時代に新風を吹き込む建築家たち

2013.04.05

「素人」の意見にヒントがある

山田辰矢(建築設計事務所アトリエSY)

建築家は専門家、施主は素人――。立場の違いはハッキリしている。「一緒に家を作る」といっても両者の壁は消えない。ただ、その「違い」を活かして、その人だけの設計への発想にしようと考える建築家もいる。

インタビュー、構成:建築家O-uccino編集部

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――はじめに、建築家になったきっかけから教えて下さい。

中学生くらいに「自分の家をつくりたい」と思ったことがきっかけです。そんな想いから、建築系の学校に進み、卒業したあとは、ゼネコンやハウスメーカーに勤め、独立して今に至ります。

――個人事務所を作った理由は何でしょう?

最大の理由は、「お客さんそれぞれに合う住宅を提供したい」ということですね。設計にあたって、こういう家族構成ならこれ、こういう敷地ならこれ、といった先入観を持たず、「本当に住み手に合う住宅をゼロから考えたい」という想いが強くありました。

――そのためには施主を理解することが必要ですね。

打ち合わせのとき、ある程度「こういう家にしたい」ということが決まっているお客さんには、そこをさらに詳しく聞いていきます。反対に、まだ模索中の方の場合は、いろいろなテイストのデザインを紹介しながら、より慎重に進めます。決めつけず、時間をかけて、丁寧に探っていくわけです。

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――その上で、提案を出す、と。

最終的な決定の前に、打ち合わせの課程でも、さまざまな提案を聞いてもらいます。そんなふうに、何度も何度も「答え合わせ」をして、お客さんの理想に少しでも近いものを導き出していくわけです。
提案するとき、先入観は持たないようにしているのですが、気がつかないうちに思い込みを持ってしまっていることもあります。そんなときでも、お客さんの「素人」としての意見を聞くことで、また違う発想ができることもよくあります。

――打ち合わせではどんなことを聞きますか。

建築のことも聞きますが、雑談も大切ですね。雑談に表れるその人の趣味や嗜好、価値観の中に、設計のヒントが埋まっています。それを理解するのは、一回や二回では難しいので、毎回、時間をかけてお話させていただきます。
やむを得ず、プライベートなことを聞いたりすることもあります。そんなときは、まず私自身のことを包み隠さず話したりして、できるだけ同じ立場で人間関係を築くことを心がけていますね。

――印象に残っている家づくりはありますか。

友人の家を手がけたことは、いい経験でした。建物として納得のいく設計ができたことだけでなく、「言いたいことをなんでも言う」といった踏み込んだ打ち合わせができたからです。
気心の知れた人間だけでなく、どんなお客さんとでもそんな打ち合わせができるよう、努力していきたいと思います。

山田辰矢(建築設計事務所アトリエSY)

photo 1975年 愛知県名古屋市生まれ。一宮工業高校建築科卒業。卒業後、大手ハウスメーカーの注文住宅の企画・設計や分譲住宅の企画・設計を経て、 2009年アトリエSY設立。

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