建築家・ナイトウタカシさんのブログ「【アートと暮らす】ファブリックもアートに」

【アートと暮らす】ファブリックもアートに

2025/11/17 更新

「アートを飾る」というと、多くの人が絵画や写真を思い浮かべます。


けれども、もう少し視野を広げてみると、布(ファブリック)やテキスタイルも立派なアートになります。



それは、色や模様だけでなく、手ざわりや光の透け方、空気の動きまでをデザインする、**暮らしの中の“感覚のアート”**です。

1. 絵ではなく、布で「空間を描く」
ファブリックアートの魅力は、壁にかけるだけで“空気が変わる”こと。
布は絵とは違い、光をやわらかく吸い、風を受けて揺れる。
その動きが、空間に生命感を与えてくれます。

たとえば――

大きなキャンバスの代わりに、北欧テキスタイルを壁に飾る

無地のリネンを額装して、素材の質感を楽しむ

柄のある布を木の枠に張って、壁面にリズムをつくる

一枚の布が、絵と同じように“場の印象”をデザインしてくれるのです。

2. 素材が語る「温度と時間」
布には、素材そのものが持つ温度があります。


リネンの素朴な肌触り、ウールのぬくもり、シルクの光沢――。
どれも手で触れた瞬間に「人の暮らし」を感じさせます。



建築的に言えば、ファブリックは“素材の記憶”を空間に添えるもの。
硬質な壁や床に、布という柔らかさが加わると、空間の温度がひとつ上がるのです。

3. 音と光をやさしく整える
ファブリックは、見た目の美しさだけでなく、機能的にも優れています。
布が音を吸い、光をやわらげ、空間を静かに包みます。

カーテンの布地を厚くすれば音が穏やかに

レース生地を重ねれば光が柔らかく拡散

タペストリーのように壁に掛ければ、反響音を和らげる

つまり、ファブリックは**「暮らしの調律者」**でもあるのです。

4. 季節とともに“着替えるアート”
布は入れ替えが簡単だから、季節ごとにアートを着替える楽しみもあります。



春には淡い色のリネン、夏は透けるようなオーガンジー、秋はウール、冬はベロア。
素材を変えるだけで、部屋全体の空気が変わります。



この「動くアート」は、時間とともに変化する日本の四季と、とても相性がいい。
固定された作品ではなく、暮らしに寄り添うアートのかたちです。

5. 「飾る」より「馴染ませる」
ファブリックアートのもう一つの魅力は、生活の延長にあること。
額に入れて“見せる”よりも、**カーテンやクッション、ランナーとして“使いながら感じる”**ことができます。



つまり、飾るよりも「馴染ませる」。


それは、美術館的なアートとは違う、暮らしの手の届く場所にあるアートの楽しみです。

まとめ
布は、最も身近なアート素材です。
風に揺れ、光を透かし、肌に触れるたびに、私たちの感覚を静かに揺り動かします。



絵を飾る勇気がなくても、布を一枚、壁に掛けてみる。
それだけで、空間が呼吸をはじめ、暮らしがやわらかく整っていく。



ファブリックやテキスタイルは、「触れることのできるアート」。
その優しい存在が、日常のなかに美のリズムを取り戻してくれるのです。

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