建築家・ナイトウタカシさんのブログ「完成が近づくほど、少し不安になる理由」
完成が近づくほど、少し不安になる理由
2026/04/29 更新
打ち合わせの終盤になると、
こんな言葉を聞くことがあります。
「ここまで来たのに、
なんだか少し不安なんです」
図面も整っている。
仕様も決まっている。
ここまで時間をかけて、
考えてきたはずなのに、
なぜか、
気持ちが落ち着かない。
本来なら、
安心していくはずの段階です。
それでも、
少しだけ揺れる。
この感覚は、
特別なものではありません。
むしろ、
多くの方が感じるものです。
設計が進むほど、
選択は具体的になります。
曖昧だったものが、
ひとつずつ形になっていく。
その分、
後戻りしにくくなる。
選んだという実感が、
少しずつ重くなる。
だからこそ、
不安が出てくることがあります。
もしまだ何も決まっていなければ、
可能性は開いたままです。
どんな選択もできる。
けれど、
決めていくことで、
選ばなかったものも
同時に増えていく。
そのことに、
気づいているのかもしれません。
また、
ここまで積み重ねてきた時間が、
「本当にこれでいいのか」
という問いを、
もう一度呼び戻すこともあります。
それは、
迷いではなく、
自分たちの選択に
責任を持とうとしている感覚。
真剣に向き合っているからこそ、
揺れる。
不安が出てきたときは、
無理に消そうとしなくていい。
何に引っかかっているのか。
どこが少し気になっているのか。
その輪郭を、
少しだけ確かめてみる。
はっきり言葉にできなくても、
構いません。
その感覚自体が、
大切な手がかりになります。
完成が近づくほど不安になるのは、
順調ではないからではなく、
ここまで進んできた実感が、
少しずつ現実になってきたから。
その揺れを含めて、
設計の一部なのだと
思っています。
不安があるままでも、
進んでいい。
その中で、
静かに納得が重なっていくこともあるのだと
感じています。























