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あなたの知らない「工場見学の世界」燃えたぎる溶解炉で見たのはシュワちゃん…じゃなく料理職人だった件【アルミリサイクル@北海道】

  • 2022年08月23日更新

こんにちは、くふうLive!編集部です。

「溶解炉、見に来ませんか?」

モテ要素ゼロのお誘いに、秒で「行く行く!」と前のめりに返事。
脳内では、シュワちゃんが真っ赤に燃えたぎる溶解炉に「親指を立てて沈んでいく」あの映画の名シーンが勝手に再生し、あっ涙腺が…(早っ)。

着いたのは、北海道は苫小牧市にある、アルミ工場でした。 リサイクル事業を続けに続け、今年でなんと創業70年を迎える株式会社鈴木商会が誇る、道内最大規模の「アルミリサイクル」の現場、とのこと。

広報担当の渡邉健さんが、隠しきれないドヤ顔で勧める「未知の工場見学」。 ここは、家電から食品・お酒など様々な「ものづくり」の現場を取材してきた”自称・工場見学マニア”として、挑まずにはいられない!

というわけで、特別に潜入取材してきた「アルミリサイクル」の生現場をレポートします。 意外な結末に、乞うご期待!?

えっ、こんなモノも!?「身近なアレ」がリサイクルの材料に

いざ、工場!のその前に。

そもそも「アルミリサイクル工場」って何するところ?

「アルミ」っていう存在がなんだか身近じゃなくて、何をするところか、ピンとこないかもしれませんね。

簡単に説明すると、廃車の部品や捨てられた缶などの「不用品」を原料に、溶かして再生し、「アルミインゴット」と呼ばれる「金の延べ棒」ならぬ「アルミの延べ棒」をつくる工場。

アルミインゴットは自動車部品メーカーに納入され、再び自動車の材料として使われます。

それでは、いよいよ工場内へ。

アルミの原料となる「不用品」の種類に驚愕

道内各地から、役目を終え「捨てられたモノ」が運び込まれてきます。 広大な土地に、種類ごと山のように積まれる”ゴミ”たち。

ここではいかにも「ザ・働く車!」が大活躍。 クレーンゲームのように、大きな塊を「ぐわしっ」とつかんでは運び、を繰り返します。

はい、こちらがアルミリサイクルの「メイン原料」。 ぺしゃんこにスクラップされてますが、すごくお馴染みのアレ! そう、ジュースの缶などのアルミ缶です。 こんなに大量に捨てられてるんだ…としばし呆然。

同じスクラップでも、サイズがでかい! 自動車の車体やエンジン、ホイールのアルミ部分など、廃車リサイクルで生じた部品たち。

あれ、急に身近なモノが! 鍋・やかん・給食トレイなどの調理器具もアルミの原料になるんですって。

身近は身近でも、まさかこんなところでお目にかかるとは…! 「道路標識」も役目を終えたら、捨てられるんですね。

コレ、何だかわかりますか? 家に欠かせない「サッシ」の切れ端です。

意外なところでは「印刷版」と言われる、印刷で生じたアルミスクラップ。
実は、前職が雑誌編集の仕事だったので、「おぉ〜懐かしい!」。刷り上がる工程が垣間見られて、思わずテンション上がりました!

【独自取材】アルミリサイクル工場に潜入!再生加工の工程をレポ

ひと通り原料をチェックし、いよいよアルミ再生の工程を見て行きます。 ご案内いただくのは、工場長の山口悠樹さん。

工程①:原料を「レシピ」通りにそろえる

ん、工場長!「レシピ」って何ですか!? まるでこれから料理を作るみたいじゃないですか?

はい!こちらが特別に見せていただいた「レシピ」こと「作業指示書(配合設計書)」。

取引先の求めるアルミインゴットの”成分規格”に応じて、原料に使う材料の種類と、その配合を緻密に計算したものです。

さらに、この計算結果通りに作るのではなく、実際に作る途中でも成分を計測しなおし、最終的に求められた配合に仕上がるよう、細かく調整するのだそう。

まるで、お客様の求める味を追究し、繊細にレシピをつくり上げる料理職人!

こちらが、メインとなる原料置き場です。 レシピの「材料」にあたり、料理なら「鶏もも肉」「玉ねぎ」といったところでしょうか。

アルミ再生の”材料”は「アルミ缶」や「アルミホイール」。 見た目にも、かなりいかついですね(笑)。

おおっと! アルミ缶スクラップ、大さじ…じゃない、ブルドーザーの「シャベル1」(!?)、入りま〜す!

原料の種類ごとに、レシピ通りの重量かどうかを計測。材料を載せたブルドーザーごと”体重”を測ります。 必要な原料がそろったら、いざ、溶解炉へ!

工程②:「回転炉」で素材を分別、不要な成分を除去

こちらがお待ちかねの溶解炉…。あれ、ちょっと想像してたのと違ってました。ドラム式洗濯機、みたいな形?

