建築家・ナイトウタカシさんのブログ「「キッチンから子どもが見えた方がいい?」」
「キッチンから子どもが見えた方がいい?」
2026/09/28 更新
「キッチンから、子どもの様子が見えた方がいいですよね?」
家づくりのお話をしていると、
こんなご質問をいただくことがあります。
料理をしている間も、
リビングで遊んでいる子どもが見える。
ダイニングで宿題をしている様子も分かる。
何かあれば、
すぐに声をかけられる。
「やっぱり、キッチンからリビング全体が見渡せる方が安心ですよね。」
小さなお子さんがいるご家族では、
そんなふうに考えることも多いと思います。
そんなとき私は、
「そうですね。全部見えるようにしましょう。」
とは、すぐにはお答えしません。
まず、
「どんなときに、お子さんの様子が分かると安心ですか?」
と、お聞きしてみます。
まだ小さなお子さんであれば、
料理をしながらでも、
何をしているのか見えていたいことがあります。
転んだり、
危ないことをしたりしないか。
兄弟で何をしているのか。
そんな時期には、
キッチンからリビングが見えることが、
安心につながることもあります。
でも、
少し大きくなってくると、
必要な距離は変わってきます。
いつでも姿が見えていなくてもいい。
何をしているのか、
全部分からなくてもいい。
それでも、
「家にいるな。」
「今、二階に上がったな。」
と分かれば安心できる。
そんな時期もやってきます。
以前、ご相談いただいたご家族も、
「キッチンから子どもが見える間取りにしたいです。」
とおっしゃっていました。
そこで、
「どこにいるところが見えたらいいですか?」
とお聞きしました。
リビング。
ダイニング。
庭。
最初はいろいろなお話が出てきました。
でも、
もう少し聞いてみると、
奥様が、
「ずっと見ていたいわけではないんです。」
とおっしゃいました。
料理をしている間に、
子どもが帰ってきたことが分かる。
宿題を始めたことが、
なんとなく分かる。
庭へ出れば、
その気配が伝わってくる。
それくらいでも、
十分なのかもしれない。
そんな話になりました。
そこで見えてきたのは、
子どもの姿そのものより、何をしているかがなんとなく伝わる安心感でした。
家族の様子を感じる方法は、
「見る」だけではありません。
「ただいま」という声が聞こえる。
玄関が開く音がする。
階段を上がっていく足音がする。
ダイニングで鉛筆を動かしている。
庭から子どもの声が聞こえてくる。
姿は見えなくても、
それだけで、
何をしているのか分かることがあります。
反対に、
いつでも家族全員が見える間取りが、
落ち着かないこともあります。
親にも、
子どもにも、
少しだけ自分の時間が欲しいときがありますよね。
だから私は、
「見える」と「分かる」は、同じではないのかもしれない。
と思っています。
キッチンから、
リビング全体が見える。
それが合うご家族もいます。
一方で、
ダイニングだけ見えて、
リビングは少し視線から外れている。
階段は見えないけれど、
上り下りする音は聞こえる。
子ども部屋は二階だけれど、
家族の気配が完全には途切れない。
そんなつながり方もあります。
家の中には、
見える。
聞こえる。
なんとなく分かる。
いろいろな距離があっていいのだと思います。
そして、
子どもは成長します。
今は、
キッチンのすぐ近くで遊んでいるかもしれません。
数年後には、
ダイニングで宿題をするかもしれない。
さらにその先には、
自分の部屋で過ごす時間が増えるでしょう。
ずっと同じ距離でいるわけではありません。
だから、
今の子どもの姿だけを見て間取りを決めるのではなく、
少し先の距離まで想像してみることがあります。
ですから、
「キッチンから、子どもの様子が見えた方がいいですよね?」
と聞かれたとき、
私は、
どこまで分かれば、安心できますか?
と、お聞きしてみたいと思っています。
姿が見えていたいのか。
声が聞こえればいいのか。
帰ってきたことが分かればいいのか。
同じ家にいることを、
なんとなく感じられればいいのか。
その答えによって、
キッチンと家族の場所との関係も変わってきます。
いつでも全部見えることだけが、
家族のつながりではありません。
見えない時間があっても、どこかで気配がつながっている。
私は、お子さんの今の年齢だけでなく、これから家族の距離がどう変わっていくのかもお聞きしながら、そのご家族にちょうどいい「見え方」を一緒に考えていけたらと思っています。























