建築家・ナイトウタカシさんのブログ「【アート】写真を飾る暮らし 」
【アート】写真を飾る暮らし
2025/10/20 更新
家にアートを取り入れるとき、「絵画よりも写真のほうが自分に合いそう」と感じる方は多いでしょう。
特に風景写真は、誰にとっても親しみやすく、空間をやわらかく彩ってくれます。
しかし一方で、「自分で撮った写真では軽く見えるのでは?」とか、「飾ると部屋がごちゃごちゃしそう」と悩む方も少なくありません。
実は、少しの工夫で、風景写真は暮らしの中で驚くほど美しく映えます。
1. “記録”ではなく“風景としての記憶”を選ぶ
風景写真を飾るときに大切なのは、**「どこで撮ったか」より「どんな気持ちになれるか」**です。
旅の記録としての写真ではなく、見るたびに心が穏やかになる一枚を選びましょう。
たとえば――
海辺の水平線 → 解放感をもたらす
森の木漏れ日 → 安心感を与える
静かな湖面 → 思考を静める
写真を通して感じる「空気」こそが、空間に最も影響を与えます。
どこかの風景ではなく、あなたの中にある“心地よさの記憶”を選ぶ。
それが、飾る写真の第一歩です。
2. 色調で空間を整える
写真は色の印象が強いアートです。
だからこそ、インテリアの色との調和が大切になります。
ナチュラルな部屋には、淡いトーンの自然風景
モダンな部屋には、モノクロやコントラストのある構図
暖色の照明の部屋には、夕景や秋の写真
部屋のベースカラーと合わせることで、写真が“浮かずに溶け込む”ようになります。
3. 額装で写真の印象を変える
写真そのものの美しさを活かすには、額装のトーンを揃えること。
白や黒の細フレームは、被写体の色を引き立て、どんな空間にも馴染みます。
木目のフレームを合わせれば、やわらかく温かい印象に。
また、同じシリーズの写真を2〜3枚並べると、空間にリズムが生まれ、ギャラリーのような統一感が出ます。
4. 飾る位置と視線の導線を考える
風景写真は「抜け」をつくる効果があります。
たとえば、廊下の突き当たりや、ソファの向こう側の壁など、視線の先に“奥行き”を感じさせる場所に飾ると効果的です。
日常の動線の中に、ふと目に入る自然の風景。
その一瞬が、家の空気を静かに整えてくれます。
5. 自分で撮った写真を飾るという選択
プロの作品でなくても、自分の撮った風景を飾るのはとても素敵なことです。
そこには、あなたが“いいな”と思った瞬間の感性が写っています。
その感性こそ、何よりも本物のアートです。
プリントの質や額装を工夫すれば、立派な作品になります。
大切なのは、上手さではなく「その景色を残したい」と思った気持ち。
まとめ
風景写真を飾るということは、日常の中に静かな時間を置くことです。
慌ただしい朝も、疲れた夜も、ふと目に入る一枚の風景が心を整えてくれる。
そんな小さな瞬間の積み重ねが、暮らしを美しくしていきます。
アートを買うことだけが“飾る”ではありません。
自分の感じた景色を、もう一度家の中に迎え入れる。
それこそが、写真を飾る暮らしのいちばん豊かな形なのです。