時代に新風を吹き込む建築家たち

2011.7.8

想像以上の「サプライズ」を届けたい

村上千賀子(えぬぷらす)

家づくりの目的とは何か。快適で便利な暮らし、家事や掃除のしやすさ、精神的な満足、見た目の美しさ……、いろいろな要素はあるけれど、一言で言うと「幸せを紡ぐ場づくり」だろう。建物の美しさや性能だけでなく、「暮らしの幸せ」を手伝いたい――村上千賀子さんは、そんな考えを持つ建築家の一人だ。

インタビュー、構成:建築家O-uccino編集部

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──建築の道に入ったきっかけは何ですか。

子供のころの体験が大きいですね。私は和歌山の黒江塗の職人の町で育ち、家族も漆器の絵付けをしていました。私が学校から帰ると、母はいつもお椀などに絵付けをしていましたし、私のお雛様にも母が顔を描いてくました。

高校生の頃はファッションにも興味があり、服飾と建築とどちらに進もうか悩みましたが、母のすすめもあり、大阪市大で建築を勉強することにしました。やりはじめると、すごく夢が広がる仕事だとわかりました。

──建築家として、どんな仕事をしていきたいと思っていますか。

仕事の目標をひとことで言えば「幸せを届けたい」です。建築家は一見、建物という「箱」を届けているように見えますが、実は、その空間の中での暮らしそのものを届けています。ですから、建物そのものの価値というよりは、空間の質にこだわりたい。
「世界にひとつだけの自分の家を建てた」と満足できる家、そして家族みんなが、そこで暮らすことでハッピーでありつづけるような家が理想です。

──具体的には、どのようなことに気をつけていますか。

住宅は特にですが、要望に100%答えるのではなく、「きっと5年後10年後には、こうしておいて良かったと思うようなこと」を考えてお伝えします。

子育てを始めたばかりの施主様には、いつでも親子がなにをしているか、気配でわかるような設計を心がけます。大人もいずれ高齢になるわけですから、のちのちリフォームしやすいように設計する、といったことも考えます。

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──打ち合わせはどんなことに気をつけていますか。

せっかく施主様がプロに頼まれたのですから、想像通りではなく想像以上の提案をお届けしないといけないと思っています。常に、いい意味でのサプライズが必要だ、と。打ち合わせで、要望をどう引き出し、どう捉えるか。話にしっかり耳を傾けるのはもちろんですが、話の内容だけでなく、そのときの様子や夫婦の関係などにも目を配り、発言されなかった隠れた要望もくみ取り、それをどう解釈するかも、力量が問われると感じています。

──リノベーションについてはどのようにお考えでしょう?

実はリノベーションが大好きです。ファイトが湧くというか、想像できないくらいガラッと変えてみたいと思うから。「こんな古い家、どうしようもないでしょう」と話を持ってこられる方が多いのですが、リノベーションされた家を見ると、とても驚かれます。そのときの反応を見るのが楽しみです。

また、私はアメリカに本部のあるIFDA(インターナショナル・ファニシング&デザイン・アソーシエーション)という協会の会員で、その活動のひとつとして日本で老朽化した建物を部屋ごとに再生するプロジェクトにも参加中です。今まさに日本にリノベーションブームを起こそうとがんばっています。

村上千賀子(えぬぷらす一級建築設計事務所)

photo 1957年 和歌山県海南市生まれ。 1980年 大阪市立大学生活科学科部卒業。 1983年-1997年 空間工房都市建築設計事務所勤務。 1997年アトリエクウ一級建築設計事務所 設立。 1998年 えぬぷらす一級建築士事務所に改称。

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