建築家・ナイトウタカシさんのブログ「完成前に「これでいいのか」と思う瞬間」

完成前に「これでいいのか」と思う瞬間

2026/05/04 更新

現場の確認に立ち会ったとき、
ふとこんな言葉が出てくることがあります。

 

「ここまで来たのに、
 これでよかったのかと思ってしまって…」

 

壁が立ち上がり、
空間の形が見えてくる。

 

図面で見ていたものが、
実際の大きさとして現れてくると、

 

一気に現実味が増します。

 

その中で、
少しだけ気持ちが揺れる。

 

この感覚は、
とても自然なものです。

 

完成が近づくほど、
「決めたこと」が
現実として固定されていきます。

 

ここに壁があり、
ここに窓があり、

 

これから先、
大きく変えることは難しい。

 

その状態に触れたとき、

 

「これでいいのか」

 

という問いが、
もう一度立ち上がることがあります。

 

それは、
最初の迷いとは少し違います。

 

選択の前にある迷いではなく、

 

選択したあとに感じる、
確認のような揺れ。

 

本当にこれでよかったのか。

 

見落としていることはないか。

 

もっと良い形があったのではないか。

 

そうした思いが、
頭をよぎる。

 

けれど、
この問いは、

 

間違いを示しているとは限りません。

 

むしろ、
ここまで向き合ってきたからこそ、

 

最後にもう一度、
確かめたくなっている状態です。

 

もし何も感じなければ、

 

どこかで
考えきれていない可能性もあります。

 

だから、
この「これでいいのか」という感覚は、

 

止まるためのものではなく、

 

少しだけ立ち止まって、
見渡すためのもの。

 

いま気になっていることは何か。

 

どこに違和感があるのか。

 

それを一度、
丁寧に拾い上げてみる。

 

多くの場合、
その違和感は、

 

すでに調整されていることだったり、

 

小さな部分で解決できることだったりします。

 

あるいは、
時間とともに馴染んでいくこともある。

 

完成前に感じる揺れは、

 

設計が
間違っているサインではなく、

 

ここまでの選択を
自分の中で受け入れていく過程なのかもしれません。

 

その時間を、
無理に消さずに、

 

少しだけ味わってみる。

 

その先に、
静かな納得が重なっていくことがあるのだと
思っています。

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