建築家・ナイトウタカシさんのブログ「「今だけの魅力」に引きずられすぎないため」
「今だけの魅力」に引きずられすぎないため
2026/02/22 更新
土地や環境を見ていると、
「いま、この感じがとてもいい」
そう思う瞬間があります。
季節の光。
たまたま静かな時間帯。
抜けた景色。
そのときの印象が良いと、
気持ちは一気に
前に進みます。
それ自体は、
決して悪いことではありません。
ただ、
設計を続けていると、
少し立ち止まって
考えたくなる場面があります。
それは、
「この魅力は、
どれくらい続きそうだろうか」
という問いです。
たとえば、
今は空いている隣地。
今は低い建物。
今は人通りの少ない道。
それらは、
たまたま「今」そうなっている
状態かもしれません。
数年後、
環境が変わったとき、
その土地の印象は
どう変わるでしょうか。
「今だけの魅力」は、
判断を後押ししてくれますが、
同時に、
判断を急がせる力も
持っています。
勢いで決めてしまうと、
変化が起きたときに、
「思っていたのと違った」
という気持ちが
生まれることがあります。
設計の場では、
今の魅力を
否定することはしません。
ただ、
その魅力に
すべてを委ねてしまわないように、
別の視点も
そっと添えるようにしています。
この魅力が
失われたとしても、
それでも
落ち着いて暮らせそうか。
景色が変わっても、
音が増えても、
家の中に
居場所は残るか。
「今だけ」を
楽しみながら、
「その先」も
受け止められるかどうか。
そのバランスを
考えておくことが、
あとから
暮らしを支えてくれます。
今の魅力に
心が動くのは、
とても自然なことです。
だからこそ、
引きずられすぎないように、
一度、時間を置いてみる。
少し距離を取って
もう一度見てみる。
その余白が、
判断を
静かに整えてくれることも
多いように感じます。
「今だけの魅力」を
大切にしながら、
それに
すべてを預けない。
その姿勢が、
長く心地よい
家づくりにつながっていくのだと
思っています。























