建築家・ナイトウタカシさんのブログ「安心と不安が同時に存在する状態」
安心と不安が同時に存在する状態
2026/05/05 更新
打ち合わせを終えた帰り際に、
こんな言葉を聞くことがあります。
「安心しているんですが、
同時にちょっと不安もあって…」
ここまで進んできた実感がある。
方向性も見えている。
だからこそ、
ほっとする気持ちがある。
けれどその一方で、
どこか落ち着かない。
はっきりした理由はないのに、
小さな不安が残っている。
この二つの感覚が、
同時に存在する状態です。
安心しているのに、不安もある。
矛盾しているように見えますが、
この状態はとても自然です。
設計が進むほど、
選択は具体的になっていきます。
その分、
「決めた」という実感が強くなる。
安心は、
その積み重ねから生まれます。
一方で、
選んだということは、
選ばなかったものが
確実に存在しているということでもあります。
もっと別の形があったかもしれない。
気づいていないことが
まだあるかもしれない。
そうした余白が、
不安として残る。
また、
ここまで考えてきた時間が長いほど、
その選択に対して
慎重になるのも自然なことです。
簡単に決めたものではないからこそ、
最後まで確かめたくなる。
安心と不安が同時にあるのは、
迷っているからではなく、
ちゃんと向き合っている状態です。
どちらか一方だけに
する必要はありません。
不安を消そうとしなくてもいい。
安心を疑う必要もありません。
その両方を持ったまま、
もう少しだけ見てみる。
どこに安心を感じているのか。
どこに少し引っかかりがあるのか。
それを確かめていくことで、
少しずつバランスが
整っていきます。
設計は、
不安がなくなることを目指すものではなく、
安心と不安が重なった状態の中で、
納得に近づいていくプロセスです。
その揺れを含めて、
いま進んでいること自体が、
ひとつの前進なのだと
思っています。























