建築家・ナイトウタカシさんのブログ「グランドピアノ vs アップライトの防音」

グランドピアノ vs アップライトの防音

2025/09/11 更新

お子さまのピアノ練習を考えるとき、防音対策は避けて通れません。


特に「グランドピアノ」と「アップライトピアノ」では、音の響き方や防音の考え方が大きく異なります。

今回は、それぞれの特徴と効果的な防音工夫について、建築設計と音響設計の視点からわかりやすく解説します。

1. ピアノの音は“空気”と“振動”の両方で伝わる
まず知っていただきたいのは、ピアノの音は空気音と**固体音(振動音)**の両方で広がるということです。

空気音:鍵盤を叩いたときに空中に広がる音

固体音:弦の響きや響板の振動が、床や壁を伝わって隣室・上下階に届く音

防音を考えるときは、この2つを分けて対策する必要があります。

2. アップライトピアノの特徴と防音対策
音の特徴
平均演奏音量:70〜80dB

響板が背面にあるため、後方の壁に音が集中しやすい

床への振動は少なめだが、壁面伝播が大きい

防音の工夫
背面の壁に吸音パネルを設置
 壁に直接音がぶつかるのを防ぎ、響きをやわらげます。

二重壁構造+遮音シート
 隣室への音漏れを抑えるため、壁自体の性能を強化。

床の防振対策は最小限でOK
 アップライトは重量が軽いため、厚い浮き床までは不要。

ポイント:
背面に集中する音対策を優先しつつ、室内の響きも調整するのが効果的です。

3. グランドピアノの特徴と防音対策
音の特徴
平均演奏音量:80〜90dB

響板が下向きについており、床から下階や隣室に音と振動が伝わりやすい

低音域が豊かで、固体音(床振動)が非常に大きい

防音の工夫
浮き床構造の採用
 床の上にもう一枚独立した床をつくり、ピアノの重量と振動を支える。

壁・天井・床の一体遮音
 床だけでなく、壁・天井の3方向すべてで高い遮音性能を確保。

二重サッシ+高性能ドア
 窓やドアからの空気音漏れを徹底的に防ぐ。

ポイント:
グランドピアノは固体音対策が最優先。アップライトより高レベルの防音設計が必要です。

4. 家族が快適に過ごすための工夫
ピアノを弾く本人だけでなく、家族も快適に暮らせる環境を整えることが大切です。

練習室はリビングから適度に距離を取る
 家族がくつろぐ空間との間に、廊下や収納スペースを挟むと生活音と分離できます。

換気・冷暖房の計画
 防音室は密閉度が高いため、快適な室温・空気環境の設計が不可欠です。

音響設計も同時に考える
 防音性能だけでなく、部屋の響きが自然であることが練習効率を高めます。

5. 暮らしやすさも大事
防音室を考えるには、楽器ごとに最適な防音・音響設計が必要です。

楽器別の最適な防音性能設定

吸音と響きのバランスを取る音響調整

家族の生活動線との両立

子どもの成長に合わせた柔軟な設計

ただ、我々は、単なる「防音室づくり」ではなく、“家族全体の暮らしやすさ”を考えた家づくりをしています。

まとめ
アップライトは壁面対策中心、グランドは床振動対策が必須

防音室は「楽器の種類」と「家族の暮らし方」で設計が変わる

快適な練習環境は、子どもの上達だけでなく、家族全員の暮らしの質を高める

「ピアノの音を気にせず思いきり弾ける家」。
それは、家族の安心と子どもの未来を守るための大切な投資です。

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