建築家・ナイトウタカシさんのブログ「寝室って、そんな広くなくてもいい?」

寝室って、そんな広くなくてもいい?

2026/10/11 更新

「寝室って、寝るだけならそんなに広くなくてもいいですよね?」

間取りのお話をしていると、

こんなご質問をいただくことがあります。

 

寝室にいるのは、

ほとんど寝ている時間。

 

昼間はリビングで過ごすし、

仕事をするわけでもない。

 

それなら、

寝室を必要以上に広くするより、

リビングや収納に面積を使った方がいい。

 

そう考える方も多いと思います。

 

そんなとき私は、

「そうですね。寝室は小さくて大丈夫です。」

とは、すぐにはお答えしません。

 

まず、

「寝室に入ってから眠るまで、何をされていますか?」

と、お聞きしてみます。

 

「寝室は寝る場所」

確かにそうなのですが、

ベッドに入った瞬間に眠って、

目が覚めた瞬間に部屋を出る、

という方ばかりではありません。

 

ベッドに入って、

少しスマートフォンを見る。

 

本を読む。

 

夫婦で話をする。

 

翌日のことを考える。

 

朝になれば、

カーテンを開ける。

 

着替える。

 

少しベッドに座ったまま過ごす。

 

寝室には、

眠っている時間だけではなく、

眠る前と、目覚めた後の時間もあるんですよね。

 

以前、ご相談いただいたご夫婦も、

「寝室は最低限でいいです。」

とおっしゃっていました。

 

ベッドが置けて、

周りを歩ければ十分。

 

その分、

リビングを広くしたいとのことでした。

 

そこで、

「夜、寝室へ行ってからは、すぐ寝ますか?」

とお聞きしてみました。

 

すると奥様が、

「私は少し本を読みます。」

と。

 

ご主人は、

「僕は先に寝ることが多いですね。」

 

さらにお話を伺うと、

奥様はご主人が寝たあと、

ベッドの横で三十分ほど本を読むことが多いそうでした。

 

そこで、

ベッドを置くだけではなく、

小さな照明を置ける場所や、

本を置く場所、

それぞれがベッドへ入りやすい動き方も考えてみました。

 

必要だったのは、

大きな寝室ではありません。

 

でも、

ただベッドが収まればいいわけでもありませんでした。

 

お二人にとっては、

一日を終えるための少しの時間が、心地よく過ごせること。

それも寝室に必要なことだったんです。

 

朝についても同じです。

 

夫婦が同じ時間に起きるご家庭もあれば、

一時間以上違うこともあります。

 

片方がまだ寝ている間に、

もう片方が着替える。

 

カーテンを開ける。

 

クローゼットを使う。

 

照明をつける。

 

寝室とクローゼットの関係によっては、

毎朝の過ごし方も変わります。

 

だから私は、

寝室を考えるとき、

夜だけではなく、

朝のこともお聞きします。

 

「どちらが先に起きますか?」

 

「起きたら、最初に何をしますか?」

 

そんな小さなことから、

必要な広さや配置が見えてくることがあります。

 

もちろん、

本当に寝るだけという方もいます。

 

寝室にはテレビもいらない。

 

本も読まない。

 

着替えも別の場所でする。

 

起きたらすぐにリビングへ行く。

 

そんな暮らしであれば、

寝室をコンパクトにして、

別の場所へ面積を使う方が、

そのご家族には合っているかもしれません。

 

大切なのは、

「寝室は何畳必要か」から考えるのではなく、

寝室で実際にどんな時間を過ごしているのか。

そこを見ることだと思います。

 

そして、

寝室の心地よさは、

広さだけで決まるものでもありません。

 

朝、どこから光が入るのか。

 

横になったとき、

窓から何が見えるのか。

 

廊下やリビングの音が、

どれくらい届くのか。

 

ベッドの周りに、

どれくらい余白があるのか。

 

天井の高さや、

照明の明るさも関係します。

 

広い寝室でも、

落ち着かないことがあります。

 

反対に、

それほど広くなくても、

包まれるように感じて、

よく眠れそうな場所もあります。

 

ですから、

「寝室って、寝るだけならそんなに広くなくてもいいですよね?」

と聞かれたとき、

私は、

「寝る前と、起きた後は、そこでどう過ごしていますか?」

と、お聞きしてみたいと思っています。

 

本を読むのか。

 

夫婦で少し話すのか。

 

着替えるのか。

 

朝の光を感じたいのか。

 

それとも、

本当に眠るためだけの場所でいいのか。

 

その答えによって、

必要な広さも変わってきます。

 

寝室は、

一日の中で長い時間を過ごす場所なのに、

そのほとんどは眠っています。

 

だからこそ、

畳数だけでは見えにくい場所なのかもしれません。

 

眠るための広さではなく、一日を終えて、また一日を始めるために必要な場所。

私は、「何畳あれば十分か」を決める前に、眠る少し前から朝に部屋を出るまでを一緒にたどりながら、そのご家族にちょうどいい寝室を考えていけたらと思っています。

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