建築家・星名岳志 星名貴子さんのブログ「その家を買う前に。」

その家を買う前に。

2014/06/14 更新

新築の狭小木造3階建て住宅の購入を計画されている、若い方々にご提案です。まだ、買わないでください。
ある日、ポストに入っていた不動産会社の土地販売の2色刷りの安いチラシ。僕にはそんな予定はないのですが、なんとなく眺めてみました。広い敷地を小さく分割している土地の図面と3階建の住宅の間取り図が小さく載っています。建築条件付き売地とのこと。

売る側にも買う側にもかなりニーズがあり、知人やお客様のこのタイプの住まいにご訪問させて頂いたことがあります。それにしても、このチラシの参考プランはひどいですが、ものすごい安売りをするのですね!どんな住まいになるのでしょうか…想像したくないですね。
ずっと昔からこのような住宅は建築されていました。売る側の事情がありますから建築条件付き売地がでることは仕方がないことです。でも、どうしてコレを『買う人』がこんなにいるのかな〜と考えてしまうのです。
例のチラシの条件をもう一度見てみましょう。
北側に道路があります。玄関も北側。南側には間近に隣の建物があるのでしょう。間口は6メートルしかなく、隣地に挟まれているので東西の隣の建物との距離は1メートルぐらいになってしまいます。さらに、一戸建てだから車庫も欲しい…。難しい条件ですよね。
解答の例として参考プランをみてみます。なんと?!4LDK、ウォークインクローゼットも2つ、収納もたっぷり、床暖房、食洗機、バリアフリー、さらにフリープラン?!…素晴らしい!!!素敵な新しい生活がおくれるに違いない…ということで購入してしまうのでしょうか?
「住まい」は家電や自動車とは違い、スペック表と数回の内見だけではほとんど実態をつかむことができません。また残念なことに、決められた建築会社は、短期間に引き渡して完了させなければならないので、このような難易度の高い敷地、非常に安い建築価格という条件で、本気でフリープランを考えるつもりは最初からありません。本当は時間をかけて良い家を建てたいけど、それでは儲からない…というのが本音です。
「住まい」に対する価値観や自分なりのこだわりというものは、金銭感覚、空間体験、人間関係の構築など、大人になってからの様々な経験によって育成されてくるものだと思います。そういった経験が浅い、少なくとも20代の間や新婚の時期は、賃貸住宅がいいのではないでしょうか?
まずは、色々な地域、様々な環境の賃貸住宅で生活をして経験を積みましょう。幸い最近では、賃貸住宅の選択肢が増えてきました。そこでの暮らしを経ることで、少しずつ、将来の自分の家のあるべき暮らしがつかめてくるのだと思います。『本当の自分の家』を建築するのはその後で遅くないのではないでしょうか。
どんな住宅でも建築するためには、膨大な、材料・エネルギー・人件費・時間・コストがかかります。現実にこのチラシのような、どうしようもない住まいが大量に建築されていることを考えると、あまりに多くの無駄を安易に生み出していると思います。
是非ご一考ください。

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