建築家・ナイトウタカシさんのブログ「テレビの音。2階で気になりますか?」
テレビの音。2階で気になりますか?
2026/10/10 更新
「テレビの音が二階まで聞こえたりしませんか?」
吹き抜けやリビング階段をご提案していると、
こんなご質問をいただくことがあります。
一階では、
夜までテレビを見ることがある。
でも、
子どもは先に二階で寝る。
ご夫婦でも、
寝る時間が違うことがある。
「下の音が全部聞こえてしまったら、困りますよね。」
そんな心配をされる方もいます。
そんなとき私は、
「大丈夫です。」
とも、
「吹き抜けはやめた方がいいですね。」
とも、すぐにはお答えしません。
まず、
「ご家族は、だいたい何時ごろまでテレビを見ていますか?」
と、お聞きしてみます。
テレビの音が二階まで届くかどうか。
もちろん、
家のつくり方によって変わります。
でも、
もう一つ考えておきたいのが、
家族それぞれの時間です。
誰が、
何時ごろ、
どこで過ごしているのか。
例えば、
夜九時。
子どもは二階で寝ている。
ご主人はリビングでテレビを見ている。
奥様はダイニングで、
翌日の準備をしている。
そんなご家族なら、
一階の音が二階へ届きにくいことは、
かなり大切かもしれません。
一方で、
家族全員が同じくらいの時間まで一階で過ごし、
寝るときに一緒に二階へ上がる。
そんな暮らしなら、
気になる場面は少ないかもしれません。
同じ間取りでも、
暮らし方によって、
音の意味は変わってくるんですよね。
以前、ご相談いただいたご家族も、
吹き抜けをつくるかどうかで迷われていました。
奥様が、
「テレビの音が二階まで聞こえるのが心配なんです。」
とおっしゃいました。
そこで、
「夜は、皆さんどんなふうに過ごされていますか?」
とお聞きしました。
すると、
お子さんは九時ごろに二階へ。
ご主人は、
十一時くらいまでリビングでテレビを見る。
奥様は、
その間にキッチンを片付けたり、
ダイニングで本を読んだりする。
そんな過ごし方でした。
さらに伺うと、
休日の昼間は、
二階にいるお子さんにも、
一階の家族の気配が少し伝わる方がいいとのこと。
つまり、
「一階と二階を完全に切り離したい」
わけではありませんでした。
欲しかったのは、
昼間は少しつながっていて、夜はそれぞれの時間を邪魔しにくいこと。
だったんです。
音のことを考えるとき、
つい、
「聞こえるか、聞こえないか」
という二つで考えてしまいます。
でも実際の暮らしでは、
もう少し曖昧です。
昼間に、
子どもの声が二階から聞こえる。
階段を下りてくる足音がする。
家族が話している声が、
なんとなく聞こえる。
そういう音は、
家族の気配として心地いいことがあります。
でも、
眠ろうとしているときに、
テレビの内容まではっきり分かる。
仕事に集中したいのに、
リビングの会話がずっと聞こえる。
そうなると、
同じ「聞こえる」でも、
感じ方は違います。
気配として届く音と、生活を邪魔する音は、同じではない。
ということなんですよね。
だから私は、
音だけを見るのではなく、
その音が鳴っているとき、
家族がどこで何をしているのかを考えます。
テレビを見る人。
眠る人。
勉強する人。
仕事をする人。
本を読む人。
同じ時間に、
違うことをしている家族もいます。
家族だからといって、
いつも同じ場所で、
同じことをしているわけではありません。
むしろ、
家族それぞれが違う時間を過ごせることも、
暮らしやすさの一つかもしれません。
もちろん、
間取りでできることもあります。
テレビの位置を考える。
吹き抜けとテレビを少し離す。
寝室との間に廊下や収納を挟む。
扉の位置をずらす。
一階と二階をつなぐ場所を考える。
そうやって、
音が通る道を少し変えることもできます。
ただ、
「音が漏れるから吹き抜けはなし」
と決めてしまう前に、
私はそのご家族の一日の方を見てみたいと思っています。
ですから、
「テレビの音が二階まで聞こえたりしませんか?」
と聞かれたとき、
私は、
「そのテレビがついているとき、二階では誰が何をしていますか?」
と、お聞きしてみたいと思っています。
子どもが寝ているのか。
まだ起きているのか。
誰かが仕事をしているのか。
それとも、
家族みんなが一階にいる時間なのか。
そこが分かると、
必要な音の距離も見えてきます。
音の問題は、
単に静かな家をつくれば解決するとは限りません。
同じ家の中で、それぞれが違う時間を過ごしても、お互いを邪魔しすぎないこと。
私は、テレビの音が何デシベル届くかだけではなく、その音の向こうにある家族それぞれの過ごし方まで伺いながら、心地いい距離を一緒に考えていけたらと思っています。























