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【防災備蓄】専門家に聞く"家庭で準備しておきたいもの”在宅避難も視野に入れて

  • 2024年02月26日更新

こんにちは、くふうLive!編集部です。

もしも災害が起こって流通がストップしたら?電気や水道が止まったら?
そのために何をどう備えておけばいいのでしょう? 

水や食料は最低3日分と言うけれど、本当にそれだけで十分でしょうか? 
「ローリングストック」「防災備蓄」ってよく聞くけどどうやるの?

というわけで今回は、今、家庭で準備しておきたい「防災備蓄」について、備え・防災アドバイザーの高荷智也先生に、詳しく教えてもらいました。

※本ページはアフィリエイトプログラムを利用しています。

「水・食料の備蓄と同じだけのトイレの準備は重要です!」

監修:高荷智也
ソナエルワークス代表。備え・防災アドバイザー/BCP策定アドバイザー。“自分と家族が死なないための”家庭用防災の情報発信と、企業向けBCP策定をテーマとしたコンサルティング活動を行う。実践的でわかりやすく、楽しいアドバイスで人気。メディアにも多数出演実績あり。運営サイト:備える.jp
高荷智也

教えてくれたのは、備え・防災アドバイザー/BCP策定アドバイザー 高荷智也先生。

防災グッズも対策も、すべて自分で試さないと気が済まない防災マニアでもある先生。
防災備蓄では非常用トイレを新聞紙で代用する実験で大失敗。日常備蓄の限界を突破するため、数カ月の備蓄に対応できる独自の日常備蓄を考案&実践中!

防災備蓄とは「命を守る環境づくり」

防災備蓄とは、さまざまな災害によって、電気・ガス・水道、通信、流通などのライフラインが停止した状況のための備えであり、死なないための環境づくりのこと。

防災備蓄が必要な理由①災害関連死を防ぐ

災害関連死とは、災害の直後に命は助かったけれど、その後の避難生活で命を失うこと。避難生活の環境やストレスによって持病や体調が悪化したりするのが原因です。

東日本大震災では全体の約17%(約3,700名)が災害関連死であり、今や災害関連死は災害の主要死因のひとつ。避難生活をよりよい環境にするための準備が必要と言えます。

防災備蓄が必要な理由②外出による危険を防ぐ

出典:ソナエルワークス

大都市で大地震が起きた場合は、徒歩帰宅で落下物に当たるなど死亡するケースがあります。
また、大雪などで物理的に外出ができないケース、それにより流通やインフラがストップしたり、感染症パンデミックが発生して外出できなくなるケースもあります。

外に出られない間、生き延びるための備えが必要と言えます。

自宅で「在宅避難」をするのも一つの選択肢に入れましょう

いざという時、避難所は頼りになるのか?

災害が起きたら避難所に行くというイメージがありますが、自宅が無事であれば避難所に行く必要はありません。

そもそも避難所の定員は、東京都の場合でも住民の約2割分しかなく、大規模災害が起きたときの避難所の環境は相当悪いものになります(避難所は1週間程度の避難生活を想定して作られているからという背景もあります)。

また、備蓄分も避難所に入れる定員の人数分だけしか用意されていないのが現状です。

避難所に行かずに家で避難生活をする=「在宅避難」

在宅避難とは、避難所へ行かずに自宅で避難生活すること。
避難所は不便で不衛生な環境になりがちですし、物資もぎりぎり、プライバシーも十分に保たれません。災害弱者と呼ばれる高齢者や障がい者、乳幼児や子ども、ペットには特にストレスのかかる環境になります。

内閣府では、新型コロナウイルス感染症に関連して、避難所が過密状態になることを防ぐため、可能な場合は親戚や友人の家などへ避難を検討するように周知しています。
出典:避難所における新型コロナウイルス感染症への更なる対応について

なお記事公開時、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴い、避難所の感染防止対策も課題となっております。実は避難所における感染症対策は平時でも課題であり、夏場であれば食中毒など、冬場であればインフルエンザの集団感染などが問題となります。

しかし「密」になりやすい避難所での感染防止対策は困難です。そのため、命に関わるような状況にならない限りは、できるだけ「在宅避難」を行い、そもそも避難所へ行かないようにすることが何よりも重要になります。

避難所へ行くことで問題が生じるならば、在宅避難をする準備をしましょう。そのため行うのが、生活に必要な物資を備蓄する「防災備蓄」です。

家庭の防災備蓄に必要なものって何?

