建築家・ナイトウタカシさんのブログ「相談に来た時点で、家づくりはもう始まる」
相談に来た時点で、家づくりはもう始まる
2026/01/09 更新
家づくりの相談に来られる方の中には、
「まだ何も決まっていなくて……」
「相談するには早いかもしれません」
と、少し申し訳なさそうに話し始める方がいます。
土地も決まっていない。
予算も整理できていない。
やりたいことも、言葉になっていない。
だから、
「まだ、家づくりのスタートラインに立てていない」
そう感じているのかもしれません。
でも私は、いつもこう思っています。
―― 相談に来られたその時点で、
家づくりはもう、静かに動き始めているんだと。
相談に来るまでには、
きっといろんな気持ちの揺れや、
言葉にしづらい不安や、
誰にも話せなかった迷いが、
少しずつ積み重なっているはずです。
「このままでいいのかな」
と思った日があって。
住宅展示場をまわってみたり、
インターネットで調べてみたり。
でも、調べれば調べるほど
余計に分からなくなってしまって。
そんな時間を、
きっとそれぞれのペースで
過ごされてきたのだと思います。
そのうえで、
「一度、建築家に話を聞いてみようかな」
と、思ってくださった。
その選択に至るまでの道のりは、
決して「前段階」や「準備」ではなくて、
もうすでに
家づくりのプロセスの一部なんだと感じています。
相談の場では、
はっきりとした要望よりも、
うまく言葉にできない感情のほうが
多く出てくることがあります。
「こうしたい、というより……」
「なんとなく違和感があって……」
そんな曖昧さにこそ、
その人らしい家づくりの入口が
隠れていることが多いんです。
だから私は、
相談の場で「答え」を急いで出すよりも、
まずは、その曖昧さごと受け止めたい。
そう思っています。
「まだ何も決まっていないから」
「相談するには早いから」
そう感じている、その状態こそが
実は、とても大切な始まりで。
そこから少しずつ、
言葉にならなかった気持ちが
かたちを帯びていったり、
自分でも気づいていなかった
価値観に出会ったりします。
相談とは、
結論に向かうための場ではなく、
「いまの自分の立ち位置を
そっと確かめる場」
なのかもしれません。
もし今、
まだ決めきれていなくて、
まだ進めていない気がして、
焦ったり、迷ったりしている方がいたら。
それでも大丈夫です。
相談に来ようと思ったその瞬間から、
家づくりは、もう始まっています。
それは、
図面よりもずっと手前にある、
「自分の気持ちに向き合い始めた」
という、静かな一歩なのだと思います。























