建築家・ナイトウタカシさんのブログ「「ここは触れない方がいい」と感じる瞬間」
「ここは触れない方がいい」と感じる瞬間
2026/02/14 更新
土地や建物に向き合っていると、
ときどき、
言葉にしにくい感覚に出会います。
「ここは、
あまり触れない方がいいかもしれない」
理由を聞かれても、
はっきりとは説明できない。
でも、
なぜかそう感じてしまう。
設計を続けていると、
そういう瞬間が
確かに存在します。
たとえば、
無理に視線を開こうとすると、
かえって落ち着きが
失われそうな場所。
削れば広くなるけれど、
その代わりに
守られていた気配が
消えてしまいそうな部分。
図面の上では
改善に見える操作でも、
現地で感じる空気が
「それ以上は、
踏み込まないでほしい」
と伝えてくることがあります。
土地や空間には、
もともと備わっている
“バランス”のようなものがあります。
それは、
長い時間をかけて
周囲との関係の中で
つくられてきたものかもしれません。
すべてを
整理し直せば
良くなるとは限らない。
むしろ、
そのまま残しておいた方が、
暮らしにとって
優しく働くこともあります。
設計の仕事は、
手を加えることだと
思われがちですが、
実際には、
「どこまで触れるか」
以上に、
「どこに手を出さないか」
を見極める時間が
とても長い仕事でもあります。
触れない、という判断は、
逃げでも
妥協でもありません。
その場所が
すでに持っている意味を
尊重するという
積極的な選択です。
暮らしの中でも、
すべてを
コントロールしようとすると、
どこかで
無理が生じます。
少し曖昧なまま、
少し余白を残したまま。
その方が、
長く心地よく
付き合えることもあります。
「ここは触れない方がいい」
そう感じる瞬間は、
設計を止める合図ではなく、
その土地や空間と
きちんと向き合えている
サインなのかもしれません。
無理に理由を
言葉にしなくてもいい。
その感覚を
大切に扱うことが、
結果として
暮らしを守ることに
つながっていくと
感じています。























