建築家・ナイトウタカシさんのブログ「良い相談は、少し疲れる」
良い相談は、少し疲れる
2026/01/18 更新
家づくりの相談をしていると、
終わったあとに
「ちょっと疲れました」
と、静かに漏らされる方がいます。
それは、悪いサインではありません。
むしろ ――
私は、とても良い相談だったのだと思っています。
家づくりの相談というのは、
情報を交換する場でもなく、
条件をすり合わせる場でもありません。
「これまで、どんな暮らしをしてきたのか」
「これから、どんな時間を大切にしたいのか」
そういう話を、
言葉にしていく時間です。
それは、普段あまり考えないことだったり、
考えてはいたけれど
言葉にしたことのなかったことだったりします。
だから、少しだけ
頭の奥のほうを使います。
うまく言えない気持ちを探したり、
心の中で
何度も言葉を入れ替えたりしながら、
ゆっくり、
自分の本音に近づいていく。
その過程で、
安心した顔をされる方もいれば、
少し黙り込んでしまう方もいます。
どちらも、
良い変化だと感じています。
相談の途中で、
「こんな話、してもいいんですか?」
と聞かれることがあります。
もちろん、いいんです。
むしろ
そういう話にこそ、
家づくりの“芯”が
隠れていることが多いからです。
良い相談のあとに訪れる「疲れ」は、
無理をした疲れではなく、
これまで胸の中にあったものを、
ゆっくり机の上に置いていくような、
そんな感覚に近いものだと思います。
家づくりは、
楽しいことだけで
進んでいくわけではありません。
迷いも、
ためらいも、
時には、
向き合いたくない気持ちもあります。
それでも、
少しずつ言葉にしながら、
ひとつずつ整理していく。
その積み重ねの先に
「この選択で良かった」と
思える瞬間が生まれるのだと、
私は感じています。
だから、
相談のあとに
少しだけ疲れてしまっても、
どうか心配しないでください。
それはきっと、
良い方向に向かって
踏み込めた時間だったという、
静かな証拠なのだと思います。























