建築家・ナイトウタカシさんのブログ「本当に大切なことは、最後に残る」

本当に大切なことは、最後に残る

2026/01/25 更新

家づくりの相談を受けていると、

最初の段階では
たくさんの要望が出てくることが、よくあります。

 

「収納を増やしたい」

「広いリビングがいい」

「吹き抜けをつくりたい」

「家事動線は短くしたい」

 

一つ一つが
その方の思いから出ている言葉ですから、

もちろん、どれも大切なものです。

 

でも、

打合せを重ねていく中で

少しずつ整理されていき、

自然と消えていく要望もあります。

 

「やっぱり、そこまで広くなくていいかもしれないですね」

 

「使い方を考えると、これはなくても大丈夫かな」

 

そういう言葉が
ポツリと出てくる瞬間があります。

 

それは、

優先度が下がったから
……というよりも、

 

「本当に大切なものが
少しずつ見えてきたから」

 

そんなふうに感じることが多いです。

 

はじめは

頭の中にある
いろいろな願いを

一度、テーブルの上に
全部並べてみるような状態で、

 

そこから、

ひとつひとつ
手に取って確かめながら、

 

「これは残そう」

「これは、手放してもいいかもしれない」

 

そうやって、

静かに選び直していく作業が続きます。

 

不思議なもので、

最初から「これが一番大事です」と
はっきりしていることは

そんなに多くありません。

 

むしろ、

何度も話を重ねたあとでしか
見えてこないことの方が

たくさんあります。

 

そして最終的に残るのは、

派手な言葉や
分かりやすい要望ではなく、

 

暮らしの中で
静かに支えてくれるもの。

 

「家族が落ち着ける場所でありたい」

 

「朝の時間を、少しだけ丁寧に過ごしたい」

 

「無理なく続く暮らしにしたい」

 

そんな、

どこか控えめだけれど
揺るぎのない思いです。

 

設計をしていると、

「これだけは残しましたね」

と、お互いに自然と
うなずける瞬間があります。

 

それはきっと、

こちらが導いたわけでも、

誰かに教わったわけでもなく、

 

その方自身の中から
時間をかけて浮かび上がってきたもの。

 

だからこそ、

最後まで残るのだと思います。

 

家づくりの途中で

「要望が減ってしまった気がする」

と、不安になることも
あるかもしれません。

 

でもそれは、

諦めたのでも
我慢したのでもなくて、

 

「本当に大切なものだけが
手の中に残っていった」

 

そんな状態なのかもしれません。

 

残るものには、理由があります。

 

そして——

その理由は、

図面の上ではなく

そこに暮らす毎日の中で

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