建築家・ナイトウタカシさんのブログ「「まだ建てるかどうかも決めていません。」」
「まだ建てるかどうかも決めていません。」
2026/08/19 更新
「まだ建てるかどうかも決めていません。」
初めてお会いする方から、こんなお話をいただくことがあります。
「相談するには早すぎますよね。」
「まだ何も決まっていなくて……。」
少し申し訳なさそうに話される方もいらっしゃいます。
でも私は、その言葉を聞くと、
「そうなんですね。」
とお返事をして、
「今、どんなことを考えていらっしゃるんですか?」
そんなふうに、お聞きすることが多いんです。
すると、お話は家のことではなく、
暮らしのことになることがあります。
「子どもが小学校に上がる前には……。」
「転勤があるかもしれなくて。」
「今の家賃を払い続けるのがいいのか迷っています。」
「親のことも少し気になっていて。」
同じ「まだ決めていない」という言葉でも、
迷われている理由は、本当にさまざまです。
以前、ご相談いただいたご夫婦も、
「建てるかどうかも決めていないのに、相談してもいいんでしょうか。」
とおっしゃっていました。
そこで、
「今日は家を建てるかどうかを決める日ではありませんよ。」
とお伝えしました。
「今、気になっていることを整理する日だと思っていただければ。」
そうお話しすると、
お二人とも少し表情がやわらいだのを覚えています。
その後、お話を伺っていると、
実は家を建てることが不安なのではなく、
住宅ローンを背負うことが不安だったことが分かってきました。
家そのものではなく、
将来への心配が大きかったのです。
もちろん、
まだ建てると決めなくてもいい時期もあります。
ご家族の状況によっては、
もう少し今の暮らしを続けた方がいいこともあるでしょう。
反対に、
早めに考え始めたことで、
慌てずに準備できるご家族もいらっしゃいます。
だからこそ、
「今すぐ決めましょう。」
とも、
「まだ早いですね。」
とも、
私はあまり言わないようにしています。
ですから、
「まだ建てるかどうかも決めていません。」
と聞かれても、
私は、
「建てるかどうか」よりも、「何に迷っているのか」。
そこを知りたいと思っています。
資金のことなのかもしれません。
お子さんのことなのかもしれません。
仕事やご実家のことなのかもしれません。
その迷いが少しずつ言葉になると、
「建てる」「建てない」という答えより先に、
ご家族が本当に考えたかったことが見えてくることがあります。
家づくりは、
建てると決めた人だけのものではないように思います。
「まだ分からない。」
その気持ちを安心して話せる時間も、
家づくりの大切な始まりなのかもしれません。
私は、そんな時間もご一緒できたらと思っています。























