建築家・ナイトウタカシさんのブログ「すべての要望を叶えなくていい理由」

すべての要望を叶えなくていい理由

2026/01/26 更新

家づくりの相談を受けていると、

「せっかくの注文住宅だから」
「どうせなら、できるだけ全部入れたい」

そんな言葉を耳にすることがあります。



それは、とても自然な気持ちだと思います。



長い時間をかけて考えてきたことでしょうし、
雑誌やSNS、モデルハウスや友人の家を見て、

「いいな」と感じたものが
頭の中に、静かに積み重なっていく。



それは、悪いことではありません。



むしろ
家に向き合ってきた証拠でもあるのだと思っています。



ただ——

設計を進める中で、
一度立ち止まってほしい瞬間があります。



それは、

「本当に、すべてを叶える必要があるのだろうか」

という問いが
心のどこかに浮かんだときです。



すべての要望を叶えようとすると、

家は、だんだんと
「足し算の集合体」になっていきます。



ひとつひとつは、
それぞれ意味のある希望であっても、

それが同じ空間の中に並び始めると、

少しずつ、
本来の居心地から遠ざかってしまうことがあるのです。



不思議なもので、

「好きなものを集めた空間」よりも

「残したいものだけが、静かに残った空間」の方が

落ち着けることがあります。



打合せの途中で、

「これは無くしてもいいかもしれないですね」



そんな言葉が
お施主さんの口から出てくる瞬間があります。



それは、諦めではありません。



むしろ、

迷いながらも、
自分たちの暮らしにとって

「何がいちばん大切なのか」

そこに近づいてきた証拠のように感じます。



家づくりには、

「足す勇気」も必要ですが、
同じくらい「手放す勇気」も必要です。



そしてそれは、

我慢や節約の話ではなくて、

自分たちの価値観を
もう一度、静かに見つめ直す作業なのだと思っています。



すべての要望が叶わなくても、

残ったものが、自分たちにとって
本当に大切なものだったなら、

それは、豊かさにつながっていくはずです。



もし今、

「いろいろ詰め込みすぎている気がする」

そんな感覚が少しでもあったら、

一度、深呼吸してみてもいいのかもしれません。



何を足すかではなく、
何をそのまま残したいのか。



そこから、
家づくりを見直してみるのも良いかなと思います。

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