時代に新風を吹き込む建築家たち

2013.02.08

考え抜くために必要な“柔軟さ”

佐藤宏二(株式会社アルゴ)

施主からよく言われることは? と聞くと、「うーん……、たまにですが、全く別なデザインもするのですねと言われることがあります。都合よく解釈すればデザインバリエーションがあるともとれますが」と返ってきた。「独立前は駅、公民館や公園など、公共建築に携わることが多かったので、和風、洋風問わず相手に応じて自分の考え方を調整するのは慣れてます」。建て主の要望も、自分のスタイルも、絶対視せずに考え抜く。さまざまな角度から物事を見る柔軟さ。執着をもたないこだわりのなさ。そんな佐藤氏の姿勢は、作品だけでなく会話にも表れている。

インタビュー、構成:建築家O-uccino編集部

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――建築の道に進んだきっかけから教えてください。

生まれは青森県弘前市です。母が日本画を描いていた影響もあってか、子供の頃から図画や工作が好きでよくねぷたも作ったりしてました。絵も立体も好きだったので大学進学の際は美術の方向も考えましたが、建築の方が両方を具現化できていろんな仕事に活かせるのではないかと思い、上京して建築の道に進みました。

――どんな家を作りたいと思っていますか。

大前提は「長く住める家」ですね。単に傷まないということだけではなくて、時間が経つことによってだんだん味わいが出てきたりといったことです。極力自然素材の木や漆喰を使って、経年変化で風合いがよくなっていくような家を作ろうといつも思っています。

――施主の要望はどのように活かすのでしょう。

要望はすべてお聞きしたうえで、それらをどう生かすか建て主と相談しながら決めています。建て主の要望は第一ですが、要求をガンコに譲らないより、建築家のやる気をくすぐって良い案を出させるのもいい方法だと思います。どんなふうに住みたいか、漠然とでも聞かせていただければ、こちらは違った視点でも考えますので、ある程度“料理”は任せてもらえるとこちらもより力が入ります。

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――建築家の腕が問われるわけですからね。

そうですね。必ず別の視点があることは、コンペに参加してみるとよく分かります。敷地や予算など同じ条件のなか、自分としては「これだ」と思った案を出しても、他からは全く別な案が出てくる。同じように、建て主の要望だからといって全てをそのまま受け入れるのが最善とはならない場合もあります。

――よかったと思うのはどんなときですか。

2010年に宮城県石巻市に建てた家のことは印象に残っています。完成後半年で東日本大震災の津波で被災するという災難に見舞われました。

周囲の家は流されたり、柱が傾いたりしていましたけれど、構造体は何の問題もなく無事でした。新築したばかりの家が傷み泥だらけになってしまったのは残念ですが、もとの家のままだったらそれだけでは済まなかったかも知れません。家がそこに暮らす人の命を守れたことが何よりうれしいと思いましたね。

佐藤宏二(株式会社アルゴ)

photo 1979年  日本大学理工学部建築学科卒業
1979~84年  株式会社西尾建築設計事務所
1984~86年  株式会社類設計室
1986年  未来工房一級建築士事務所設立
1991年  株式会社アルゴ設立

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