建築家・ナイトウタカシさんのブログ「過去の住まいが、今の要望をつくっている」
過去の住まいが、今の要望をつくっている
2026/01/22 更新
家づくりの相談を受けていると、
「こうしたいんです」
「ここは絶対に外せません」
という強い言葉が出てくることがあります。
それを聞くたびに思うのは、
その要望は
「今、この瞬間だけの願い」ではなく、
もっと前から続いている
暮らしの体験の積み重ねから
生まれているのだろうな、ということです。
たとえば、
「収納をたくさんほしい」
という言葉の裏側には、
片づけても片づけても
モノがあふれてしまった
過去の暮らしがあるかもしれません。
「とにかく明るい家がいい」
という言葉の背景には、
どこか薄暗くて
気持ちまで沈んでしまうような
そんな部屋で過ごしてきた記憶が
眠っていることもあります。
要望は
“理想の形”を語っているように見えて、
実はその多くが
「これまで、少しつらかったこと」
「どこか我慢してきたこと」
の反動として
表に出てきているように感じます。
だから私は、
要望そのものよりも
「なぜ、その言葉が出てきたのか」
をゆっくり一緒に辿るようにしています。
過去の住まいで
何が心地よくて、
何が引っかかっていたのか。
どの瞬間に
「こうはしたくない」と感じたのか。
そこには
その人だけの暮らしの物語があって、
それを無視したまま
図面に落とし込んでしまうことには
どうしても抵抗があります。
過去を否定するための家づくりではなく、
「これまでの暮らしを踏まえたうえで
次の一歩をどう描くか」
そんなふうに
考えていけたらいいなと
いつも思っています。
要望は、
単なる希望リストではなく
“これまで生きてきた時間の痕跡”
なのかもしれません。
その重みを感じながら
設計に向き合いたいなと、
あらためて思っています。























