時代に新風を吹き込む建築家たち

2013.04.19

コストマネジメントも建築家の仕事

神山治範(エスサイクル一級建築設計事務所)

「自然素材の家」というと、憧れを感じる一方、予算がふくらみそうな気もする――。そんな人も多いだろう。このような不安に対して、神山氏は、建築家が長期的な視野でコスト管理をすることの重要性を語る。背景にあるのは、快適で長寿命な「昔ながらの当たり前の家」をつくりたいという想いだ。

インタビュー、構成:建築家O-uccino編集部

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――事務所のある愛知県・常滑市はどんなところですか。

陶器や陶芸の街として知られています。中部セントレア空港も近く、交通も便利です。私はこの街で生まれ、小さいころに大工さんに憧れて、建築の道に進んで行きました。

――建築のおもしろさとはなんでしょう?

毎日作っているうちに、目に見えて出来上がっていくおもしろさですね。学校を卒業して、建築事務所に勤めていたときは、病院や工場、マンションなど、大きい建物を担当することが多かったのですが、だんだん、住宅を作りたいという思いが強くなって自分の事務所を設立しました。

――どんな家をつくりかったのですか。

ひとことで言うと「昔から当たり前に使われてきた無垢の木や、土、紙からできた家」です。現代では、ビニールクロスなど石油系の材料で家を作るのが主流になっていますが、寿命や機能性の面で、昔ながらの家の方が優れていることも多い。
たとえば、自然素材だと家の中の湿度が自動的に調整されます。その結果、過ごしやすい体感温度になり、建物の寿命も延びるわけです。そんな「当たり前の建物」をつくりたいと思っています。

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――いい素材を使うと予算がかかるということはありませんか。

初期投資が大事だということはいつもお伝えしています。何十年も住むことができメンテナンスも少なくて済むなら、トータルのコストは安くなるわけです。
また、予算以外にも建築には、施主の要望・法律・敷地・環境など、さまざまな条件があります。それをすべてクリアして、ベストに近づけるように考えるのがやりがいを感じるところです。
なかでもコストマネジメントはすごく重要ですね。お客さんの要望でも、コストが厳しいときは、お客さんと話し合って、本当に必要なものかどうか話し合ったり、こちらから代案を示したりします。コストに見合わない要望なら、ブレーキをかけるのも建築家の役目だと思っています。

――印象に残っている住宅はありますか。

独立して初めて手がけた愛知県・春日井市の家ですね。隣の家が南にあるせいで、1階に光が入ってこないので、当初、リビングを2階に作ることを提案しました。ところがお客さんは「1階がいい」と言う。困りましたが、最終的に、吹き抜けとガラスを上手く使い、1階に明るいリビングをつくることができました。
この家は今、お客さんが引っ越したので当事務所のモデルルームになっています。ご連絡があれば、いつでもお見せできます。「こんなに明るくなるとは」とお客さんが喜んでくれたリビングを多くの人に見てほしいですね。

神山治範(エスサイクル一級建築設計事務所)

photo 1967年 愛知県常滑市に生まれる
1989年 愛知工業大学工学部建築学科卒業
1989年~1994年 バウハウス丸栄入社(店舗設計)
1994年~2004年 都市総合研究所入社(住宅・集合住宅・商業施設・公共施設・福祉施設等設計)
2004年 エスサイクル一級建築設計事務所設立

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