シリーズ「劇的ビフォーアフター」の匠たち

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2013年3月10日放送「孫がおびえる家」に出演

渡辺ガク -  g-factory 「余白」で狭い家が豊かな空間に

10坪の家に家族5人が快適に暮らすには――。少し考えただけでは、不可能とも思えるこの条件に、建築家の渡辺氏は挑んだ。祖父母、母、そして2人の孫が心地よく生活するために、凝らした工夫と、設計に込めた想いとは?

渡辺ガク

プロフィール
渡辺ガク(わたなべ がく) 1971年岩手県盛岡市生まれ。1993年、東京デザイナー学院スペースデザイン学科卒業後、1993年~2007年、瀬野和広+設計アトリエ 勤務。2007年 g_FACTORY 建築設計事務所 設立。

この家はどんな場所にあるのですか。

 敷地は、細い道を通り抜けた先にあって、ちょうどタコツボのようなかたちで周りの家に囲まれています。一見、環境としては良くないのですが、メリットは、北側に公園があることです。ただ、改修前は、周りの家の壁に阻まれているせいで、景観はほとんどありませんでした。
 この家は、もともとはおじいちゃんとおばあちゃんが2人で住んでいたのですが、娘と孫2人も一緒に暮らすことになりました。その結果、部屋や収納スペースの不足や老朽化が気になってきた、というわけです。

インナーテラス

孫のためにブランコを設けたインナーテラス

キッチン

キッチンはコンパクトにまとめ、家族がいつも集う場所に

もっとも問題を感じたのはどんなところですか。

 狭いのはもちろんですが、構造体の老朽化も問題でしたね。柱の一部は腐り落ちて、土台とつながっていない危険な状態でした。「よく建ってたなあ」という感覚です。問題は、まず構造体。次に家族5人の生活スペース。このような認識でした。

設計の方針はどんなものでしたか。

 10坪ですから、2階建てにしてもまだ床面積は足りません。そこで、大方針として「余白で解決しよう」と考えました。

余白とは?

 今回のリフォームで言うと、1階と2階の間のスペースや屋根裏ですね。普通の家なら使われないところを活用しているわけです。その上で、生活の中で広さを感じてもらうために、周辺の自然も取り入れました。
  2階のインナーテラスは、ただ公園の景色が見えるだけではありません。縁側を介して、家の中にいながらでも、外を感じられる「中でもあり外でもある空間」として作っています。ここは、この家のメインの部屋として、檜を使って贅沢に仕上げました。


リビングから外の景色を介し、外部の景色が連続する「外の部屋がある処(土間のある家)」

普段の仕事でも、今回のような狭小住宅の案件は多いのですか。

 狭小住宅は、よく手がけていますし、得意なジャンルですね。もちろん、普通の住宅より大変なことも多いのですが……。
ただ苦労する一方で、条件が厳しいからこそ生まれてくる可能性や創造性というものもあります。その点、狭小住宅はチャレンジのしがいがある魅力的な分野です。

物理的な狭さも解決できますか。

 よく思うのは、狭小だからといって、詰め込んだ効率的な間取りにすると、余計に狭苦しく感じるようになるということです。
先ほどの家の話では「余白」と表現しましたが、限りある面積の中にあえて、中庭や屋根裏など、空間の抜けをつくることで面積以上の広がりが生まれるわけです。

心理的な広さということですね。

 今回の家の2階部分で、公園の景色が見られるようにしました。このように、自然を感じられる空間があると、リラックスできて生活が豊かになります。このことは都心でも田園でも変わりません。
季節によって変わる光や風を五感で味わいながら、心豊かに暮らせる。これからもそんな家を作っていきたいですね。

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