建築家・ナイトウタカシさんのブログ「「家族が自然に集まる家にしたいんです。」」
「家族が自然に集まる家にしたいんです。」
2026/09/21 更新
「家族が自然に集まる家にしたいんです。」
家づくりのご相談で、こんなお話をいただくことがあります。
せっかく家を建てるなら、
家族がそれぞれの部屋に閉じこもるのではなく、
リビングに自然と集まってほしい。
だから、
リビングを広くする。
リビング階段にする。
ダイニングとキッチンを一体にする。
「そういう間取りにした方がいいですよね?」
と聞かれることもあります。
そんなとき私は、
「では、みんなが集まれる大きなリビングにしましょう。」
とは、すぐにはお答えしないことが多いんです。
まず、
「今、ご家族が自然と集まっているのは、どんなときですか?」
と、お聞きしてみます。
夕食を食べているとき。
テレビを見ているとき。
休日の朝。
誰かがお茶を淹れたとき。
子どもが宿題をしている横で、
ご主人はスマートフォンを見て、
奥様はキッチンで料理をしている。
同じことをしていなくても、
気がつくと同じ場所にいる。
そんな時間もあるかもしれません。
ここで少し大切なのは、
「集まる」と「集める」は、似ているようで違うこと。
間取りによって、
家族を一つの場所へ集めることはできるかもしれません。
でも、
そこに居続けたくなるかどうかは、
また別の話なんですよね。
以前、ご相談いただいたご家族も、
「子どもが大きくなっても、リビングに集まる家にしたいです。」
とおっしゃっていました。
そこで、
「今は、どんなときにみなさんリビングにいますか?」
とお聞きしてみました。
すると、
少し意外な答えが返ってきました。
「みんなが一緒に何かをしているときではないですね。」
ご主人はソファで本を読む。
奥様はダイニングで仕事をする。
お子さんは床で遊んでいる。
会話をしているわけでもありません。
それでも、
休日になると、
なぜかみんな同じ部屋にいるそうです。
「それって、どんな感じがいいんでしょう?」
と、もう少し伺ってみました。
すると奥様が、
「それぞれ好きなことをしていても、なんとなく一緒にいる感じですかね。」
とおっしゃいました。
ご家族が求めていたのは、
全員で同じことをする場所ではなく、
それぞれの時間を過ごしながら、同じ場所にいられることだったのかもしれません。
そう考えると、
ただ大きなリビングをつくればいいわけではなくなります。
ソファでくつろげる場所。
窓辺で本を読める場所。
床に座れる場所。
ダイニングで何かを広げられる場所。
キッチンに立っていても、
家族の気配が感じられること。
一つの空間の中に、
いくつかの小さな居場所がある。
そんなつくり方も考えられます。
もちろん、
家族の過ごし方は変わっていきます。
小さな頃は、
親のそばで遊んでいた子どもも、
成長すれば自分の部屋で過ごす時間が増えるでしょう。
家族全員が、
いつもリビングにいる必要もないと思います。
一人になりたい日もあります。
静かに過ごしたい時間もあります。
だから、
「家族が集まる家」を考えるときほど、
無理に集まる仕組みをつくらなくてもいいのかもしれません。
それよりも、
誰かがいるところへ、
なんとなく行きたくなる。
そこに座ると落ち着く。
気がついたら、
別々のことをしている家族が同じ場所にいる。
そんな場所があることの方が、
家族をゆるやかにつないでくれることもあります。
ですから、
「家族が自然に集まる家にしたいんです。」
と聞いたとき、
私はまず、
「どんなふうに一緒に過ごしたいですか?」
と聞いてみます。
たくさん会話をしたいのか。
一緒に食事をする時間を大切にしたいのか。
それぞれ好きなことをしながら、
家族の気配を感じていたいのか。
その答えによって、
必要な場所も変わってきます。
家族が自然に集まる家は、
家族を一か所へ集めるための家ではないのかもしれません。
「ここにいなさい」と言わなくても、なんとなく居たくなる場所があること。
私は、そんなご家族の日常を伺いながら、自然と人が残る場所を一緒に考えていけたらと思っています。























