建築家・ナイトウタカシさんのブログ「「こんな暮らしがしたい」と言えない理由」
「こんな暮らしがしたい」と言えない理由
2026/03/11 更新
家づくりの話になると、
よく聞かれる言葉があります。
「どんな暮らしがしたいですか?」
けれど、
その問いにすぐ答えられる人は、
意外と多くありません。
頭の中には、
ぼんやりとしたイメージがある。
けれど、
はっきり言葉にしようとすると、
どこかで止まってしまう。
「こんな暮らしがしたい」
その一言が、
なぜか言えない。
理由のひとつは、
遠慮かもしれません。
そんな贅沢を
言っていいのだろうか。
予算に合わなかったら
どうしよう。
現実的ではないと
思われないだろうか。
理想を語ることに、
無意識のブレーキがかかる。
もうひとつは、
「正解を言わなければ」という
思い込み。
家づくりには、
答えがある気がしてしまう。
効率的な間取り。
人気のデザイン。
資産価値の高い立地。
それらに比べて、
自分の願いは
曖昧で、個人的で、
根拠がないように感じる。
だから、
飲み込んでしまう。
けれど、
暮らしに正解はありません。
誰かにとっての最適が、
自分にとっての最適とは限らない。
本当は、
小さな願いがあるはずです。
朝の光を感じながら
ゆっくりコーヒーを飲みたい。
家族の気配を感じつつ、
ひとりになれる場所がほしい。
季節の変化を、
もう少し身近に感じたい。
どれも、
派手ではない。
けれど、
その人にとっては
大切な風景。
「こんな暮らしがしたい」と
言えないのは、
理想がないからではなく、
まだ許可が出ていないからかもしれません。
自分に、
願っていいと許すこと。
うまく説明できなくても、
筋が通っていなくても、
まずは、
口にしてみる。
理想は、
現実と戦うものではなく、
現実と
すり合わせていくもの。
最初から
完璧に整っていなくていい。
言葉にすることで、
初めて輪郭が見えてきます。
「こんな暮らしがしたい」
その一言は、
わがままではなく、
これからの時間を
どう生きたいかという、
静かな宣言。
言えなかった理由に
そっと目を向けてみる。
そこから、
家づくりは
少しずつ本質に近づいていくのだと
感じています。
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