建築家・ナイトウタカシさんのブログ「子供の気配を感じる家にしたいんです」
子供の気配を感じる家にしたいんです
2026/10/09 更新
「子どもが二階にいても、様子が分かるようにできますか?」
子ども部屋のお話をしていると、
こんなご質問をいただくことがあります。
子ども部屋は二階につくる予定。
でも、
子どもが部屋へ行ってしまうと、
何をしているのか分からなくなる。
ずっと見ていたいわけではないけれど、
完全に気配がなくなるのも少し心配。
そんなとき私は、
「吹き抜けをつくれば分かりますよ。」
とは、すぐにはお答えしません。
まず、
「どんなことが分かると、安心できそうですか?」
と、お聞きしてみます。
「子どもの様子が分かる」
という言葉には、
いろいろな意味があります。
姿が見えることなのか。
声が聞こえることなのか。
部屋にいると分かることなのか。
何かあったときに、
すぐ気づけることなのか。
それによって、
家のつくり方も変わってきます。
ずっと姿が見えていなくても、
階段を上がる足音がする。
二階から、
時々声が聞こえる。
扉が開いたり閉じたりする。
水を飲みに降りてくる。
そんな小さな出来事だけでも、
家族がどこにいるのか、
なんとなく分かることがあります。
以前、ご相談いただいたご家族も、
「子ども部屋が二階だと、こもってしまわないか心配です。」
とおっしゃっていました。
そこで、
「二階に行ったあと、何が分からなくなるのが気になりますか?」
とお聞きしてみました。
奥様は少し考えて、
「ずっと何をしているか知りたいわけじゃないんです。」
と。
「ただ、帰ってきて、そのまま部屋へ行って、ずっと顔を合わせないようになるのは少し寂しいですね。」
さらにお話をしていくと、
欲しかったのは、
二階の子どもの姿が見えることではありませんでした。
帰ってきたことが分かる。
二階へ上がったことが分かる。
時々、
家族のいる場所へ降りてくる。
そのくらいのつながりがあれば、
安心できそうでした。
つまり、
必要だったのは監視できることではなく、
離れていても、家族の存在が完全には消えないことだったんです。
家の中の気配は、
目で見るものだけではありません。
階段を上がる音。
床を歩く音。
扉が開く音。
誰かが話している声。
二階から漏れてくる明かり。
吹き抜け越しに、
少しだけ聞こえる生活の音。
そうしたものから、
「いるな」と感じることがあります。
反対に、
姿は見えていても、
お互いがずっと見られているように感じれば、
落ち着かないこともあります。
だから、
「見えること」と「気配が分かること」は、少し違う。
私はそう考えています。
そして、
子どもとの距離は、
ずっと同じではありません。
小さい頃は、
できるだけ近くにいたい。
何をしているか、
ある程度見えていた方が安心する。
でも、
少しずつ成長すると、
一人で過ごす時間も増えていきます。
友達と話す。
勉強する。
音楽を聴く。
何もしないで過ごす。
そんな時間も、
少しずつ必要になってくるかもしれません。
家を建てたときにちょうどいい距離が、
十年後にも同じとは限らないんですよね。
だから私は、
子どもの様子が分かる家を考えるとき、
「いつでも見えるようにする」
ことだけを目指しません。
例えば、
二階へ行く途中で、
リビングの近くを通る。
階段から、
家族の声が少し聞こえる。
二階の廊下と一階が、
どこかで緩くつながっている。
あるいは、
子ども部屋から出たところに、
家族と自然に顔を合わせる場所がある。
そんな、
家族とつながる小さなきっかけをつくる方法もあります。
もちろん、
吹き抜けが合うご家族もいます。
リビング階段が合う場合もあります。
反対に、
音や生活時間を考えると、
一階と二階をある程度分けた方が暮らしやすいこともあります。
大切なのは、
「子どもの様子が分かる間取り」という形を先に決めることではなく、
そのご家族にとって、
どこまで分かれば安心なのかを考えることだと思います。
ですから、
「子どもが二階にいても、様子が分かるようにできますか?」
と聞かれたとき、
私は、
「姿が見えなくても、何が分かれば安心できますか?」
と、お聞きしてみたいと思っています。
帰ってきたこと。
二階にいること。
元気にしていること。
時々、
家族のところへ降りてくること。
必要な安心が分かってくると、
ずっと見える家にしなくても、
できることはありそうです。
子どもには、
少しずつ自分の世界ができていきます。
それでも、
家のどこかに家族の存在が残っている。
見張られてはいない。でも、一人きりでもない。
私は、そんな距離も一つの「気配」なのかもしれないと思いながら、そのご家族にちょうどいい親子の距離を一緒に考えていけたらと思っています。