これは「回転炉」。材料を入れてミキサー車のように回転して混ぜ溶かし、含まれる成分を調べ、不要な混載物を取り除きます。

実際に稼働すると、ド・ド・ド迫力なんですよ! ぜひ、こちらの動画をご覧ください。

工程③:お待ちかね!「溶解炉」で材料をドロドロに溶かす

さて、いよいよ待ちに待った「燃えたぎる溶解炉」にご対面! あぁ、「親指を立てて沈む」シーンが目の前に(感涙)!!

ザバアッッッ! 燃えたぎる炉の中に、大量の材料が投入されていきます。 あとは熱の勢いで、ガンガン溶かすのみ…と思いきや!!

そこに颯爽と現れた1台のフォークリフト。
前後に車を動かしながら、長〜い「へら」を縦横無尽に操り、入れた材料を優しく押し込んだり、たたいたり。「こんなしなやかな動き、見たことない!」

工場長の解説によると、「回転炉」で材料を溶かしてできた液体、通称「アルミの湯」を敷いた上に、原料をぷかぷか浮かせて溶かしているとのこと(料理で言う「湯煎(ゆせん)」のイメージですね)。

一気に材料を突っ込むと、温度が下がって溶解しにくくなったり、成分がわからなくなる恐れがあるため、繊細に「混ぜるワザ」が必要不可欠なのだそう。

へらを操る手元は高橋名人も脱帽の速さで、ゲーセンのダンスゲーム達人の目にも止まらなぬ鮮やかな手さばきのごとく(例えが古くてすいません…)!

このワザは、経験に基づく「勘コツ」を習得するしかなく、今作業中のこの方は、真似できない神業ゆえに「サイボーグ」と称されているそう…!

拝見できて、光栄です!!もう、ずーーーーーっと見ていたい!!

工程④:溶けたアルミを型に流し込み成形⇨冷まし固める

溶けたアルミのことを、現場の方々は「湯」と表現します。面白いですね。

「出湯(しゅっとう)」つまり溶けたアルミを流し出し、

ベルトコンベアーで運ばれる「型」に流し込み、

水に潜らせて冷まし固めたら、

アルミの延べ棒・アルミインゴットの完成!

と、簡単に言いましたが、ここでもやはり「職人ワザ」が炸裂!
溜まったアルミを流し出す際の「栓」の抜き方、湯を出す量、ベルトコンベアーの速度。 これらは「勘コツ」でしか調整できないのだそう。

「人間にしかできないこと」が機械を超越するって、AI化が進むこんな時代だからこそ、なんだかとてもグッときます。その分、ワザの伝承や工数など、困難も多いのかもしれませんが、尊くて誇らしい仕事だな、と思わず感じ入りました。

し、しかし…!
ここで今日一番残念なお知らせが…!

溶けたシュワちゃんが再生される、このクライマックスシーン(違う!)が、なんと今日は見られないのだそう。
「溶解炉で溶かす工程」と「出湯から成形する工程」は同時に行われないため…よく考えたらそりゃそうですよね…(涙)。

先ほどの画像は、実は稼働しているシーンをお借りしたもの。
これが、目の前に広がる現実の風景です。

ああ、インディ・ジョーンズの巨岩が転がってきそうな、このベルトコンベアーが動くことはないのか…。

きっと今、一緒に嘆いている読者のみなさんのために、実際に稼働している動画を投下します。
すすすごいです!ぜひご覧ください!

見たらさらに興奮して、これを生で見るためにもう一度この工場に行きたい!と今本気で思っています(笑)。

工程④:アルミインゴット完成!厳重に保管&チェック

完成したアルミインゴットは、湿気厳禁。管理の行き届いた場所で保管されます。

アルミインゴットの内部に空洞がないか、などの品質チェックを行い、基準に満たないものはやり直しとなります。

こうした厳しい品質チェックを通ったアルミインゴットは、主に地元の自動車部品メーカーに納入されます。

「道内で再生したアルミは道内企業へ」。
廃棄物の地産地消は、流通コストを抑えるだけでなく、輸送燃料も最小限に抑えられ、CO2削減にも貢献できる、いいことづくしなんです。

加工の過程でできた「灰」もムダなく再利用!

アルミ加工の途中では、副産物として「灰」ができます。 これも、余すことなく製鋼用の脱酸材や保温材に加工して再利用! 産業廃棄物は極力出さず、ムダなく使い切ることが大切ですね。

「アルミリサイクル」工場見学を通して見えたもの

溶解炉の迫力にワクワクした「アルミリサイクル」の現場。

非日常の体験に興奮しながらも、最後に一番心に残ったのは、「へら使いの神業」など、機械を超えた職人のワザ。 材料や取引先からの求めに応じた「レシピ」を緻密に作り上げる工場長のワザ。

環境を守るリサイクルの現場は、替えのきかない尊い仕事を魅せる「職人たちが光る場所」でした。

撮影/井上源太郎

取材協力/株式会社鈴木商会  

この記事を書いた人
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ヨムーノ 編集部

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