建築家・ナイトウタカシさんのブログ「視線の抜け方が、暮らしの質を左右する」
視線の抜け方が、暮らしの質を左右する
2026/02/01 更新
家づくりの相談を受けていると、
「明るい家にしたいんです」
「広く感じる家がいいです」
そんな言葉を、よく耳にします。
たしかに
明るさや広さは、とても大切です。
でも実は、
「数値」や「面積」よりも
暮らしの心地よさを左右しているものがあって、
それが
“視線の抜け方” だと感じています。
部屋の広さは同じなのに、
ある家は、のびやかに感じて
ある家は、どこか窮屈に感じる。
天井の高さも、窓の大きさも
ほとんど同じなのに、
受け取る印象は、まるで違う。
その違いは、
「どこへ視線が導かれているか」
「どこで視線が止まってしまっているか」
そこにあります。
例えば、
窓の正面に
すぐ隣家の壁が迫っていると、
光は入っていても
心は外に向かっていきません。
反対に、
細くても、遠くまで抜ける視界があると
人の意識は、その奥へ奥へと伸びていきます。
敷地が広いから
視線が抜けるわけではなく、
都市の小さな土地でも
“抜けをつくること” はできます。
そしてそれは、
「どこを開くか」以上に
「どこをあえて閉じるか」 で決まります。
外に向けて開きたい場所と、
内側に静かさを保ちたい場所。
その境界を
どう描くかによって、
同じ窓でも、
「ただの開口」になるか
「居場所を支える風景」になるか
その意味が変わっていきます。
視線が奥へと伸びていくと、
部屋そのものの広さ以上に
気持ちにゆとりが生まれます。
視線が行き場をなくすと、
どれだけ面積があっても
どこか落ち着きません。
暮らしの質は、
「何㎡の部屋か」より
「どこへ視線が導かれているか」によって
そっと左右されているのだと思います。
これから土地を見るとき、
間取りを考えるとき、
「どこが見えるか」だけでなく、
「どこまで、視線が抜けていくか」
一度、意識してみてもよいかもしれません。
そこに
あなたにとっての心地よさが、
静かに隠れている気がします。























