときに、すごく上手な人のを見てしまったら「この人だからきれいに塗れるんだ」っていう気持ちがどうしても湧いてきてしまうと思うんです。それよりは、「この程度塗れていればいいのか」って思えるくらいの配信があってもいいと思います。

プラモデルの可能性を教育の場に広げたい

――書籍化に当たって、どのような人に読んでほしいですか?

 プラモデルを触ったことのない人はもちろん、昔触っていたけど趣味からは遠ざかった人、色を塗るという工程になかなか踏み出せない人です。正直、プラモデルを作っている人からしたら、「こんなに簡単なことばかり書いてるのかよ」って思われるでしょうね。でも、初心者はその「こんなこと」でつまずいたり難しいって思うものなんです。初心者に対して優しい本があることで、プラモデルに興味を持ってくれる人が少しでも増えたらいいなと思います。

 私もプラモデルを作りはじめるときに、何冊か本を買ってみたのですがプラモというジャンルは「プラモデルが好きな人のための本」が多いんです。当時は、すでに私もプラモデルが好きだったので気にならなかったのですが、本の中に出てくる専門用語を調べたりするだけで時間が経ってしまうんです。好きな人のために作られた本は確かに情報量も多いし、技術的にも素晴らしい。でも、初心者の人だったらくじけちゃうんじゃないかなって思ったのが、この本を作ったきっかけでもあります。

――これから先、プラモデルはどのような場所で活きると思いますか?

 これは昔からずっと思っていることなのですが、教育の現場にプラモデルを組み入れていきたいと思っています。説明書があって、だれでも完成することができるものだし、手を動かす体験ができるのも教育にいいんじゃないかなと。また、組みあがるキットは同じでも、色を塗ることでそれぞれの個性を活かすことができるし、人の作品を見て刺激を受けることもあると思います。そう考えると今のままでも、教材にできるくらいのポテンシャルはあるんですよね。

 現在でも、学校教育に取り入れている地域はいくつかあるのですが、それでもまだまだこれから広がる余地があると思っています。それこそ10年くらいかけてじっくりプラモデルの魅力を伝えていかないと、到達できない目標だと思います。もし、その夢が叶ったらそのときはプラモデルを組み上げたとき以上の達成感に包まれるんだろうなって思います。

文・取材=山岸南美 撮影=神保達也

【書籍情報】

『誰でも驚くほど簡単に上達 プラモはじめます!』
著者:香坂きの
出版社:KADOKAWA
価格:1,870円(税込み)

販売ページを見る(単行本)

販売ページを見る(Kindle版)

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