時代に新風を吹き込む建築家たち

2017.6.7

「好き」を守って、ぴったり仕立てる

トリーニ ヤコポ(スタジオドディチ)

イタリア人の建築家と聞くと「変わった建物をつくる人なのでは」と思うかもしれない。しかし、ヤコポ氏はこういったイメージとは反対のタイプだ。家づくりのモットーは、「お客さんに合わせてぴったり仕立てること。これから家づくりをする人には、これが好き!という気持ちを大切にしてほしい。自分の世界を持っている人が他人も尊重できるのだから」と力強いメッセージを送る。

インタビュー、構成:建築家O-uccino編集部

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――ご出身はイタリアですね。

トリノ生まれです。父も母も設計士で、小さいころから建材のサンプルで遊んだりしていました。
しかし、若いころは反発心から「親と同じ道には行かないぞ」と思っていた。最終的に、やっぱり企画や物づくりは大好きで、建築の道に進んだわけです。
ただそれでも親の事務所で働いたりするのはイヤだったし、自分の好きな仕事をするチャンスも求めていたので、大学を卒業後、渡米してニューヨークの設計事務所で働きました。

――日本にはどういったいきさつで?

「ニューヨークに住んでいたとき、メトロポリタン美術館で日本の陶器、掛け軸などを見て「日本の美のセンスはすごい」と思いました。これが私と日本との出会いです。シンプルで奥が深い。そんな日本に憧れて、日本にやってきました。東京で仕事を探しているうちに神戸の事務所を紹介してもらい、この神戸で働くことになりました。1998年のことです。
日本で暮らしてもうすぐ20年。この事務所を設立して今年で14年目になります。

――こちらでの仕事はいかがでしょう?

アメリカでも日本でも、自分の作品をつくるのではなく「お客さんに合わせて、ぴったり仕立てる」というポリシーは変わりません。お客さんのエネルギーの源になるような家をつくるために、お客さんの声をしっかり聞き、私の発想を加えてチャレンジします。

――要望はどんなふうに取り入れていますか?

お客さんの考え方に応じて、こちらの考えも柔軟に切り替えていくのが大事だと思っています。
たとえ常識から外れているようなことでも、その「常識」というのは、ただ多数派がそうしているというだけのことだったり、国によって違ったりする。考えは人それぞれ違っていていいんです。私はその人の世界観を大事にしたい。専門家としてガイドはしますが、基本的にはお客さんに合わせてアイデアを出していきます。助産婦さんに近いイメージで施主様らしい家を生む手伝いをします。

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――日本での家づくりについてはどうお感じでしょうか。

お客さんに言いたいのは「もっと自信を持ってほしい」ということですね。
日本の場合、打ち合わせを重ねているうちに、当初のプランからだんだん無難な方向に入っていくことがよくあります。みんなの意見を聞いたりしているうちに、自信がなくなって「やっぱり普通にしてください」みたいな話になってくる。
そんなことにならないよう、できるだけお客さんの心をケアするよう気を付けています。
最初の要望に込められた「これが好き!」という素直な気持ち。それを全力でサポートするんです。お客さんの本当の姿、その人らしさ、その人だけの世界といったものを最後まで守り続ける。
そうすることで、お客さんのための「ぴったり仕立てた家」が実現できるのです。

トリーニ ヤコポ(スタジオドディチ)

photo 1971年 イタリア・パヴィア市生まれ
1993年 デンマーク、Aarhus School of Architectureへ留学
1994年 イギリス、Oxford Brooks University-Joint Center for Urban Designへ留学
1995年 イタリア、University of Torinoで建築学士取得
1996年 University of Torinoで講師として建築デザインを教える
1996年-現在 イタリア、トリノ、Studio UNO s.r.l.とのコラボレーション活動
1996-98年 アメリカ、ニューヨーク Berzak Gold Architecture所属
1998-2001年 神戸Team Zoo-いるか設計集団所属
2001年-現在 イタリア建材、インテリア装飾品の商品開発および輸入販売
2003年-現在 一級建築士事務所「有限会社ドディチ・ドディチ」設立
(2010年より「スタジオドディチ」に改名)
2011年 一級建築士資格取得

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