建築家・ナイトウタカシさんのブログ「設計の初期段階で、よくあるすれ違い」
設計の初期段階で、よくあるすれ違い
2026/04/09 更新
設計が始まったばかりの頃、
小さなすれ違いが起きることがあります。
どちらかが間違っているわけではないのに、
なぜか噛み合わない。
そんな感覚。
たとえば、
施主は、
「できるだけ早く形が見たい」
と思っている。
一方で、設計者は、
「もう少し整理してから
形にしたい」
と考えている。
どちらも、
家づくりを前に進めたいという
同じ気持ちから生まれています。
けれど、
進め方の違いが、
少しずつ距離をつくることがある。
また、
言葉の受け取り方にも、
ずれが生まれます。
「落ち着いた空間にしたい」
その一言でも、
静かな色合いをイメージする人もいれば、
余白のある広がりを思い浮かべる人もいる。
同じ言葉でも、
中身は人によって違う。
それに気づかないまま進むと、
「思っていたのと違う」
という感覚につながることがあります。
さらに、
初期の段階では、
まだお互いの理解が
十分に深まっていません。
どこまでを大切にしているのか。
どんな感覚を
重視しているのか。
その輪郭が、
まだぼんやりしている。
だからこそ、
少しのずれが、
大きく感じられることもある。
設計の初期は、
形を決める段階であると同時に、
関係をつくる段階でもあります。
言葉の意味を確かめる。
感じ方の違いを知る。
どこに重心を置くのかを、
少しずつ共有していく。
その積み重ねが、
後の設計を支えていきます。
すれ違いが起きること自体は、
特別なことではありません。
むしろ、
自然なことです。
違う視点を持っているからこそ、
すれ違いが生まれる。
その違いを、
そのままにせず、
丁寧に扱っていくこと。
少し時間をかけて、
言葉を行き来させること。
それによって、
理解は
少しずつ重なっていきます。
最初から
ぴったり合う必要はありません。
すれ違いを
なくすことよりも、
それをどう扱うか。
そこに、
設計の質が
静かに表れてくるのだと
感じています。























