都心部や住宅密集地などでは、15坪に満たないようないわゆる「狭小地」も少なくありません。こうした狭小地での家づくりには、法律上の制限に加え、限られたスペースをいかに活用するかといった課題が常につきまといます。しかしそんな狭小地での設計こそ、建築家が最も得意とする分野。ハウスメーカーや工務店には真似できない狭小住宅設計の「極意」を、2人の建築家の事例から読み解いてみましょう。
狭小住宅プランニング
ノアノア空間工房 大塚泰子さんの場合<うさぎのいえ5>
外部との「つながり」を持たせることで
小さな敷地をできる限り広く!
私の事務所では、まず「リビングをどの位置に配置するか」を決めるところから始めます。そして、十分な明るさが得られそうな場合は、可能な限りリビングは1階に配置するようにしています。 理由は、1階なら庭(外部)との「つながり」を持たせることができるからです。たとえば1階にリビングを設けて、庭には地続きに室内の床と同じ高さのデッキを設置すれば、室内から室外がつながったように見え、庭を「リビングの延長」にすることができますよね。 狭小地の場合、建物と庭を切り離して考えてしまうと、どうしても狭さを感じてしまいます。ですから、庭までを含めて「敷地全体が家」であると考え、建物以外の空白のスペースを室内のように設計することで、小さくても豊かな空間を得ることができます。 狭小地には、法規上の規制や面積の制限、隣地との距離などの制約がつきまといますが、敷地に対して面積をめいっぱいとることだけを考えるのではなく、プラスアルファの発想で豊かな空間をつくることが重要です。そしてそれを、その家の個性としてとらえればよいのです。実は「うさぎのいえ」も、そうした発想から生まれたネーミングです。小さくても、ぴょんぴょんと跳ねるように室内を移動して、楽しく暮らせるように、という願いが込められています。こうした発想で狭小地と向き合えば、大きな家にはない、小さな家ならではの魅力が生まれるはずです。
- LDKを1階に配置して外部(庭)とつながりを持たせる
- 子供部屋は吹き抜けとつなげてなるべく広く
- 共有のWICで家中すっきり&家族間の交流も!
最大のポイントは、1階にLDKを配置して外部とのつながりを持たせて広さを感じられるようにしたこと。また、「うさぎのいえ5」の建て主さんにはお子さんが2人いらっしゃるのですが、あえて閉じた子ども部屋は作らず、吹き抜けとつなげた空間に配置して解放的な空間にしています。寝室の北側にはWICをつくっていますが、これは家族全員で共有するWICです。収納をなるべく集約することで家の中がすっきりするだけでなく、家族間の交流も生まれます。
- 1992年 日本大学生産工学部建築工学科卒業
- 1996年 日本大学生産工学部建築工学研究課修士課程修了
- 1996年~2003年 杉浦伝宗株式会社アーツ&クラフツ建築研究所
- 2003年 有限会社ノアノア空間工房設立