建築家・ナイトウタカシさんのブログ「「こうしたい」をそのまま形にしない理由」

「こうしたい」をそのまま形にしない理由

2026/01/19 更新

家づくりの相談の場では、
最初の段階から
いろいろな「こうしたい」が出てきます。

 

リビングは広くしたい。

キッチンはアイランドがいい。

書斎がほしい。

収納をたくさん。

大きな窓で明るく、開放的に。

 

どれも間違っていませんし、
どれも、その人の暮らしにとって
大切な願いであることが、ほとんどです。

 

だから私は
それを否定したり
打ち消したりすることはありません。

 

でも——

 

「じゃあ、そのまま形にしましょう」

とは、あまり言いません。

 

 

それは、意地悪でもなく、
慎重すぎる性格だからでもなく、

 

“その言葉だけでは、
 本当の理由までたどりつけていない”

と感じることが多いからです。

 

 

たとえば、

「広いリビングがほしい」

という言葉の中には、

 

・家族で過ごす時間を大切にしたい
・今の住まいで窮屈さを感じている
・人を招くことが多い
・ただ「そういう家が理想」だと思いこんでいる

 

…いろんな背景が混ざっています。

 

どれも同じ「広いリビング」でも、
意味はまったく違います。

 

 

だから私は、少し時間をかけて

 

「どうして、そう感じたのでしょう」

「いつから、そう思うようになりましたか」

「その空間で、どんな時間を過ごしたいですか」

 

そんな問いを、
静かに積み重ねていきます。

 

 

すると、

・本当は「広さ」より「居心地」を求めていたり
・人を招くためではなく「逃げ場」が欲しかったり
・過去の住まいのストレスから生まれた願いだったり

 

少しずつ
「形」よりも前にある気持ちが、
見えてくることがあります。

 

 

その瞬間に、

最初の「こうしたい」とは違う
まったく別の解き方が
自然に立ち上がってくることがあるんです。

 

 

だから私は、

 

「こうしたい」を否定せず
でも、そのまま形にもしない。

 

一度、立ち止まって
その奥にある感情や記憶を
そっとたどるようにしています。

 

 

家づくりは

「希望をそのまま実現する作業」

ではなくて、

 

「希望の正体を、一緒に探していく時間」

なのだと思っています。

 

 

そしてそれは、
遠回りに見えるかもしれませんが、

 

あとになって
じわっと効いてくる
大事なプロセスでもあります。

 

 

あなたの「こうしたい」の奥には、
どんな気持ちが眠っているのでしょうか。

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