建築家・ナイトウタカシさんのブログ「サウナは北側がいい?意外な設置場所のコツ」
サウナは北側がいい?意外な設置場所のコツ
2025/10/28 更新
「サウナをどこに設置すればいいですか?」
自宅サウナを検討される方から、よくいただく質問です。
多くの人が「お風呂の隣」「庭」「ベランダ」など、スペースの有無から考え始めます。
けれども実は、サウナは“方角”と“環境”の相性がとても大切。
なかでも、少し意外に聞こえるかもしれませんが、
私はよく「北側の設置もおすすめです」とお伝えしています。
なぜサウナに北側が向いているのか。
その理由を、いくつかの視点からご紹介します。
■1. 温度変化が穏やかで、安定しやすい
北側は直射日光が当たりにくく、外気温の変化も緩やかです。
サウナは温度と湿度のコントロールが命。
南面や西面のように日差しの影響を強く受ける場所だと、
日中は暑くなりすぎたり、夜は冷え込みすぎたりして、
設定温度の安定が難しくなることがあります。
北側であれば、外気の影響を受けにくく、
一年を通して比較的安定した環境が保てる。
これは、快適なサウナ体験を支える大きなポイントです。
■2. “日陰”が生み出す落ち着いた空気感
サウナに求めるのは、ただの温度ではなく“空気感”です。
北側の柔らかい光はまぶしさがなく、
木の質感や影の表情を美しく見せてくれます。
南側の明るいサウナも悪くありませんが、
リラックス目的であれば、少し暗めのほうが落ち着けるもの。
光が強すぎない北側は、まさに「静けさを感じるサウナ」には最適なのです。
■3. 水まわりとの相性がいい
住宅設計の基本として、北側には水まわり(浴室や洗面室)を配置するケースが多い。
そのため、サウナを北側に設けると給排水の導線が短く済み、
工事コストも抑えやすいという利点があります。
特に既存住宅のリフォームでサウナを導入する場合、
既存の浴室の隣に設置するのが最もスムーズ。
「北側=水まわりゾーン」と考えれば、
自然と動線にも無理がなく、使いやすいプランにまとまります。
■4. 北側でも“外気浴”は楽しめる
「北側だと景色が楽しめないのでは?」
そう思う方もいるかもしれません。
でも実は、北側の穏やかな光や、間接的な風の流れは、
外気浴には理想的な環境です。
直射日光のない日陰で風を感じる方が、
体温の変化が穏やかで“ととのいやすい”と感じる人も多い。
もし庭やテラスに面していなくても、
坪庭や小窓を設けるだけで、十分に心地よい外気浴が実現します。
■まとめ
サウナ=南向き、明るい空間――。
そう思われがちですが、実際には北側の静けさがサウナにはよく合います。
温度が安定し、光が柔らかく、施工もしやすい。
何より、落ち着いた時間を過ごすのにふさわしい場所です。
家づくりの中で「使われるサウナ」を目指すなら、
“場所の魅力”よりも、“体験の質”を中心に設計すること。
北側の一角に、ひっそりと息づくサウナ――。
それこそが、暮らしに深い余白をもたらす贅沢かもしれません。























