建築家・ナイトウタカシさんのブログ「「天井って、高い方が広く感じますよね?」」

「天井って、高い方が広く感じますよね?」

2026/10/02 更新

「天井って、高い方が広く感じますよね?」

間取りのお話をしていると、

こんなご質問をいただくことがあります。

 

リビングは、できるだけ開放的にしたい。

 

吹き抜けも気になる。

 

天井を高くすれば、

同じ広さでも広く感じられそう。

 

住宅展示場などで、

天井の高いリビングを見て、

「こういう感じ、いいですよね。」

とおっしゃる方もいます。

 

そんなとき私は、

「そうですね。できるだけ高くしましょう。」

とは、すぐにはお答えしません。

 

まず、

「そのリビングでは、どんなふうに過ごしたいですか?」

と、お聞きしてみます。

 

確かに、

天井が高くなると、

視線が上へ抜けます。

 

空間の体積も大きくなりますから、

広がりを感じやすくなることもあります。

 

でも、

天井が高ければ、

どんな場所でも心地よくなるかというと、

少し違うように思います。

 

例えば、

家族みんなで過ごすリビング。

 

一人で本を読む場所。

 

ダイニングで食事をする場所。

 

ソファで横になる場所。

 

同じ家の中でも、

心地よく感じる高さは、

少しずつ違うことがあります。

 

以前、ご相談いただいたご夫婦も、

「リビングは天井をできるだけ高くしたいです。」

とおっしゃっていました。

 

そこで、

「どうして高くしたいと思われましたか?」

とお聞きしてみました。

 

「やっぱり、広く感じたいからですね。」

と。

 

さらに、

「リビングでは、どんな時間を過ごしていそうですか?」

と伺いました。

 

休日は、

ソファに座って映画を見る。

 

夜は、

照明を少し落として過ごす。

 

ご主人は本を読むこともある。

 

そんなお話が出てきました。

 

すると奥様が、

「ずっと開放的じゃなくてもいいのかもしれませんね。」

とおっしゃいました。

 

家族で過ごす場所には広がりが欲しい。

 

でも、

ソファに座る場所は、

少し包まれている感じも欲しい。

 

そこで考えたのは、

家全体の天井を同じように高くするのではなく、

場所によって高さを変えることでした。

 

高いところがあるから、低いところが落ち着く。

反対に、

少し低いところから高い場所へ移るから、

その広がりを強く感じることもあります。

 

天井の高さは、

数字だけで感じるものでもありません。

 

例えば、

同じ天井高でも、

窓がどこまで伸びているのか。

 

視線の先に何が見えるのか。

 

部屋の幅や奥行きがどうなっているのか。

 

光がどこから入ってくるのか。

 

それによって、

感じ方は変わります。

 

天井がそれほど高くなくても、

視線が庭まで抜けていれば、

広く感じることがあります。

 

逆に、

天井は高くても、

視線が壁で止まれば、

思ったほど広がりを感じないこともあります。

 

だから私は、

高さの数字だけではなく、

その場所に立ったとき、身体がどう感じるのか。

そこを考えてみたいと思っています。

 

そして、

人はいつも立って家を見ているわけではありません。

 

ソファに座る。

 

椅子に腰掛ける。

 

床に座る。

 

ベッドに横になる。

 

身体の位置が変われば、

天井との距離の感じ方も変わります。

 

立って見たときには少し低く感じた天井が、

ソファに座ると、

ちょうどよく包まれる感じになることもあります。

 

住宅展示場では、

歩きながら空間を見ることが多いですよね。

 

でも実際の家では、

座っている時間の方が長い場所もあります。

 

見るための高さと、過ごすための高さは、少し違うのかもしれません。

 

もちろん、

大きな吹き抜けや高い天井が、

とても心地よい家もあります。

 

朝の光が上から入る。

 

二階にいる家族の気配が届く。

 

大きな窓から空が見える。

 

その高さだからこそ生まれる体験もあります。

 

だから、

高い方がいい、

低い方がいい、

ということではないんですよね。

 

ですから、

「天井って、高い方が広く感じますよね?」

と聞かれたとき、

私は、

「広く感じたいのは、どんなときでしょう?」

と、お聞きしてみたいと思っています。

 

家族で集まっているときなのか。

 

庭を眺めているときなのか。

 

ソファでくつろいでいるときなのか。

 

家に入った瞬間なのか。

 

そこが分かってくると、

家中の天井を高くしなくても、

そのご家族が求める広がりをつくれることがあります。

 

天井の高さは、

数字だけで決めるものではありません。

 

広がりたい場所と、少し包まれたい場所。その違いをつくることも、家の心地よさにつながる。

私は、何センチの天井にするかを決める前に、そこでどんな姿勢で、どんな時間を過ごすのかをお聞きしながら、その場所に合った高さを一緒に考えていけたらと思っています。

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