建築家・ナイトウタカシさんのブログ「「旅」をテーマにしたアートのある暮らし」
「旅」をテーマにしたアートのある暮らし
2025/12/01 更新
旅は、私たちの感覚を目覚めさせてくれます。
異国の街の匂い、風の音、光の色。
それらは時間が経っても、ふとした瞬間に心の奥から蘇ってくる。
そんな旅の記憶を、アートという形で暮らしに取り入れると、
日常の中に“もう一つの風景”が生まれます。
アートは単なる飾りではなく、過去と現在をつなぐ小さな記憶装置なのです。
1. 旅の写真を「作品」にする
まずおすすめしたいのは、旅先で撮った写真をそのまま飾ること。
それも観光写真ではなく、「その時、自分が惹かれた瞬間」を選ぶのがコツです。
石畳に落ちた光、路地裏の壁の質感、見知らぬ街角の窓。
そうした一枚をプリントし、丁寧に額装すれば、それは立派なアートになります。
アートを“買う”のではなく、“感じた時間を飾る”。
その方が、暮らしの中で長く心に響きます。
2. 海外のアートポスターや版画を迎える
自分で撮った写真だけでなく、訪れた土地の空気を感じるアートを選ぶのも楽しい方法です。
北欧の抽象ポスター、パリのギャラリーの版画、京都の町家の木版画など。
旅の余韻を、作品として持ち帰るイメージです。
空間に異国のリズムが加わると、家全体の“呼吸”が変わります。
それは、毎日を少しだけ旅気分にしてくれる不思議な力です。
3. 飾る場所に“物語”をつくる
旅をテーマにしたアートは、配置によっても印象が変わります。
リビングに並べて飾れば「人生の航跡」になり、
寝室に一枚だけ飾れば「心の中の静かな旅」になります。
たとえば――
ソファ背面に旅先の風景を数枚並べて“記憶のギャラリー”に
廊下に一枚ずつ異なる土地の写真を飾って“道の物語”に
書斎の壁に地図のポスターを貼り、“未来の旅”を思わせる空間に
アートを飾ることが、時間の流れをデザインする行為になるのです。
4. 土地の“手仕事”を飾るという選択
旅の中で出会うクラフトや民芸も、立派なアートです。
織物、陶器、木彫、紙細工――それぞれの土地の素材や技法には、文化の息づかいがあります。
棚に置いた一枚の陶板、壁に掛けた布、窓辺の木工オブジェ。
それらは静かに“その土地の空気”を運び、空間に奥行きを与えてくれます。
5. 「行けない場所」への旅としてのアート
最近では、実際に旅に出ることが難しい時期もあります。
そんなときこそ、アートが“心の旅”を支えてくれます。
知らない国の風景を描いた作品、海を越えたアーティストの手仕事。
それらを見ることで、私たちは外の世界と再びつながることができるのです。
まとめ
「旅を飾る」とは、単に思い出を並べることではありません。
それは、自分の中に残った“感覚の余韻”を空間に再現すること。
アートを通して、行った場所・出会った風・感じた時間がふたたび息を吹き返す。
家の中に“旅が続いている”と感じられる空間は、
日常をやわらかく照らし、心に豊かな余白をつくってくれます。























