時代に新風を吹き込む建築家たち

2012.07.27

「古いものの良さ」を伝えたい

伊阪洋(空間設計)

古民家や古材と聞くと、すきま風が入るような家や、ガタつく家具を思い浮かべるかもしれない。しかし、伊阪氏の言葉に上ると、「古」の文字は、「趣のある本物の素材」というポジティブなイメージを持ち始める。環境にもいい「古いもの」について話を聞いた。

インタビュー、構成:建築家O-uccino編集部

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──近年のテーマは環境だとうかがいました。

新築以外に、リノベーションの仕事も多くなってきました。また年を重ねる毎に、自然と共存するような住宅を作っていきたいと考えています。高気密・高断熱な家ではなく、自然環境と調和するような住み方の提案ですね。

ただ、デザイン的な面では、あまり自然素材だけにこだわるとおもしろくないので、アクセントとして工業的な素材も入れて変化を出すようにしています。手がけたマンションのリノベーションでは、堅牢でシャープなステンレスキッチンと無垢のフローリング、あるいは古材の板で、自然素材と工業製品との対比が楽しめるようにしています。

──リノベーションは環境にもいいですね。

古都・奈良県での仕事が多いこともあって、古民家再生や古材の再利用はよくやります。新築する場合でも、古い板を使ったり、古いタンスをゲタ箱に作り変えたりして、使えるものはできるだけ使う。

単純に「ものを大事にしたい」ということもあるのですが、古いものの方が、趣があるし、本物のいい素材を使っていたりすることもあるわけですね。

また古民家は、風通しがよく、縁側や土間、中庭があったりして、はじめから環境と調和したプランニングができているのがメリットです。

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──古くても、いいものはいい、と。

以前、60代くらいのご夫婦が二人で暮らす家を、古材を使って設計させてもらったことがありました。ご主人の書斎、奥様のアトリエを作り、居間でつながる。趣味人のお二人がほどよくコミュニケーションをとりながら暮らせる空間です。

年配の方の、これからのための新居をつくるのも経験のないことでしたし、施主ご夫婦の感性も豊かで鋭く、自分たちを大事にしている、という印象で、非常に勉強になりました。

僕たちの世代は、子供のころに自然と共存した暮らしを経験していますが、今の人たちはそんな経験がありません。古い生活スタイルの良さもこれからの若い人にも伝えていきたいと思っています。

伊阪洋(空間設計)

photo 1964年 三重県生まれ
1987年 大阪工業大学建築学科卒業
1987年 株式会社澤井建築事務所
1994年 株式会社小松義博建築都市設計事務所
1995年 伊阪洋建築事務所開設
2004年 空間設計集団上海事務所設立
2006年 空間設計共同設立

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