建築家・ナイトウタカシさんのブログ「リビング階段にした方がいいですよね?」
リビング階段にした方がいいですよね?
2026/09/14 更新
「リビング階段にした方が、家族が顔を合わせますよね?」
間取りのお話をしていると、こんなご質問をいただくことがあります。
玄関からそのまま二階へ上がれる階段だと、
子どもが帰ってきても気づかないかもしれない。
リビングを通って二階へ上がるようにすれば、
自然と家族が顔を合わせる。
そんな話を聞いて、
「うちもリビング階段にした方がいいのかな。」
と考える方もいらっしゃいます。
そんなとき私は、
「そうですね。家族のコミュニケーションが増えますよ。」
とは、すぐにはお答えしないことが多いんです。
まず、
「家族が顔を合わせることを、大切にしたいと思われたのはどうしてですか?」
と、お聞きしてみます。
すると、
いろいろなお話が出てきます。
「子どもが大きくなっても、帰ってきたことくらいは分かるようにしたくて。」
「何も話さなくても、顔を見られたら安心かなと思うんです。」
「今の家では、それぞれの部屋に行ってしまうので。」
同じ「顔を合わせたい」という言葉でも、
その奥にある気持ちは少しずつ違います。
会話を増やしたいのか。
帰宅したことを知りたいのか。
家族の気配を感じていたいのか。
そこが分かると、
考えるべきことも変わってきます。
以前、ご相談いただいたご家族も、
「子どものことを考えると、リビング階段がいいですよね。」
とおっしゃっていました。
そこで、
「どんなふうに家族と過ごせたらいいと思っていますか?」
とお聞きしてみました。
すると奥様が、
「ずっと一緒にいたいわけではないんです。」
とおっしゃいました。
お子さんが成長すれば、
自分の部屋で過ごす時間が増えることも分かっている。
ただ、
「帰ってきたときに、なんとなく分かるくらいがいいんです。」
とのことでした。
ご主人も、
「話さなくても、今日は元気そうだな、くらい分かればいいですね。」
と。
お二人が求めていたのは、
必ずリビングを通らせることより、
家族の気配が、完全に途切れないことだったのかもしれません。
そう考えると、
方法はリビング階段だけではなくなります。
玄関とリビングの位置関係。
廊下から感じる音や気配。
キッチンから玄関が少し見えること。
家族が自然と立ち寄る場所をつくること。
いろいろな考え方が出てきます。
もちろん、
リビング階段がそのご家族に合うこともあります。
ただ、
「子どもと顔を合わせたいから、リビング階段。」
と一つの形だけに結びつけなくてもいいように思います。
それに、
同じリビングを通ったからといって、
必ず会話が生まれるとは限りません。
反対に、
階段がリビングの外にあっても、
家族が自然と集まる家もあります。
間取りは、
家族の関係を支えることはできても、
関係そのものをつくるわけではないんですよね。
だから私は、
家族のコミュニケーションを考えるときほど、
「どんな間取りにするか」の前に、
家族と、どんな距離で暮らしたいのか。
そこを聞いてみたいと思っています。
ですから、
「リビング階段にした方が、家族が顔を合わせますよね?」
と聞かれたとき、
私はまず、
「顔を合わせることで、どんな時間が生まれたらいいと思っていますか?」
と聞いてみます。
毎日少し会話ができたらいいのかもしれません。
帰ってきたことが分かれば十分なのかもしれません。
同じ場所にいなくても、
なんとなく家族の気配を感じられればいいのかもしれません。
その答えによって、
階段の場所も、
リビングのつくり方も、
家族の居場所の考え方も変わってきます。
家族がつながる家は、
必ずしも家族を一つの場所に集める家ではありません。
近づくこともできて、離れることもできる。その間に、ちょうどいい距離があること。
私は、そんなご家族なりの距離感を伺いながら、間取りを一緒に考えていけたらと思っています。























