建築家・ナイトウタカシさんのブログ「暮らしの中に“溶けこむ”防音室のつくり方」
暮らしの中に“溶けこむ”防音室のつくり方
2025/11/27 更新
防音室というと、どこか特別な「箱」を家の中に置くようなイメージを持たれがちです。
厚い壁に囲まれた閉じた空間、練習のためにだけ存在する部屋──。
けれど、家づくりを考えるご家庭とお話ししていると、多くの方が口をそろえて言われるのは、
「練習の場所が孤立しないようにしたい」
という願いです。
音楽が暮らしの一部であるなら、防音室もまた暮らしに寄り添う存在であってほしい。
そんな“溶けこむ防音室”をつくるための視点について、少し触れてみたいと思います。
■ 1. “家の中の位置”を暮らしの動線で考える
防音室をどこに配置するかは、防音性能だけで決められるものではありません。
・キッチンから子どもの気配が感じられる距離か
・家族の生活音と練習音がぶつからないか
・家事の途中でも様子が見えやすいか
これらは、音の問題であると同時に、暮らし方そのものの問題です。
「静かだから」と2階の奥に追いやるのではなく、
“そのご家庭のリズムの中でどこが心地いいか” を丁寧に見極めることが大切です。
■ 2. 光・風・質感をあきらめない
防音室=暗くて密閉された空間、という先入観がまだあります。
ですが、正しく工夫すれば、光も取り入れられ、圧迫感も避けられます。
・内窓やFIX窓を活用して、柔らかい光だけ通す
・扉は重厚でも、室内の素材は軽やかにまとめる
・吸音材を“デザイン素材”として見せる
・床材の温かさや、壁色の柔らかさを大切にする
防音性能を優先すると、どうしても“機能優先の空間”になりがちですが、
そこにいる時間の質を整えることが、長く使われる防音室には欠かせません。
■ 3. 家族との“距離感”を設計する
防音室は「閉じ込める部屋」ではなく、
家族がそれぞれの時間を心地よく過ごすための部屋です。
だからこそ、
・ドア越しに気配が伝わるか
・終わりのタイミングをそっと伝えられるか
・家族が安心して過ごせる距離か
こうした“距離のデザイン”がとても大切です。
音だけを抑えるのではなく、人の動きや気配をどこまでつなぐのか。
建築的な視点から、細やかに調整していく必要があります。
■ 4. 練習と暮らしを「対立」させない間取り
防音室がうまくいかなかったご家庭に共通するのは、
“練習時間が家族の生活リズムとぶつかってしまう”こと。
・夕方の調理と練習
・お風呂の時間と練習
・下の子の就寝と練習
これらは防音性能とは別の話。
家族の暮らしと、練習のリズムを同時に考える間取りが必要です。
防音室が「家族の誰にも負担をかけない場所」になったとき、
それは初めて“暮らしに溶けこんだ防音室”になります。
■ 5. 最後に──
防音室は、“部屋”をつくることではありません。
家族が音を大切にしながら、毎日を心地よく過ごすための環境をつくることです。
音と暮らしは、本来対立するものではありません。
丁寧に見つめていけば、必ず調和する場所が見えてきます。
そんな視点で防音室を考えていくと、
「練習のための部屋」から、
“家族の時間を支える部屋”へと姿を変えていくはずです。
お子さまの音楽と家族の暮らし、まとめて考える家づくり。
防音室を“つくる”だけじゃない。
音楽のプロと建築のプロが一緒だからできる、新しい住まいの形。
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