家庭の防災備蓄は「災害後に命を守る」ために行うこと。
必要なものは大きく3つのカテゴリーに分けられます。

①個別用品
それがなければ生活できない、メガネなど体の一部や薬のこと。
避難所ではもらえません。

②インフラ代替品
電気・ガス・水道・トイレの停止に備えた代替手段。

③生活物資
1週間分の水・食料・日用品を「日常備蓄」で準備。

家庭の防災備蓄に本当に必要な量&理由とは?

家庭での防災備蓄に必要な量は"最低3日分"と言われていますが、近年の状況だと"できれば1週間分"は必要、可能なら数カ月分あるとより確実です。

最低3日と言われる理由は、災害から3日間は人命救助が優先されて生き延びた人への支援活動は後回しになるからです。
最初の3日間は自分たちで“死なないための環境”を準備しておく必要があります。

防災備蓄①個別用品

避難所でも在宅避難でも考え方は同じです。家族にとっては必要だけど、避難所では配布されづらい、支援物資として入手しづらいというものを重点的に用意しましょう。

用意しておきたいものの例

・メガネ、コンタクトレンズのような体の一部
・持病の薬の予備、常備薬
・お薬手帳の写真やコピー
・非常用歯磨き(水のいらないペーパー歯ブラシなど)
・乳幼児、介護用品(おむつ、液体ミルク)
・ペット用品(フード、トイレ)
などです。

【用意する量の目安】
なるべく1週間分、可能なら数カ月分。
ただし赤ちゃん用品や介護用品、ペット用品などは1~2カ月分あると安心です。
後述の「日常備蓄」を参考に、ふだんから消耗品は在庫を多めに持っておくといいでしょう。

防災備蓄②インフラ代替品

ライフライン復旧には時間がかかる

大規模な災害が起きた場合、ライフラインの復旧には時間がかかるため、代替品を準備しておく必要があります。

例えば首都圏直下地震が起きた場合……

  • 電力:復旧までに約1週間
    (直後に5割が停電し、1週間継続の見込み、全面復旧には1カ月)

  • 水道:復旧までに約1カ月
    (1週間で7割復旧、1カ月で9割復旧。ただし電気が止まると水道も止まる恐れあり)

  • ガス:復旧までに約1カ月
    (電気が止まるとガスも止まる恐れあり)

という被害が想定されています。電気が止まると全滅する覚悟が必要です。

用意しておきたいインフラ代替品①非常用トイレ

トイレを使える期間がそのまま、在宅避難が可能な期間になります。
ですので、最低1週間分は絶対用意しておきましょう。

【用意する量の目安】
1人5回×7日=35回分の量になります。
4人家族なら140個です。

ちなみに先生はビニール袋にちぎった新聞紙を入れて非常用トイレの凝固剤代わりになるか実験してみたところ、新聞紙では代替できないことがわかりました!
汚れた新聞紙まみれの汚水ができただけで、逆に状況が悪化したそう。
高価なものではないので、必ず専用の非常用トイレを用意しましょう。

例)驚異の防臭袋 BOS非常用 簡易トイレ セット(Amazon)

人間は「入れたら出る」。
水、食料の準備期間と同じ量のトイレを忘れずに!

▼動画で防災トイレの使い方を解説
意外と忘れがち!水と食料だけじゃない「無いと大ピンチ!」防災用トイレ活用術【動画で解説】

用意しておきたいインフラ代替品②カセットコンロ&ガスボンベ

例)イワタニ カセットフー 達人スリム(Amazon)
例)イワタニ カセットガス(Amazon)

カセットコンロとガスボンベがあれば、レトルト食品だけでなく、家にある食材を食べることができるようになります。

冬場などは暖かい食事を食べられるのは心身の健康にもいいですし、夏場は感染症対策として、生ものを避ける意味でも重要。何より食材に火を通せるだけで避難生活のグレードが上がります。

【用意する量の目安】
ガスボンベは1本で約1時間燃焼します。
1~2本/1日×7日=7~10本準備しておくといいでしょう。

ちなみにガスボンベは消費期限が7年くらいあるので、1年に1本使えば7本持っていても期限が切れることはありません。

防災備蓄③生活物資

例えば大地震などで道路が破壊されたら、流通も1週間程度止まると想定されるので、食料品、日用品などの生活物資も備えておく必要があります。

「日常備蓄(ローリングストック)」のススメ

日常備蓄とは、避難生活時だけでなく、いつもの生活で使えるものは普段から多めに買っておき、使いながら備えること。

やり方は……

  1. いつも食べている食料、使っている日用品の買い置きを多めにする
  2. 賞味期限、消費期限が近いものから順番に食べる、使う
  3. 全て食べ切る、使い切る前に買ってきて補充する

