建築家・ナイトウタカシさんのブログ「静かな土地と、落ち着ける土地は違う」

静かな土地と、落ち着ける土地は違う

2026/02/02 更新

土地探しの相談をしていると、

「静かな場所がいいんです」

という言葉を、よく聞きます。

 

たしかに、
車の音が少なくて、
人の出入りも少ない。

それだけで、
少し安心できる気がしますよね。

 

でも、現地を一緒に見ていると、

「静かではあるけれど、
 なぜか落ち着かない」

そんな土地に出会うことがあります。

 

音が少ないことと、
心が落ち着くことは、

必ずしも
同じではないようです。

 

たとえば、

周囲にほとんど人の気配がなく、
昼間でも静まり返っている場所。

一見すると
理想的に思えるかもしれませんが、

長く立っていると、
少しだけ緊張するような感覚を
覚えることがあります。

 

反対に、

決して無音ではないのに、
なぜか安心して
呼吸ができる土地もあります。

 

遠くで聞こえる生活音。

ときどき通る
人の足音。

 

どこかで
誰かが暮らしている気配。

 

それらが、

過剰ではなく、
ほどよい距離感で
存在しているとき、

人は不思議と
落ち着いていられるものです。

 

「静か」という言葉は、

音の量を
表しているようでいて、

実は、
暮らしの質までは
語っていません。

 

落ち着けるかどうかは、

音の有無だけでなく、

・周囲との距離感
・視線の交わり方
・空間のひらき方
・その場に流れる時間の速さ

そういったものが
重なり合って
決まっていきます。

 

設計の立場から
土地を見るとき、

私は、

「音がするかどうか」
よりも、

「その音と、
 どう付き合えるか」

を考えるようにしています。

 

完全に遮断された静けさよりも、

暮らしの中に
自然に溶け込む音の方が、

長く住んだときに、
心を疲れさせないことも
あります。

 

だからもし、

土地を見に行って、

「静かだけど、
 なんとなく落ち着かない」

と感じたら、

その感覚を
無理に打ち消さなくても
大丈夫です。

 

それは、

「音が少ない」
かどうかではなく、

「ここで、
 自分らしく
 過ごせそうか」

を、
身体が先に判断している
サインなのかもしれません。

 

静かな土地と、
落ち着ける土地。

 

その違いを、
少しだけ意識して
土地を眺めてみると、

条件表では
見えなかったものが、

静かに
立ち上がってくる気がします。

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