建築家・ナイトウタカシさんのブログ「その場所で生まれる時間の重なり」

その場所で生まれる時間の重なり

2026/02/25 更新

土地や家を考えるとき、
私たちはつい
「これからの暮らし」に
意識を向けがちです。

 

どんな家に住むか。
どんな毎日を送るか。

 

もちろん、
それはとても大切なことです。

 

でも、
その場所にはすでに
時間が積み重なっています。

 

以前、
どんな建物があったのか。

どんな人が
行き交っていたのか。

どんな季節を
繰り返してきたのか。

 

たとえ更地であっても、
時間がまったく
存在しない土地はありません。

 

そこには、
過去の時間が
静かに重なっています。

 

そして、
家を建てて
暮らしが始まると、

そこに
新しい時間が
少しずつ重なっていきます。

 

朝の光。
夕方の影。
季節ごとの匂い。

 

家族の会話や、
一人で過ごす静かな時間。

 

それらが、
過去の時間の上に
そっと重なっていきます。

 

設計をしているとき、
私はよく考えます。

 

「この場所は、
 これから重なっていく時間を
 受け止められるだろうか」

 

強く主張しすぎる建物は、
時間の積み重なりを
拒んでしまうことがあります。

 

一方で、
余白のある場所は、
時間が重なるほど
深みを増していきます。

 

少し傷がついても、
違和感にならない。

 

使い方が変わっても、
受け止められる。

 

そうした柔らかさが、
時間を
味方にしてくれます。

 

土地は、
一瞬の条件だけで
選ばれるものではなく、

その上に
どんな時間が
重なっていくかによって、
意味を持ち始めます。

 

過去の時間を
消してしまうのではなく、

未来の時間だけを
急ぎすぎるのでもなく。

 

いま立っているこの場所で、
どんな時間が
静かに重なっていくのか。

 

その想像が、
設計に
奥行きを与えてくれます。

 

家は、
完成した瞬間が
いちばん新しく、

そこから
少しずつ
時間をまとっていきます。

 

その時間が
心地よく重なっていく場所であれば、

暮らしは
年を重ねるほど、
静かに
豊かになっていく。

 

その場所で生まれる
時間の重なりを
受け止められるかどうか。

 

それもまた、
土地を読むときの
大切な視点のひとつだと
感じています。

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