【メリット】
・備蓄品に慣れることができる。“いつもの食事”は非常時のストレス対策にも有効
・余計な出費不要。先に多めに買っておくだけなので、高価な非常食などの出費がかからない
・期限管理が不要。普段から消費して入れ替えるため、期限切れチェックの手間が省ける

用意しておきたい日常備蓄①水

水は飲料水と生活用水合わせて1人1日あたり3リットル使います。

【用意する量の目安】
飲料水としては2リットルあればいいので、2リットル入りペットボトルが6本入った箱が1~2箱あれば1週間分まかなえます。

【ポイント】
ふだんペットボトルの水を飲まないなら、お茶やジュースなど、水じゃなくてもOK。何か飲める液体を多めに買っておきましょう。ただしアルコールはやめたほうがいいです。

また、手洗いなど生活用水をウエットティッシュで代替してもかまいません。

用意しておきたい日常備蓄②食料

【用意する量の目安】
1日3食/1名を1週間分 賞味期限の長いものを準備しましょう。

【ポイント】

1週間分はふだん食べているものを多めに準備。
先生的にはちょっとイイもの(1食200円のパスタソースなど)を準備しておくと、日常備蓄の消費の際や避難生活の気分が上がるのでおすすめだそう。
また、3日分は非常食を中心に、そのまま食べられるものを準備しておくと、緊急避難時にも役立ちます。

用意しておきたい日常備蓄③衛生用品・生活用品

ティッシュ類、洗剤類、石けん、歯磨き粉、生理用品など。歯磨き粉は水のいらないペーパー歯ブラシなどを用意しておくと便利です。

【用意する量の目安】
ふだんから1~2週間分の在庫はあるという家庭が多いと思うので、いつもの在庫を増やせばOK。「防災用に買うのは最小限」という意識で大丈夫です。

用意しておきたい日常備蓄④避難所で手に入らないグッズ

常備薬、赤ちゃん用品、介護用品、ペット用品など、前述の「防災備蓄①個別用品」に当たります。

【用意する量の目安】
1~2カ月分の備蓄
流通が回復しても入手できない恐れがあるので、多めに備えておきましょう。

【ポイント】
赤ちゃんのおむつはサイズに注意。日常的に使うとはいえ、2カ月先に使うかもしれないと考えると、少し大きめのものを検討するといいでしょう。

日常備蓄の管理がラクになる「宅内仕送り箱」はいかが?

コストをかけず、食料品をムダにせずにできる防災備蓄の方法「日常備蓄」ですが、1カ月分の量を超えると、とたんに賞味期限の管理が難しくなります。

そこで先生が考案し、実践しているのが日常備蓄2.0とも呼んでいる「宅内仕送り箱」。 たくさんの量、種類の日常備蓄の期限管理をラクにする方法です。

出典:ソナエルワークス

宅内仕送り箱のやり方

①賞味期限が1年以上の食品を準備
②1カ月で食べきれる量を箱に入れる
③この箱を10個程度作る
④毎月1箱食べる
⑤同じような食品をまた詰める

【ポイント】
今の自分から10カ月後の我が家へ仕送りするイメージです。なので、ちょっとだけいいもの、みんながすすんで食べたくなるようなものを入れておくのがおすすめ。
ひと箱に入れる量は、ムリなく蓄えられ、3日~1週間などでムリなく食べきれるような量を目安にするといいでしょう。

段ボール箱ではなく、クリアケースでもOK。10箱を一カ所に保管しなくても、箱を開ける順番が把握できていればバラバラでも大丈夫です。また、慣れてきたら缶詰とカレーだけはキッチンにストックするなどしてもいいでしょう。

「備え・防災は日本のライフスタイル」一定量の物資を備えるのが大事

「ものを持たない暮らし」というのは、100%流通が動いている状態で成り立つもの。災害大国日本では、いつどんな災害が起こるかわかりません。災害で流通が止まればお店から物がなくなってしまうので、一定量の物資を備えておくことが重要です。

また、在宅避難が成り立つためには、家の中が安全であるのが大前提です。家の中の地震対策については、こちらの記事も参考にしてください。
防災の専門家に聞いた!今、絶対やっておきたい「地震対策の基本」

次回は「非常持ち出し袋」についてご紹介します。

防災の専門家に聞く!「非常持ち出し袋」の正しい準備方法【中身・詰め方・使い方】

この記事を書いた人
ライター
田谷峰子

主婦向け生活情報媒体をメインに、ときどき旅記事なども執筆。
日々の生活を楽しく豊かにハッピーに送るためのヒントをお届けしていきます。

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