時代に新風を吹き込む建築家たち

2011.4.18

人を理解することから家づくりは始まる

竹石明弘(Atelier CU.一級建築士事務所)

「どんな家を立てたいですか」の前に、まず食事でもどうですか――。竹石氏の家づくりはそこから始まる。一見、遠回りなようだがそうではない。「カジュアルな付き合いを通じてしか、互いに人間性を理解することはできない」という真摯な考え方がそこにはある。

インタビュー、構成:建築家O-uccino編集部

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──建築家になろうと思ったきっかけは何ですか。

最初から建築家になろうと思っていたわけではないんです。学校を出て設計事務所に勤めていて、そのまま会社員として設計の仕事を続けていくんだろうと思っていました。しかし、事務所で、初めて住宅設計の仕事を受け持って、1年間かけて完成させたとき、施主の奥さんに泣きながら感謝してくれたんです。「おかげで理想の家ができました」と。このとき初めて、建築家になりたいと強く思いました。人間の一世一代のプロジェクトに参加できること、クライアントの人生そのものに関わっていくといった人間くささのある面に強く惹かれたからです。

──それで独立を?

独立を決めたのは、友人の家の設計を頼まれたときです。彼は建設会社の経営者なのですが、互いに専門家ということもあって、打合せはこれ以上ないくらい白熱しました。毎晩一緒に食事して、理想の家の姿、それをどう建てるか、ひたすら話し合いました。ときどき衝突することもありましたが、それだけ本気で、互いのポリシーをぶつけ合って家をつくったからこそ、いい家ができた。このとき徹底的にコミュニケーションした体験が、建築家としての原点になっています。

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──施主さんとのコミュニケーションではどんなことに気をつけていますか。

いきなり「どういう家に住みたいですか」という聞き方をしてもなかなかうまくいきません。どうしても表面的な話になっちゃういますからね。それより、友人知人までとはいいませんが、施主様のパーソナリティーを知りたいと思います。一緒にお食事出来れば最高です。

──なるほど、ダイレクトに家の話をするのではなく、ですね。

そう。世間話をしているうちに、好きなものや趣味、家族がどんなふうに暮らしているかということがわかってきますから。たとえば「本当に犬が好きなんだなあ」とわかったら、施主さんが犬と遊んでいるシーンをイメージして、それに会うような家を考えていく。「お酒が好きなんだなあ」とわかれば、「ここで一杯やれたらいいだろうな」という間取りなんかを考えるわけです。

──信頼されることが大事ですね。

最終的に建築家選びは、どんな家をつくれるか、つくってきたかより、「気が合うか」だと思います。互いに人間性を理解するためには、依頼者と受注者という関係では難しい。建築の世界は、一般人からすれば謎めいているし、大金を払って任せるのだから本物の信頼関係が必要です。パーソナリティーを理解してからやっと「こういう家に住んでもらいたい」という発想が出てくるわけで、まず、その人のことをとことん知らないと家づくりはできません。人間性を重んじて、ひとつひとつの仕事を丁寧にやっていくことが大事だと思っています。

竹石明弘(Atelier CU.一級建築士事務所)

photo 1991年  東洋大学 工学部 建築学科卒業。
1996年  一級建築士取得。
設計事務所等を経て2005年  アトリエシーユー一級建築士事務所共同設立。

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